第52話 1536年 6歳 武芸大会始めるぞ ⑨ 雷蔵の敵討ち
前回は伊賀の忍者をスカウトしました。
今回はその流れの中で、
どうしても避けられない戦いが始まります。
雷蔵の過去に、向き合う回です。
雷蔵が、珍しく慌てた様子で飛び込んできた。
雷蔵
「若様、恐れ入ります。
父の敵――岩下が大会に参加しております」
雷蔵は、父と武者修行の最中に父を失っている。
俺
「案内してくれ。行くぞ、雷蔵」
会場に着く。
……予想と違った。
悪人面どころか、正義の味方のような風貌。
戦い方も堅実だ。
雷蔵より一回り小さいが、妙な風格がある。
俺
「雷蔵の父は、正々堂々の戦いで亡くなったのか」
雷蔵
「とんでもない。
あの男ほど、汚い者はいません」
俺
「初見で“正義”を装い、
意表を突いて汚い手を使う類だな」
雷蔵
「それ以上です。
負けを認め、友好のために一献と誘い――毒を」
俺
「……なぜ引っかかった」
雷蔵
「自分が先に毒見をすると言って飲み、
その後、父に飲ませたのです」
なるほど。
常習だ。
俺
「一応聞く。
仇を討ちたいか」
雷蔵
「――もちろんです。若様」
合図を出す。
岩下は、人目につかない城内へ連れて来られた。
怪しむ岩下。
待ち受ける雷蔵。
岩下
「……貴様は」
雷蔵
「父の敵を討たせてもらう」
岩下
「汚いぞ!」
――お前が言うな、と全員が思った。
俺
「雷蔵。
いつもの十字槍を使うか?」
岩下
「若様、それはご無体な。
拙者にあまりに不利でございます」
……その口でよく言う。
雷蔵
「いえ。
真剣で戦い、首を父の墓前に捧げます」
岩下
「ならば――
俺はお前の首を、お前の父の墓に置いてやる」
(お前がなぜその場所を知っている)
嫌な予感がする。
俺
「――始め」
雷蔵は大上段。
胴も喉も、あえて晒している。
“さあ、来い”という構え。
格下を怒らせ、隙を誘う型だ。
案の定。
岩下は怒り、喉元へ――
と、思った瞬間。
岩下は自分の内頬を噛みちぎり、
血を口いっぱいに含んでいた。
そして――
雷蔵の顔へ、血を吹きかけた。
……汚い。
岩下
「もらった!」
斬りかかる。
雷蔵は大きく後退し、かわす。
だが、血を拭けば不利になる。
岩下は執拗に追撃する。
喉への突き。
――どうなる。
雷蔵は半身になり、
右片手で下から切り上げた。
剣道では稀な、下から上。
岩下が傷を負う。
その瞬間――
岩下は突然、土下座した。
岩下
「雷蔵殿!
お主の勝ちでござる!
父上の件、誠に申し訳なかった!」
刀を投げ捨て、
額を床に擦りつける。
……目が違う。
俺
「油断するな、雷蔵!」
次の瞬間。
岩下は懐刀で飛びかかった。
雷蔵は――
迷わず、上から振り下ろした。
一刀。
肩から腰まで、真っ二つ。
岩下は、その場で絶命した。
雷蔵
「若様……ありがとうございました。
助かりました」
俺
「本当に卑怯な男だったな。
皆、見たか。
戦場は、ああいう奴ばかりだ」
風馬と水斗を見る。
俺
「良い勉強になったろ」
風馬
「全くです。
しかし若様は、何でもお見通しですね」
……安田が言いそうな台詞だな。
全員が安田になると困る。
俺
「これで大会も終わりだな」
伊賀忍者の次は、雷蔵の因縁回でした。
強さだけでなく、
「油断しないこと」の大切さを描いています。
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