第4話 1533年 3歳 石けんを作るぞ
主人公が3歳にして「家督争いを勝ち抜くための基盤作り」を始める章です。
政略のための教養、父との距離感、そして商品開発として“石鹸”を生み出すことに挑みます。
ここから物語は経済パートと人間関係が一気に動き始めますので、ぜひお楽しみください。
三歳になると、戦国越後の厄介な人間関係がだんだん見えてきた。
まず俺は手紙を書くために、
崩し字と戦国独特の言い回しを勉強中。
三歳児がやる内容じゃないが、未来のためだ。やるしかない。
父・長尾晴景は温和そのもので、
武より短歌と蹴鞠を愛する文化系男子。
しかも俺に毎日、
「猿千代、短歌を詠め。蹴鞠も覚えよ」
と強制してくる。
すまん父上、俺は軍事厨だ。
毎回華麗に逃走している。
そして父とは対照的に、
守役の安田実秀は俺に激甘。
初めて会った瞬間たぶん“SSR育成キャラ”だと確信した。
そんなある日、ふと思い出した。
「あっ、中学の自由研究で石けん作ったわ」
この世界は石けんが貴重。
つまり俺、大儲けできるのでは?
問題はどう説明するか。
三歳児が科学知識を披露したらヤバい。
そこで俺は必殺の言い訳を用意した。
■ 石けん誕生(神様のせいにする)
俺
「夢に知識の神・八意思兼神が出てきてさ、作れって言われたんだ」
安田
「若様、それは大変なことです。では今夜から毎日寝てお告げを……!」
寝られるかぁぁ!
とはいえ甘やかしは嬉しい。
安田に「油いっぱい買って」と頼んだら、
本当に山ほど買ってきてくれた。神か。
原料は植物油。
そこに植物の灰から作った灰汁を混ぜ、
ひたすら攪拌し、型に流して熟成。
地味な作業だが、
三歳児がやってると思うとシュールで笑える。
■ 評判、爆発する
できた石けんを
祖父、安田、乳母、国人衆に配りテスト。
安田が実際に手を洗って――
「な、なにこれ……泡? すごい!?」
すげえ顔された。
俺、ちょっとドヤ顔。
そのまま御用聞きの春日商店の番頭にも実演したら、
こっちも目が点。
翌日――
春日商店の主人が“恵比寿顔”で来た。
これは勝った。
■ 商談成立(3歳児、初の企業契約)
主人
「これ、武家にも寺にも売れますぞ!」
交渉の結果、
石けん1個=500文
という高級品扱いに。
日雇い労働者の10日分の賃金である。
ヤバい。完全に金持ちの贅沢品。
そのまま 500個一括買取 の契約成立。
三歳児が戦国時代で初の大商談を成功させてしまった。
ただ問題は生産体制だ。
父母は役に立たないので安田に相談したところ――
安田
「倉を使ってください。人手はこちらで用意します」
神だった。
■ 売上と取り分
・来月も500個作れれば
→ 俺の取り分:200貫(現代換算1000万円)
→ 安田の取り分:50貫(250万円)
三歳児の月収として意味がわからないが、
ありがたく受け取ろう。
春日商店が毎回買うとは限らないのが悩みだが、
まずは財力=生存力だ。
安田の甘やかしは天井知らず。
普通の三歳児なら依存モンスターになってるところだが、
俺は中身32歳なので精神年齢バランスは保てている。多分。
■ そして弟が生まれた
そんな折、弟が誕生した。
母の体調を思うと……父よ。頑張ったな。
どう見ても母の実家(上杉定実)への
「娘を大事にしてるよアピール」だ。
それでも家は丸く収まる。
俺の商売は順調。
名も売れ始めた。
――軍神おじさん(謙信)。
甥っ子はじわじわ勢力を伸ばしてるぞ?
戦国3歳児の“歴史改変”はまだ始まったばかりだ。
戦国で3歳が石鹸作ったら、そりゃ皆驚きます。
でもこれが後に越後を支える大産業になる伏線です。




