第一章 越後に生まれた龍 —転生の刻— / 第3話 1533年 3歳 状況確認だぞ
3歳になった主人公が、自分の血筋・立場・運命を正しく把握していく章です。
謙信と同い年の「甥」という希有なポジションから、家督を目指す主人公の覚悟が定まります。
転生して三年。
俺――**猿千代(3歳)**は、この戦国越後の地でようやく状況がつかめてきた。
父は長尾晴景。
母は越後守護・上杉定実の娘。
つまり母方の祖父は守護上杉家のトップで、
父方の祖父・長尾為景は、その上杉定実を“傀儡”として操った張本人。
当然、祖父同士は犬猿の仲だ。
三歳児でも空気が重いとわかるレベルでピリついている。
さらに俺の家にはもう一つ、大問題がある。
父・晴景には弟がいる。
のちの軍神・上杉謙信。
しかも妙なことに――
俺と謙信は“同い年”だ。
史実では、俺(猿千代)は若くして死に、
跡継ぎがいなかった父は家督を弟・謙信に譲らざるを得なかった。
つまり史実どおりなら、
俺は18歳前後で“邪魔な甥”として処理されるか、
寺送りコースである。
……冗談じゃない。
幸い、俺には前世の記憶がある。
海上自衛隊で鍛えた身体と、戦術・戦史の知識。
大学で叩き込まれた分析力。
さらに転生後は、人の“オーラの強さ”まで見えるようになった。
守役は名将・安田長秀の父、安田実秀。
これ以上ない恩師だ。
そして今は1536年。
祖父・為景が隠居し、父・晴景が家督を継いだ。
だが父には求心力がなく、
史実では1548年、18歳の謙信が家督を奪う。
つまり俺には 「あと15年」しかない。
この間に功績を上げ、名を売り、家督を継げる器だと証明しなければ、
俺の未来は“詰み”だ。
――なら、やることは決まっている。
俺の勝利条件(家督奪取)
1 商品開発で金を集める(現代知識をフル活用)
石鹸、蒸留酒、製鉄、医療、造船、なんでもやる。
2 有能な家臣を集め、若くして勢力を作る
小さくても良い。俺の直属勢力を固める。
3 武功を上げて国人衆と民衆からの支持を得る
名を売る戦が幼少期に終わりがちなのが問題だが、
ならば俺は「小さな成果」を積み上げて突破する。
史実ではただ消えた子供・猿千代。
だがこの世界では違う。
軍神・謙信を超えて、家督を継ぎ、
最終的には龍馬の理想の“新しい日本”を作る。
そのために――
三歳の俺は、もう動き出している。
頑張るぞ。
絶対に、未来は変える。
史実の猿千代が早世した理由は不明ですが、作中では「運命に抗う」主人公の原点として描きました。
ここから彼が得る家臣や、商品開発のアイデアがどんどん物語を動かしていきます。




