第254話 1540年 10歳 武田信玄登場だぞ (⑥ あの作戦の決行)
<不穏>
海野平の戦いで敗北した武田信虎は、終始機嫌が悪い。
小さい事でも近衆に当たり散らすようになり、皆、戦々恐々で信虎の顔色を伺っていた。
武田信虎のストレスが最高潮の頃。
板垣信方「お館様、駿河の今川義元様に嫁いでいらっしゃる定恵院様が、信虎様に是非駿河に遊びに来て欲しいと言っておられます。
駿河には美味しいお酒も料理もございます。
お館様は根を詰め過ぎでございます。気分転換をされるがよろしいかと申し上げます」
武田信虎は考える。
(この窮状を婿(今川義元)は何とかしてくれるかもしれんし、確かに儂は根を詰め過ぎで最近よく寝れん。駿河に行くのも良かろう)
武田信虎「板垣信方の言や良し。早速準備致せ」
武田信虎の気持ちは、もう駿河で楽しむこと一色となっていた。
武田信虎は、その三日後に出発した。
武田信虎は駿河で楽しんだ。娘の顔を見て、婿の今川義元から励ましてもらった。
だが――
武田信虎が甲斐国国境にて見たのは、甲斐国の兵士たちが待ち構えている光景だった。
<緊迫>
武田信虎「出迎えご苦労、通せ」
足軽の後ろから、板垣信方、飯富虎昌、甘利虎泰が出てくる。
武田信虎「お前達か、出迎えご苦労。何用だ」
板垣信方「武田信虎様の帰る国は、駿河でございます」
武田信虎「どういうことだ」
武田信虎は周囲を見渡した。
誰一人、目を合わせようとしなかった。
飯富虎昌「我ら重臣一同、武田信虎様を仰ぐことは出来ませぬ。武田信玄様を次のお館様とすることを決定致しました。
ですから武田信虎様は駿河にお戻り下さい」
武田信虎は図られたことを知り、刀を抜く。
しかし、足軽たちが一斉に刀を抜く音が、山間に反響した。
臨戦体制となる。
武田信虎「お前ら、これまでの儂の恩を忘れたか。恩知らずの不忠者よ」
怒号し、顔が怒りで赤く膨張する。
板垣信方「信虎様、察して下さい。我々はここで信虎様を誅する方が後顧の憂いがないのですぞ。それとも儂を切られますか?」
飯富虎昌、甘利虎泰も剣を抜き、武田信虎は重臣たちの覚悟を知る。
武田信虎「お前達、絶対後悔させてやるからな。
信玄の親不孝者にも言っておけ、儂はお前の災厄となってやるからな」
飯富虎昌は作り笑顔を浮かべる。
飯富虎昌「お館様を悪しざまに言われると、刀を振りたくなります。どうぞお引き取りを」
武田信虎は、重臣の誰にも自分への忠義の心が残っていないことを知る。
そして、駿河へ引き返すのであった。
<新しい主>
躑躅ヶ崎館の主座に座るは、武田信玄。
重臣一同が、新しいお館様に頭を下げる。
武田信玄は主座を降り、重臣一人一人に頭を下げていく。
武田信虎と対極の行為に、重臣一同は時代が代わった事を知る。
この新しい主君に、忠誠を再度誓う。
武田信玄「皆にイヤな役を押し付けてすまなかった」
板垣信方「いえ、これは我らが望んだ事です」
武田信玄「よし、まずは先代の負債をかたづけるぞ」
重臣一同、甲斐国が明日から変わる事を確信した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
ブックマークや、評価ポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★にして
応援していただけると、とても励みになります。
皆様のブックマークと評価が、
今後の更新の大きなモチベーションになっています。
どうぞ、よろしくお願いいたします!




