第192話 1539年 9歳 ドジ忍者蛍の細腕繁盛記だぞ(後編)
<部長、初日から崩壊寸前>
③ 蛍の初任務
お蝶課長
「先程の灰島代表がいた所が貸付課、調査課(書類や人となりを調査)、会計課、金庫課となります」
それでお蝶課長が2階に登り、広い部屋に入る。
お蝶課長
「ここが取立部となり、ここの取立部の部長が蛍さんです」
見れば40人くらい男女が一生懸命に働いている。
蛍は目が点である。
蛍
「ここで私が一番偉い?」
お蝶課長は真顔でうなずいた。
付き合い慣れている顔だった。
お蝶課長
「そうです。ここにいる皆さんを指導監督する立場です」
蛍
(おっしゃーーーーーーーーー!!!!)
走馬灯のように流れる甲賀の里での過去。
何度も叱られ、罵られ、蹴られ、唾をかけられてもヘラヘラ笑ってやりすごした過去の記憶よ、さよーーーならーーーですよ。
お蝶課長
「はーーい 皆さん注目して下さい」
皆一斉に手を止め、こちらを見る。
お蝶課長
「今度こちらに赴任された蛍部長です。ご挨拶お願いします」
蛍
(ご、ご、ご挨拶ーーーーしたことないわよ、何言うのーーーーー?)
蛍
「こ、こ、こん、に、に、ち、ち、わ、わ・・・・・・・・・」
ガチガチになりあがり倒す蛍。
お蝶はため息をつき、
お蝶課長
「蛍部長でした。皆さん仲良くしてあげて下さいねーー」
小学校の転校生を紹介する担任の先生のような事を言ってお茶を濁すお蝶であった。
一番奥のひときわ立派な机に座る蛍。
最初のうちはふんぞり返り、偉そうにしていたが、何をしていいかわからず(自来也から業務について人の5倍位説明を受けている蛍)、盛大によだれを垂らして寝る蛍。
見るに見かねた調査課係長お玉がお蝶課長に一言断りを入れてから、調査に連れ出すことにする。
お玉係長
「蛍部長、部長起きて下さい」
身体を揺すられ起きる蛍。
お玉係長
「今から取立に行くので付いてきて下さい、わかりましたか?」
蛍部長
「すいません。はい、わかりました」
蛍部長はお玉係長にペコペコ平謝りであった。
お蝶
(部長のくせに係長にペコペコすんな)
<取立現場、まさかの展開>
④ 野島商店
調査課のお玉係長と取立課のお天係長が、蛍部長を連れて野島商店へ向かった。
お玉が蛍部長に説明をする。
お玉
「貸付の方はまた今度ご説明をするとして、今回の回収の方から説明しますね。
返済期限までに利子を付けた貸付金額を返さないときは、担保としている財産を回収することになります。
今回の野島商店は返済金額は1200文となります」
蛍部長
「返せなかったらどうなるの?」
お玉
「今回は店ごと担保になっていますので、売り払って貸付回収します」
そうこうしているうちに野島商店についた。
お天が大声をあげる。
お天
「野島さーーん、お金を返して下さい。
期限過ぎてますので、契約通り担保を処分しますねーー」
野島が出てくる。
尊大そうなやつで、見るからに悪人顔だ。野島は皆に嫌われている。赤子ですら野島の顔を見ると泣き出すほどだ。
野島
「お前らに金を払うよりこちらのお方に払う方が安上がりなんだよ。お願いします」
野島がへこへこする。
出てきたのは女忍者である。
女忍者が立ち所にお天を叩きのめす。
野島喜ぶ。
野島
「へへっ大枚、払ったかいがあったぜ」
(甲賀の里へ100文しか払っていない)
お玉が男社員を連れてこなかった事を後悔する。
今回連れて来ているのは名前だけ部長のよだれ女だ。
どうすると考えているとき、
蛍
「あんた、赤じゃないの?赤でしょ」
赤
「げっ、あんた蛍じゃん、あんたが甲賀の里抜けて、みんな厄介者がいなくなったって喜んでたわよ。何してんの?私とやる気なら、手加減しないわよ」
蛍
「赤、まだそんな事やっているの?
そんな事しても給料100文のままでしょ」
赤
「うるさいわね。あんたなんかそれ以下でしょ。構えなさいよ。戦うわよ」
蛍は悪巧みの顔をする。
懐から300文を出し、
蛍
「赤、この300文で寝返りなさい」
赤
「蛍、なんでそんな大金を持っているんだ?」
蛍
「私は出世したの、私は出来る女になったのよ ホッホッホッ」
お玉
(さっきまでよだれ垂らして寝てたじゃねーかー)
蛍
「甲賀の里は今苦しいでしょ。この300文で美味しい物が一杯買えるわよー。
ほれほれ」
300文をつきつける。
赤は考える。
蛍みたいなバカが私より儲けているということは、私がやればもっと儲かる。蛍についた方が賢い。
赤
「乗った。即金だぞ。まず300文よこせ」
蛍は300文を渡す。
赤
「野島、1200文返せ」
野島
「人でなしーー裏切り者!!」
赤
「文句は薄給で私を使う甲賀の里に言いな。1200文払いな」
野島、土下座で泣く。
野島
「実は1200文は嫁が持って行ってしまって。うぅー(泣)」
どこの誰がどう見てもウソ泣きの大根芝居である。
お玉も赤もお天も呆れる。
お玉が(嘘つけーー)と怒鳴ろうとした時、隣を見ると蛍が号泣している。
蛍
「(泣)可哀想にーー(涙)うんうん待ってもらえるよう一緒に頼んであげるからね。頑張るのよ(涙)」
お玉、赤、お天
「えーーーーーーーーー(驚く)!!」
赤が泣いている蛍をひきづり、野島商店の仏壇の所に行き、仏壇をヒックリ返す。
そこにはお金の山だ。
野島
「な、な、なんで知っているんだ」
赤
「忍者なめんな」
お玉
「野島、最初から踏み倒すつもりだったんだろ。担保として店ごと入れたのはお前の失敗だ。契約によりこの店ごともらうぞ」
お天は先程の仕返しとばかり野島を店の外に蹴り出す。
事件は解決した。
お玉は赤をすかさず買収した蛍部長の事を見直した。
お蝶課長に今回の出来事を報告しようと思う。
赤
「ねー私をあんた所の亀山社中に入れてくれよーー蛍ーー」
蛍
「チッチッチッ、足りないわよ」
赤はしょうがないなーーって顔になり、
赤
「蛍さん お願いします」
蛍が大きく頷いた。
――堺支店は、思わぬ方向へ動き始めていた。
蛍の細腕繁盛記が開幕する。
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