第191話 1539年 9歳 ドジ忍者蛍の細腕繁盛記だぞ(前編)
<堺支店、不安しかない>
① 九島弥太郎と長岡謙吉
通常の戦国大名は直接商売をやらず、商人から税なり金を借りる形式が通常である。
しかし、長尾家は直接商売を行い、商人を長尾家で直接雇用する形で行っている。
長尾家はこの形態で金山を掘り、蝦夷地商品を全国に販売している。
その余りある利益を亀山社中という金融業を行い増幅させている。
この長尾家の商人のトップが九島弥太郎という凄腕の商人であり、
その右腕が長岡謙吉といい、この長岡謙吉が亀山社中のトップを務める。
長岡謙吉
「やっと、亀山社中の堺支店を開店させることができました」
九島弥太郎
「若様のお声掛りの取立部の蛍部長さんは、大丈夫か?」
(役職名が現代風なのは若様からの指示である)
長岡謙吉
「若様の話しだと著しい戦果を上げて優秀というお話だったのですけども・・・・・、
飛猿の自来也さんが頭を抱えるくらい飲み込みが悪く、通常の育成期間の五倍かけ自来也さん自ら教えたという曰く付きの人です。
それで自来也さんとも話しをして、飛猿で最優秀な人物を何人かつけて蛍部長を補助します。それで業務を回す予定です。
蛍さんは能力的にはうちの社員試験に合格すらしない人なのに部長職にするのですが大丈夫でしょうか?」
九島弥太郎
「蛍さんは若様のお声がかりだから、やってくれると思うよ。長い目で見て行こう」
九島弥太郎と長岡謙吉は、帳簿を閉じながら同時にため息をついた。
亀山社中の未来が、あの小柄な少女の双肩に乗っている。
――正直、不安しかなかった。
<部長赴任、いきなり危機>
② 蛍と灰島左門
亀山社中堺支店は、堺のメインストリートの一角に建てられた立派な建物である。
その前に立つドジ忍者蛍。
蛍は戦果を挙げ、そのご褒美という事で取立部部長という勅命を若様からもらった。
蛍
「やっと、着いた。
ここまで苦労したわ」
蛍は甲賀の里出身の忍者で、歴代で一番不出来と言われていた。
このため蛍の得意技は、無駄過ぎるポジティブシンキングと妄想と都合の良い神の啓示である。
蛍
「やっと私の実力を見せれるわ」
教育係をした自来也が、どうやってコイツを教えたら良いのかと途方にくれた実力である。
蛍
「私の成功物語がここから始まるわ」
蛍が長岡謙吉に言われた通り社員用の裏口から入ろうとすると、三人組の門番に止められた。
蛍
「今日から赴任する部長の蛍です」
蛍は部長を特に強調した。
三人組の門番が蛍に聞こえないようこそこそ話す。
門番その1
「おい、あんな顔で部長って言っているぞ」
門番その2
「嘘だろ、でも本当だったら俺達マズイぞ。しかし、あの顔で部長は無い。」
門番その3
「そしたら俺が灰島さんの所まで連れて行くよ。それで偽物なら叩き出せば良いだろう」
門番その3が蛍の前に来て
門番その3
「部長、こちらです。灰島代表の所に案内致します」
蛍
(部長って何て良い響き!
私、本当に出世したんだーー)
蛍
「失礼しまーす」
と入口を開けようとする。
門番その3
「あー部長、そっちの入口じゃないですよ」
あわてて止めるがもう遅い。
目の前には代表の灰島が自分の尻をボリボリ掻いていた。
蛍
「ギャー何この変態!」
灰島も慌てる。入ってくるはずのない所から女性が入って来たのだ。
灰島
「とりあえず出て行って前に回って下さい」
蛍は慌てて出て行く。
門番その3
「部長、ダメですよ、灰島さんはものすごく仕事が出来るけど、あーやって尻ばかり触るので人前に出せない人なんですから」
蛍
「若様から聞いていたけど、若様も何であんな人を雇ったんだろう」
(蛍、お前もだぞ)
蛍は指定された入口から入る。
灰島は衝立の向こう側にいて頭だけ見える。下半身は見えない。
灰島
「先程はどうも失礼致しました、どちら様でしょうか?」
蛍
「今度赴任してきました蛍と言います」
灰島
「身分証を見せて下さい」
蛍は長岡謙吉からもらった身分証を懐から出そうとする。
無い。
あれれ。
荷物を引っくり返す。無い。
焦る蛍。
灰島からの冷たい視線。
蛍
「・・・・・無くしました」
灰島
「そしたら、直江津まで行って取って来て下さい。」
蛍はガーーーンである。
灰島
「・・・・と普通なら言う所ですが、代表から蛍部長の人となりは聞いております。こちらで再発行しますので今度は失くさないで下さい」
蛍はほっと胸を撫で下ろす。
灰島は人を呼ぶ。
灰島
「蛍部長はこちらのお蝶課長から業務に関する説明を聞いて下さい」
現れたお蝶課長はいかにも仕事が出来そうな美人である。
このお蝶課長が飛猿最優秀の女忍者で、蛍の補助で付けられた。
お蝶課長は蛍を頭の先からつま先まで見て
(自来也様から聞いていたけど、これのお守り大変だわーーー)
無論お蝶は自来也にそれなら自分が部長をやると言ったが、「若様のお声がかり」という絶対命令に泣く泣く従うことになる。
蛍はお蝶課長の悩みとは裏腹に
蛍
(私は部長なんだから課長を指導しないとねーー)
蛍らしく呑気に考えていた。
――堺支店の未来は、静かに揺れていた。
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