第17話 1534年 4歳やっと上洛したぞ
いよいよ将軍様と直接対面!
そして天皇、公家との連続外交という超濃厚回です。
新しい名前「上杉龍義」も授かり、物語は大きく動き出します。
政治・外交・歴史の伏線多め回ですのでお楽しみください。
挨拶を終えると、足利義晴は上機嫌で笑い出した。
義晴
「猿千代、昨日は大変だったな!
聞けば“糞を投げて2人殺した”らしいの!」
(いや、俺のうんこ自体には殺傷力ないんだが……)
経緯を丁寧に説明すると、
義晴は腹を抱えて笑い、さらに石けんと越野柿酒を指しながら言った。
義晴
「神様から知恵を授かったという噂も聞いたぞ。
神は儂に何か言っておらんか?
ほれ、例えば“細川が明日死ぬ”とか!」
俺
「恐れながら、そのようなことは……。
ただ“長尾家に優しくすればご利益がある”とは……」
祖父(袖を引っ張る)
「龍義、無礼であるぞ!」
義晴
「よいよい!で、その“優しくする”とは何じゃ?」
ここからが本題だ。
俺
「一つ、佐渡本間家の争いにつき、
長尾家が公式に“仲裁せよ”との命令書を。
二つ、日本と明国の貿易を握る 大内氏 への紹介状。
三つ、日本と朝鮮の窓口である 宗氏 への紹介状を
賜りたく……。」
義晴
「なるほど。それが“優しくしろ”の中身じゃな。
ほれ、ご利益とは何ぞ?」
俺
「毎年の献上金を 千貫 に増額いたします。」
義晴
「三つ頼むなら三倍じゃろう?のう、為景。」
祖父
「ぐ……む……(無言の絶望)」
俺
「では、千貫に加え、
越乃柿酒・石けん・蜂蜜も毎年献上いたします!」
義晴
「よい!気分がよい。
褒美として、お主に名前を与えよう。」
義晴は俺をじっと見て言った。
義晴
「明日より 上杉龍義 と名乗るがよい。」
俺
「ありがとうございます!」
祖父ともども深く平伏した。
(上杉龍義……ついに“名”を得たか)
■ 祖父、大激怒
別室に移ると、祖父為景は烈火の如く怒った。
祖父
「佐渡介入とはどういうことじゃ!
羽茂本間は儂の妹の夫でもあるのだぞ!」
俺
「佐渡では毎年 270貫以上 の金銀を得られます。
今のままでは長尾家はせいぜい 50貫 。
“間接支配”では損なのです。」
祖父
「……そんなに金が……?
だが佐渡に介入するには兵3000は必要。
舟は?羽茂本間はどうする?」
俺
「軍事介入は私の采配で。
大叔父(羽茂本間)に勝たせます。
祖父の負担は一切かけません。」
祖父
「……好きにしろ。
ただし儂の妹を怒らせるな。あやつは厄介だ。」
(孫に甘いじいちゃんで助かった……)
■ 天皇への拝謁:
翌日。
後奈良天皇への拝謁。
天皇
「お主は神の声が聞こえるらしいな。」
俺
「左様でございます。」
天皇
「さすれば神の使いは天皇家に仕えるが道理。
明日からここに住め。
屋敷も用意してある。」
(えっ、住み込み!?どうやって断る?)
と思った瞬間――
祖父
「恐れながら龍義は当家の宝で跡継ぎにございます。
いくら天皇様といえど、お譲りするわけには参りませぬ!」
(じいちゃん!!助かった!!)
天皇
「そうか……」
ぷいっと横を向き、従者が退出を促した。
危なかった……
京都にホームステイするところだった……。
■ 公家家訪問:
近衛家との正式挨拶を終え、
次に向かったのが三条西家。
当主 三条西実隆 は初対面から笑っていた。
実隆
「龍義殿、都で大変だったそうじゃな。」
名前も噂も既に把握している。さすが大物。
実隆
「神様はいつ現れる?儂も会いたいのじゃが。」
俺
「難しいですが……
例えば2年後、日蓮宗と浄土真宗が争いましょう。」
実隆
「……その兆しは確かにある……。
何に気をつければよい?」
俺
「浄土真宗の僧兵が狼藉を働きます。
お気をつけください。」
実隆も祖父も驚愕。
実隆
「わかった。法華の坊主共を諭しておこう。
龍義殿、何か儂にして欲しいことはあるか?」
これはチャンス。
俺
「堺の商人で日明貿易に明るく、
有力な方をご紹介いただきたいのです。」
実隆
「……そうだ、小西隆佐を紹介しよう。
日明貿易の商人で、人脈も広い。」
さらにもう一つ。
俺
「宝蔵院に家来を一人修行へ送りたいのです。
紹介状を頂ければ助かります。」
実隆
「よかろう。」
将軍様に名前をつけてもらい、天皇様にスカウトされ、
三条西家に未来予知を信じられ……4歳のくせに大忙しの回でした。
武器・商人・交易と、物語がまた一段階スケールアップします。
引き続き応援よろしくお願いします!




