第16話 1534年 4歳 上洛したけど....
上洛目前、主人公に思わぬ災難が降りかかります。
100人の賊による急襲、
まだ四歳の主人公が巻き込まれるスリリングな章です。
京都まであと少し。
広く開けた街道を進んでいた俺たち御一行は、
突然――
騎馬100人の盗賊団に襲われた。
こちらは祖父・長尾為景が連れてきた精鋭60名。
数は劣るが、質が違う。
雷蔵・風馬・水斗もすでに構えており、
安田長秀は冷静沈着。
守役安田は俺の前に立ち、刀を抜いてガードする。
「さすが俺の陣営!」
と思っていたところへ――
■ 足利家を名乗る騎馬隊登場
後方から6人の騎馬隊が突撃し、
盗賊団の中央を突破して叫んだ。
足利家来
「将軍家の者である! 迎えが遅れてすまぬ!
若様はこちらへ!」
空馬2頭を出し、俺を急かす。
守役安田が抱えて乗せようとすると、
足利家来
「いえ、若様はこちらで!」
そう言って俺の刀を取り上げ、
俺を奪うように馬前へ抱き上げた。
違和感。
だがそのまま強行突破する形で走り出した。
そして――
安田の馬の喉を、目の前の騎馬隊が刺した。
馬は転倒。
俺と安田の距離は一瞬で離れていく。
気づくのに数秒で十分だった。
■ 足利家の兵ではない。
誘拐だ。
■ 廃寺・監禁 ― 4歳児の脱出作戦
連れてこられたのは、
山中の壊れた古寺――盗賊団のアジト。
リーダーらしき男が言った。
「お坊ちゃんと、越後からの献上品を交換してもらう。
わざわざ連れて来たんだ、有難く思えよ。」
部屋に閉じ込められた俺は、
縛られた手首と見張りを観察していた。
広い窓。鍵付きの扉。外に見張り1名。
後ろ手ではなく、前で縛られている。
(ご飯を食べさせるためだな。)
逃げるしかない。
祖父は賊になど屈しない。
そもそも屈したら越後の国人衆が反乱を起こす。
俺自身の脱出しかない。
買収 → 無理。
力づく → 無理。
床下 → 4歳には無理。
詰んだ……と思ったが、閃いた。
★ 真夜中 ― “脱出作戦”始動
夜中2時。
俺は見張りに声をかけた。
俺
「おじさん、おしっこじゃなくて……うんこ……。
漏れちゃう……。」
見張り
「ガマンしろよ」
俺「 洩れちゃうよ 明日クサい子ども抱えて馬乗るの嫌でしょ?おじさんお頭に怒られるんじゃないの?」
見張り
「……ちっ。早く済ませろよ。」
外の汲み取り式厠へ案内された。
俺
「見られてたら出ない~~~。後ろ向いてよ。」
(見張りが後ろを向いたら見張りの刀を奪って逆転だ。)
見張り
「見張れって言われてるんだよ。早くしろ。」
(ダメか、後ろ向かないか……と思ったが、まだだ。)
閃いた、俺は 自分のうんこをたっぷり手に取った。 暗がりだから見張りは俺の手のうんこはわからない。
俺
「終わったよ、おじさん。」
見張りは俺の顔を見る。
つまり 目が開いている。
その瞬間――
俺はうんこを全力で顔面に叩きつけた。
見張り
「うぎゃあああ!!?!」
見張りが怯んだ一瞬で刀を奪取。
喉を突き、一撃で倒した。
(前世自衛官の意地、ここに見せた。)
縛られた手は、地面に突き刺した刀で切断。
自由になった俺は、アジトに戻り――
アジトの松明の火を次々と倒し、。
廃寺はすぐ火の手に包まれた。
■ 足跡偽装 → 木の上潜伏
脱出ルートをごまかすため、
自分の小袖を小道の枝に引っ掛けておいた。
盗賊団は「広い道へ逃げた」と思い込む。
俺は逆に、
人が通らない藪の奥へ20分進み、木に登って夜明けを待つ。
火事の光が見える。
(気づけ、雷蔵……!)
そのとき――犬の声。
盗賊団のリーダーと手下、犬2匹だ。
犬に小袖の匂いを嗅がせたか……
反則だろ
木の下で犬が吠え、リーダーが怒鳴る。
「てめぇ、よくもやってくれたな!!」
木をガンガン蹴り始めた。
俺
「怖いよぉ~。蹴らないでよぉ。
今降りるからぁ……」
リーダーが更に怒りガンガン蹴る。
――今だ。
俺は 帯を外し、リーダーの顔に投げつけた。
目が逸れた瞬間、
木から飛び降り――
3mの落下速度で、首を一刀両断。
リーダー、絶命。
続けざまに手下の太ももへ刺突。
距離を取る。
犬2匹がギャアギャア吠える。
手下
「糞ガキ……絶対殺す……!」
その瞬間――
ヒュッ!
矢が飛び、手下が倒れた。
雷蔵
「若ァァァッ!!」
風馬、水斗も駆け寄ってくる。
雷蔵の顔は、泣きそうだった。
■ 無事に御所へ帰還
室町御所に着くと、
皆が歓声を上げて迎えてくれた。
守役安田は号泣。
安田
「若ぁ……ご無事で……うぅ……!」
祖父為景も安堵の表情だった。
俺は水をがぶ飲みし、
おにぎり3つ一気に食べた。
そして、脱出の方法を説明すると……
祖父為景
「糞で反撃は長い戦史で初めてだろう。
猿千代でなければ出来んわ!」
安田長秀
「父が“若は神の化身だ”と言ってましたが……
本当だったのですね。」
どうやら名将・安田長秀に
しっかりと“格上げ”されたらしい。
その後はもう眠くなり、皆に断って就寝。
――寝る直前に気づいた。
(うんこついた手……
洗わないでおにぎり食べちゃった……
やっちまった……)
主人公にとって“越後の後継者”としての覚悟が深まる章となりました。
次回はいよいよ室町幕府での謁見編。




