第121話 1538年 8歳 馬場信春スカウト出来るかな
前回、佐渡ヶ島はめちゃくちゃ上手く回ってた。
……ただ、津田が痩せすぎてて心配だ。
俺は山本勘助に馬場信春のスカウトを命じた。
山本勘助からの報告を以下にまとめる。
山本勘助は北信濃の高梨氏の居城にいる竹俣清綱に会いに行った。
馬場信春のスカウトに行く事を伝える。
理由は、馬場信春をスカウト後、帰りに追手が来た場合、
援護に来てもらわないといけないからだ。
竹俣清綱
『山本勘助殿、すまぬ。板垣信方に喧嘩を売ってしまった。
板垣信方には注意しろ』
山本勘助は竹俣清綱と真田幸綱に会い、
俺からの書簡と海野棟綱宛の書簡を渡す。
山本勘助は信濃北部(上田方面)から南下し、諏訪湖周辺へ向かった。
付近に住む猟師を探し、
「半月後に狩猟をする」と理由を付けて、
猟師に狩猟小屋を貸してくれるよう頼む。
猟師に薪と食料を準備してくれるよう依頼。
猟師に100文を渡す。
無事食料や薪があったら、追加で100文渡す事を約束する。
杖突峠を越えて甲斐の韮崎盆地へ潜入した。
戦国時代の甲斐国境には、武田氏が設置した関所が点在していた。
関所の偽り方は、山本勘助が旅の僧に変装し、
武田氏と長年友好関係にある木曽氏の通行手形を偽造して使用。
番人に賄賂として200文を渡した。
馬場信春は当時、甲斐国巨摩郡教来石郷を本拠としていた。
山本勘助は韮崎経由で甲府盆地に入り、
教来石へ移動し接触を図る。
村で子供に屋敷を聞き、
馬屋が空なのを見て信春は留守と予測。
托鉢して夕方まで待ち、
再度邸宅へ向かう。
托鉢坊主らしく裏門に回り、馬場信春を呼び出す。
あっさり馬場信春が出て来た。
22歳の若者だが、只者ではない気配を持つ。
山本勘助
『書簡を持ってきた』
山本勘助は耳元で囁く。
『内密の書簡だ。人目のない部屋に案内して下され』
馬場信春は奥の自室に招いた。
山本勘助は俺の書簡と鎧通しを渡す。
山本勘助
『まずは読んで下され』
馬場信春が書簡を読む。
顔が赤くなり、上気している事が分かる。
山本勘助は金一斤と千文を渡す。
武田信虎の暴政。
父母の殺害。領地削減。
忠義を捧げる相手ではない。
忠義は天下を取る者に捧げたくはないか?
次に上杉龍義――俺の話をする。
蝦夷地守護大名を取るきっかけになった細川氏綱戦、
椎名の城獲り戦を語る。
報酬として千貫、
占領した越中東部の領地譲渡を提示。
馬場信春は、このまま武田氏にいても未来はないと考えた。
そして蝦夷地守護大名となった長尾家は、天下統一に一番近い。
馬場信春は長尾家に仕える事を決意した。
国抜けメンバーに弟の信頼が入る。
連れて行く譜代家臣は親兄弟のいない者。結果三人該当。
山本勘助含め合計六人。
脱出方法を相談する。
甲斐国内では湯治治療を理由に動く。
馬場信春は怪我の偽装をする。
熊に襲われ腹に傷。
包帯を巻き、犬の血をかける。
治療名目で増富温泉への湯治と、神部神社参拝。
滞在期間十〜十五日の湯治届け。
湯治手形は疑われにくく、正規発行された。
だが南信濃へ抜けるには関所がある。
案一、偽手形と賄賂で通過。
案二、夜中に山越え。
案一は早いが、バレれば死罪。
案二は遅いが、追跡されにくい。
よって案二。
冬山装備を整える。
厚い布十八枚。
藁靴、カンジキ。
脱出計画完成。
後は実行のみ。
<命を削る山越え>
出発前日。
馬場信春は金一斤と千文、
甲斐に残す部下十五人宛の書簡を
木箱に入れ封をする。
幼馴染の農家へ行き、
『何も聞かずにこの木箱を埋めてくれ。
三ヶ月後、俺の家臣に場所を教えてやってくれ』
幼馴染は目の前で埋めた。
馬場信春は笑顔で肩をポンポンとし去る。
甲斐に残る家臣へ、
受け取った褒美の全てを渡す。
名将の証だと山本勘助が感心する。
出発の日。
教来石郷から韮崎経由で増富温泉へ。
関所は湯治手形で通過。
宿を取り、食料を調達。
夜二十一時、出発。
吹雪。
深夜三時。
方角不明。
かまくらを作る。
火が付かない。
山本勘助が懐から簡易発火装置を取り出す。
火打石で一瞬で種火。
皆驚く。
山本勘助
『この簡易発火装置は若様の発明だ』
方位磁石を取り出す。
山本勘助
『北信濃は北西の方だ』
皆が磁石に目を奪われる。
山本勘助
『若様の発明だ』
(この男……ただの軍師ではない。若様とやら、どれほどの人物なのだ……?)
馬場信春
『若様が本当に凄い人だと分かりました』
軽く飯を食う。
馬場信春
『三時間寝てから出発だ』
焼け石を布に包み、即席カイロ。
山本勘助
『三個ずつある。寒い所に入れろ』
馬場信春
『これも若様の知恵だろう。儂はますます若様に会いたくなった』
かまくらを潰して進軍再開。
六日目、諏訪湖周辺へ。
冬山での六日間は、まさに命を削る行程だった。
狩猟小屋に到着。
薪と食料はあった。
だが今の人数では一日分のみ。
北信濃まであと一日。
その時――騎馬の音。
<危機>
諏訪氏の兵五騎。
敵か味方か分からない。
山本勘助は合図をしたら小屋に火を付けるよう指示。
馬場信春は従う。
山本勘助が外へ出る。
山本勘助
『儂は山本勘助。長尾家の家臣だ。そちらの名は』
諏訪氏
『武田の間者が逃げ込んだと聞いた。知らぬか?』
合図をする。小屋に火をつける。
山本勘助
『現在、長尾家の家臣ならおる。出て来い』
馬場信春ら五人が出る。
諏訪氏
『武田の武将ではないか。ひっ捕らえよ』
山本勘助
『お主ごときが儂を捕まえるとは何事かー!』
山に響く怒号。
『外交手続きもなく儂を捕まえるとは。
長尾家と諏訪氏が戦になるぞ。責任取れるのか?』
うろたえる諏訪兵。
その間に煙は天へ。
一時間後――
真田幸綱、二十騎で到着。
真田幸綱
『山本勘助殿、如何されましたか』
諏訪兵へ。
『彼らは長尾家の人。
何かあれば信濃北部連合が相手になるが、どうする?』
諏訪氏
『長尾家と分かればよい』
山本勘助
『すまぬが猟師に小屋を建て直すよう伝えてくれ』
四百文を渡す。
諏訪兵は去った。
山本勘助
『真田殿、助かった』
真田幸綱
『煙で察しました。
こちらが馬場信春殿ですね』
互いに視線が交わる。
山本勘助
『真田殿も早く若様の元へ。
この三人なら面白い事が出来ますぞ』
真田幸綱
『準備が整い次第参ります』
馬場信春は悟る。
こういうライバルが多い世界で生きるのだと。
その頃、甲斐国。
馬場信春の国抜けが発覚。
お家取り潰し、領地没収。
譜代家臣は信春を恨んだ。
だが三ヶ月後。
幼馴染が木箱を渡す。
金と書簡。
「好きで置いていったわけではない」
涙する家臣達。
<直江津着>
そして直江津。
山本勘助と馬場信春が俺の前に立つ。
俺
『山本勘助、お手柄だ。褒美に千貫』
『馬場信春、約束の千貫を渡す』
『教来石景政を馬場信春に改名』
『本庄実乃の三女と婚姻』
『三ヶ月越中で慣れろ。その後、軍監だ』
『困ったら俺か勘助か本庄に相談しろ』
馬場信春
『若様…何故ここまで厚く取り立てて頂けるのか…』
俺
『山本勘助から聞かなかったか?
馬場信春
『…いえ、山本殿からは何も聞いておりませぬ…』
俺
『俺は神様の声が聞こえるんだぞ(笑)』
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