第114話 1537年 7歳 越中東部の攻略だぞ
前回、新田に新たな発明を命じた。
それは兵の命を守るための装備。
代々、椎名長常は新川郡守護代職を有していた。
1520年、祖父・長尾為景がこの職を椎名長常から奪った。
しかし――
名義は長尾家。
実態は椎名家が城を保持したままであった。
椎名長常の有する城は以下の三つ。
①主城・松倉城
山岳地帯の山城で、標高約300mの急峻な地形を活かし、土塁・堀切・曲輪が連なる堅固な造り。
近くの松倉金山の経済力で支えられている。
②金山城
松倉城の支城で、金山警護の要。
③魚津城
海陸交通の要衝で、日本海側の水運を押さえる前線支城。
椎名長常は祖父以来の国人ではあるが、
長尾家へ納める年貢は未納。
一揆も抑えられていない。
――十分に解雇事由に当たる。
<魚津城交渉>
まず魚津城の明け渡しを色部に交渉させる。
念のため木杉付子も女官として帯同させた。
色部は松倉城へ赴き、椎名長常に会う。
型通りの挨拶の後――
色部
『椎名殿は何故に長尾家に年貢を納めないか。
何故に一揆を抑えられないか。
極めて怠惰である』
家老・椎名重胤
『恐れ入ります。
金山の産出量が減りまして…
一揆に関しては、椎名家のみならず他家も抑えられておりませぬ』
椎名重胤は椎名長常の叔父であり、実務を一切取り仕切る人物だ。
色部
『言い訳に過ぎぬ。
七日以内に魚津城を明け渡してもらおう』
椎名長常
『それは乱暴であろう』
色部
『守護代職は長尾家にあり、椎名家は任されているだけに過ぎぬ。
管理不十分により取り上げるのは正当な理由である。
良いな』
色部と木杉は松倉城を後にした。
<舟見城包囲>
俺達は越中最東、入善の舟見城を五千の兵で囲んでいた。
舟見城は椎名家の管理下にある入善飛騨守五郎左近尉が城主である。
城の兵は百にも満たない。
五千に囲まれれば、結果は明らかだ。
柿崎に降伏勧告の使者をしてもらう。
内容は――
『降伏すれば城主と兵士の命は助ける』
即座に降伏した。
そりゃ五十倍の敵に囲まれれば、俺でも降る。
元城主と兵士は後方の糸魚川へ送った。
舟見城から次の標的・松倉城までは三十キロ。
夕方、色部と木杉が舟見城へ入る。
五千のうち千人が交代で見張りに入っていた。
<一揆の襲撃>
明け方、赤目から報告。
『若様。一揆の襲撃が一時間後にあります』
水斗に全軍への伝達を命じる。
山城なので遠くまで見える。
双眼鏡代わりに加地見一・見二兄弟を呼ぶ。
長弓の黒崎兄弟と黒田リンも呼び出した。
加地兄弟が駆けてくる。
見一
『若様おはようございます。何用ですか?』
俺
『一揆が来る。敵の首領を探せ。前後左右を見ろ』
後方を見ていた見二が叫ぶ。
見二
『若様!後方から小さい一揆の群れが来ます』
――時間差攻撃か。
皆に知らせる。
黒崎兄弟と黒田リンが到着。
俺
『ここの天守から敵の首領を射抜け。探せ』
見一
『あれが首領では?』
俺には見えない。
三キロ先で指示を飛ばしているという。
赤目に任せる案も浮かんだが、
首領は既にこちらへ接近中。
黒崎兄弟も目標を捉える。
長弓の有効射程は百二十メートル。
天守の高低差を加えれば百五十でも射程内だ。
敵首領が百五十メートルに入るのを待つ。
――放て。
兄・黒崎弦の矢が敵首領の顔に刺さる。
続いて弟・黒崎仁。首へ命中。
確実に仕留めた。
敵の混乱がこちらにも伝わる。
俺は叫ぶ。
『軽騎兵、突撃!』
首領のいた方向へ一斉に駆け下りる。
左右から迫る時間差部隊には、
両側面から伏兵が襲いかかる。
一揆衆は完全に混乱。
正門から打って出て、追撃態勢に入る。
敵は潰走。
まとまりなく逃げ散り、背中に矢と十字槍が突き立つ。
朝靄の中、雪解け水の匂いが戦場に漂っていた。
<戦後>
柿崎と色部が報告に来る。
色部
『若様は相変わらず戦いが上手過ぎる。
しかも使う武器も強烈だ。
敵はたまらないでしょうな』
柿崎
『いやまったくです。
こいつらも若様の怖さが分かっていたら、襲って来なかったでしょう』
俺
『一揆衆は、一揆をしても許されると思っている事が問題だ。
今後は、一揆をすれば村の連帯責任とする』
(この前の一揆の奴ら、町内会の旅行みたいな気軽さだったぞ)
織田信長が根切りと称して皆殺しにするのは、はるか後年の話だ。
俺達は一揆を起こした者を佐渡ヶ島へ送っている。
働きに応じて食料や褒美が与えられるため、飢えとは無縁。
働けない年寄りは解放する。
年寄りだけで「一揆だー」と騒いでも、簡単に鎮圧できる。
――無害だ。
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