第112話 1537年 7歳 よし、募集をかけるぞ。
前回、龍義は桜という相棒を得て、
ついに一人で馬に乗る事が出来た。
柿崎に越後全土、酒田、佐渡ヶ島へ募集をかけてもらっていた。
今回も応募者一万ほどを試験し、五千人まで削る。
訓練を半年から一年かけて行い、その後実戦投入だ。
今回の武芸大会や相撲大会の優秀者の話を聞きに行く。
<癖の強い応募者たち>
一人目 津村 淳之介
身長は一七〇ほど。
身体も顔も傷だらけの三十代。
俺
『前は何をしていた?』
津村
『傭兵だ。
あんたが細川氏綱を撃破した人だろ。
あんな見事な勝ち方されたら誰だって入りたくなる。
しかも金も沢山貰えるンだろ。日本全国から来るぜ』
柿崎
『若様に対してその口のきき方は何だ』
俺
『柿崎、待て。
津村は俺が怒るかどうか試しているのだ。そうだろ』
津村
『若様、流石です。
口のきき方一つで怒るようなみみっちい大将の下では働きたくないのです。
何故分かりましたか』
俺
『その傷だ。
古傷も新しい傷もある。
それなりに傭兵団を転々として、それなりの地位にいたと想像出来る。
あんな口のきき方で生き残れてないだろ』
俺
(傭兵の傷は“経験年数”と“生存率”の証拠だ。
自衛隊でも似たような見方をする)
津村
『若様、失礼な口をきいて申し訳ございませんでした』
俺
『津村、越後では“勝てば給金が上がる”。
生き残ればな。頑張ってくれ』
二人目 環金 鉄男
身長二メートルほどの大男。
髪は酷いチリチリで、まるでアフロだ。
環金
『若様お初にお目にかかります』
……この顔で、凄く高い声。
ほぼソプラノ。
皆、えっという顔で笑いを堪えている。
環金
『若様の所に金城様がいると伺ったのですがマコトですか?』
俺
『本当だ。佐渡ヶ島にいるぞ。
金城兄弟に会いに来たのか?』
環金
『会いに来たなんて恐れ多い。
私にとって金城様は神様以上の存在なのです。
若様の軍団で活躍して、金城様からお声をかけて貰う事が夢なのです』
俺
『そうか。頑張れよ』
柿崎は「こんなハズでは…」という顔をしている。
なお、柿崎と話した時は普通の声だったらしい。
戦績は優秀とのことだ。
三人目 鬼瓦 武蔵
身長一七〇ほど。
髪を後ろで束ねた、少し暗めの三十代。
鬼瓦
『お初にお目にかかります。
南部様の渡河戦を伺い応募しました』
俺
『鬼瓦は越後の者ではないな。
出身はどこだ』
鬼瓦
『何故に分かりましたか。
私は駿河出身です。
武者修行中で関東、奥羽方面で修行しておりました。
私は暗器が好きでして、若様の渡河戦の話を聞いて興味が出ました。
しかも若様は蝦夷地の守護大名の跡継ぎでらっしゃる。
私は若様が天下を取ると思い馳せ参じました。
是非とも使って下さい』
俺
『暗器が好きとは面白い。
今、出せるものがあるか』
鬼瓦は束ねた後ろ髪から、細長いクナイを取り出した。
俺
『忍びがよく使う武器のようにも見えるな。
赤目の影牙も暗器が得意だった。
鬼瓦、影牙と暗器の意見交換をしろ』
鬼瓦が立ち去った後、
赤目に指示を出す。
「もし鬼瓦が敵の忍びなら殺せ」
後日、報告が来た。
鬼瓦は忍びではなく、単なる暗器好きとの事。
滅多に笑わない影牙を笑顔にしたという。
人が良すぎるだけだったらしい。
……勘違いさせる要素が多すぎだよな。
良かった。
<新しい“目”>
津村淳之介と鬼瓦武蔵は軽騎兵。
環金鉄男は重装歩兵で採用だ。
本人の希望ではなく、身長で決める。
面接をしていた建物を出た時、
小柄な少年二人が平伏していた。
少年
『若様、私達は武芸大会で落ちましたが、若様のもとで働かさせて下さい』
柿崎
『落ちたのだから諦めろ。修行しろ』
俺
『得意な事は何だ』
少年
『得意な事は無いですが、目だけは遠くを見れます』
俺
『あれが見えるか』
俺は遠くの春日山城を指差す。
ここから約十キロ。山城なのでよく見える。
俺
『最上階の一面の窓の数はいくつか』
少年
『六です』
もう一人の少年にも、その下の階の窓の数を聞く。
ズバリ当てた。
俺
『物見で役に立ちそうだな。
高い所に立たせるけど文句は受け付けないぞ。
採用だ。名前は?』
少年
『私が兄の加地 見一、弟の見二です』
俺
『お前達は戦場で“目”になる』
赤目が不思議そうな顔で俺を見る。
物見は赤目の役目だ。
――こんな奴らをどう使うのか、という顔だ。
後で赤目に、加地をどう使うか教えた。
赤目が珍しく、びっくりした顔をした。
しめしめだ。
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