第108話 1537年 7歳 よし、馬場信春を引き抜くぞ
前回、信濃北部連合が成立!
山本勘助を俺の邸宅に呼び出した。
甲斐国との断交と、信濃北部連合の成立を伝える。
俺
「山本勘助にしか出来ない仕事を任せたい。」
山本勘助
「難しい仕事という事ですかな」
ニヤリとする。
俺
「一ヶ月後くらいに、越中新川郡の椎名を攻略する。
この領地を与え、尚且つ直江津に来た時点で千貫を与える事を報酬として、
ある男を引き抜いて欲しい。
その男の名前は馬場信春と言い、
甲斐郡内・都留郡の千石の領主だ。
(この時の名は教来石景政であるが、混乱するので馬場信春に統一する)」
馬場信春は、
武田四天王の一角を占める名将中の名将だ。
長篠の戦いまで、かすり傷一つ負わなかったという。
このため、「不死身の鬼美濃」と呼ばれる。
何故引き抜けるか。
馬場信春が重用されたのは武田信玄からだ。
武田信虎時代は、国人の一人に過ぎず冷遇されていた。
この世界では、
武田信虎の錯乱は、長尾家躍進の1533年以降、
史実より更に酷くなっていた。
武田信虎は、1534年。
馬場信春の父・教来石信保に、
実際は無実にも関わらず反乱罪を適用し、自死を強要。
馬場信春の母も、心労により死去。
――そりゃあ、武田家に絶望もするよ。
俺は心の中でつぶやく。
当時、馬場信春は
武田譜代の小田切氏の娘を嫁にしていたが、
連座を恐れた小田切氏により離縁を強要された。
子供が出来ていなかった事が、まだ救いであった。
馬場信春は父に代わり領主となったが、
三千石から千石へ減俸を受ける。
翌1535年。
弟の信頼が乱闘騒ぎを起こし、
信頼が一年間の謹慎処分を受け、
馬場信春の立場は更に厳しくなった。
この世界の馬場信春は、
武田信虎に絶望している。
だからこそ、
引き抜ける可能性が高いのである。
<山本勘助、動く>
山本勘助
「儂の顔は甲斐国では知られておりませんので甲斐国に入れますが、
馬場信春は信じないでしょう」
山本勘助の顔は、隻眼で醜い。
俺
「確かにその顔だからな〜味があるけどね」
山本勘助はフッと笑う。
俺
「俺の書簡と、業物の鎧通しと、銭五貫と、金一斤を持って行け。
まずは色部と話をしろ」
荷駄と共に行くので、
銭五貫(二十kg)も余裕だ。
金一斤は、武士の年収数年分に相当する。
だが重さは小さい。
持ち運びに向く。
色部を呼び、先の話をしたらため息して――
色部
「儂ら若様にこてんぱんにやられておるから何も言えませんが、
普通の家臣は反対しますよ」
俺
「大丈夫だ。任せろ。全て上手く行くぞ。
それで色部は、
山本勘助を連れて信濃にいる竹俣に会わせてやってくれ。
馬場信春を調略する段取りは、
全て山本勘助が決めて全責任を被れ。
仮に失敗しても死んで詫びるな。
仕事で詫びろ。
竹俣や色部は、
今仕事をして俺に詫びている真っ最中だぞ」
色部
「若様、それは言わないで下さいよ」
色部はすぐに、
山本勘助を竹俣に会わせに行った。
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