第102話 1537年 7歳 京都→帰路→佐渡ヶ島だぞ
前回は、
三姉妹が「千貫」というとんでもない大金をもらった結果、
分け方で盛大に揉めて、
主人公にこってり叱られる回でした。
<京都・花の御所>
重装歩兵六百を連れ、俺は祖父・長尾為景とともに再び京都へ入った。
目的は二つ。
蝦夷地守護大名の任命。
従四位下の受領。
室町幕府――花の御所。
祖父と俺は、白の直垂。
武家の公式礼装だ。
……正直に言う。
緊張しているのは祖父の方だった。
長尾為景
「良いか。武士たるもの――
いかなる時も心、平常だぞ」
……いや、じぃちゃん。
それ“心・平常”じゃなくて“平常心”だよ。
しかも声、震えてる。
説得力が迷子だ。
いつもの待機室。
いつもの呼び出し。
そして、将軍の御前へ。
将軍
「将軍家宣旨。
長尾為景、忠功抜群につき、
従四位下に叙し、
蝦夷地守護を補す。
北夷鎮撫の事、油断なく執行すべし。」
側近が黒漆塗りの文箱を開く。
中には――
金箔押しの御教書。
蝦夷地守護補任状。
将軍自ら、御教書を取り上げ、祖父へ授けた。
長尾為景
「将軍家の宣旨、謹んで拝受仕る。
北夷鎮撫、一刻も背かず奉行致す。」
……そして。
長尾為景
「……ここまで来たか」
祖父の満足度は、これまで見たことがないほど最高潮。
孫として――
素直に嬉しかった。
うんうん、と頷いて祖父を見る。
――感涙。
――鼻水。
顔、ぐちゃぐちゃ。
俺は慌てて手拭いを差し出す。
祖父はそれに気づき、
顔を拭き、
チーンと鼻をかむ。
将軍と側近、苦笑。
……しょうがないだろ。
じぃちゃん、こういう場に慣れてないんだぞ。
<帰路・西洋帆船>
俺達は再び西洋帆船十隻で堺を出港。
太平洋を抜け、蝦夷地経由で直江津へ向かう。
甲板。
潮風。
青い海。
三女
「見て、海だよ、海。私、海大好き」
次女
「何で?」
三女
「わかんない?
海見れるって事は――働かなくて良いんだよ!」
長女
「そっちかーーい」
次女
「でも、甲賀の里だと、
こんな良い船で移動なんて無かったから、私も海は好き」
三女
「食事も必ず魚つくでしょ。
あれ美味しい。大好き」
長女
「わかる。
新鮮な魚って、こーーんなに美味しいなんて、赤目来てから初めて知った。
海、大好き」
三女
「結局、みんな海が大好きじゃん」
次女
「そうだね(笑)」
長女
「そうだよ(笑)」
三女
「これで海眺めながらお酒飲めたら最高じゃん」
夜雀
「こら。あなた達まだ勤務中よ。
それに――今は警戒見張り中」
三姉妹
「げ、大姉、すいませーーん」
夜雀
「(笑)
あなた達、甲賀の里を抜けて、
お金も貰って、羽根伸ばしたいでしょ?」
夜雀
「夕飯の後、少しだけどお酒持って行ってあげるわ」
次女
「大姉、優しいから好き」
長女
「大姉も一緒に飲もう」
三女
「逃しませぬぞー(笑)」
次女
「あんた酒弱いから少なめねーー」
長女
「また調子のるから」
三女
「そんなーーー(涙)」
――こうして。
直江津を出発したのは一月の終わり。
帰り着いたのは、七月初旬だった。
<佐渡ヶ島>
帰路、佐渡ヶ島にも立ち寄る。
事務方の男。
小田明道。
名前のわりに、やたら暗い。
そんな彼に、
上品な振りをして売春宿と博打場の経営が出来る女・葉月
を紹介した。
小田明道、
葉月を見た瞬間、ドキドキが止まらない。
小田明道
「……小田明道です(小声)」
葉月
「真面目そうな人ね。
聞いて。 私の周り、
お金の使い込みはするわ、乱暴でね。
でも明道さんは安心できそう」
小田明道
「ハ、ハイ。大丈夫です」
葉月
「私は見ての通り、か弱い女でしょ?
だから……明道さんを頼りにするしかないの」
葉月が、潤んだ瞳で見つめる。
小田明道
「葉月さん。
何でも言って下さい。
何でもします!(大声)」
――おい、小田。
止めとけ。
その女、危険だぞ。
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