表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

3.お弁当を喜んでくれた彼



 ――翌朝。

 私は作ったばかりのお弁当の写真を撮ってインスタに投稿した。

 しらす入りの卵焼きが影武者生活のトップランナーに。


 普段はお弁当袋を手提げに入れてるけど、先輩の分とサイズが違うので判別できるように手に持った。


 先輩用のお弁当は学校の下駄箱前で莉麻ちゃんに渡し、ランチタイムに新汰先輩へ届けられる。

 私は先輩の反応が知りたくて、教室から莉麻ちゃんの背中を追っていた。

 お弁当を受け取った彼は、目の前に掲げてマジマジと見つめる。


「……ねぇ、このお弁当袋をどこかでなくしたことはない?」

「え…………。しょっ……、しょっちゅうなくしてるからあんまり覚えてないかな~」

「そっか。そうなんだ……」

「あははは……。嫌になっちゃうよねぇ」


 伝達ミスが生じてしまったけど、実はその答えで正解。

 お弁当箱をどこかに置き忘れてしまうクセがあるから、同じお弁当袋を何枚か手作りしていた。

 なぜ同じものにこだわってるかと言うと、紛失した際に見つけやすくするため。


 先輩は莉麻ちゃんと別れてから教室を出た。私は再び身を隠しながらそのあとを追う。



 ――到着した先は、穏やかな日差しを照りつける屋上。

 私は屋上扉のガラス窓から覗き込んでその様子を伺った。

 彼は日陰に腰をおろしてお弁当箱を開くと、昨日卵焼きを食べていたときのようなさわやかな笑顔が生まれた。それを見て胸キュンする。

 やっぱりお弁当を作って正解だったな。

 扉越しに自分のお弁当箱を開いて、彼のことを考えながら「いただきます」と食べ始めた。



 ――その日の晩。

 ベッドに寝転びながらおかずのレシピを検索していると、SINからインスタのDMが入った。すかさず開くと『お弁当美味しかったよ。ありがとう』と。

 思わずとろけるようにニヤける。


『いえいえ!! 好き嫌いはありますか? 先輩の好みに合わせますから遠慮せず言って下さいね!』

『ありがとう。実は梅干しが苦手』

『了解です!! 梅干しは一切入れません!』

『明日もお弁当を楽しみにしてるね』

『頑張ります!!!!』


 そこでハートマークが押されて会話が終了した。

 空になったお弁当箱を見ただけでも嬉しかったのに、律儀にDMを送ってくれるなんて。


 スマホを握りしめたままうっとりしていると、明日委員会だったことを思い出す。


「やっば! クッキーを作ると宣言してたことを思い出した。よぉ〜しっ! 明日のために腕を奮うぞ~!」


 重い体をひねって体を起こし、キッチンに足を向かわせてクッキー作りを始めた。

 今度はもっと近くで喜んでる姿を見たいなと思いながら……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ