第3話 夢の底
Scene-03(屋外)デッキ階段 - 夜
双羽たちがペストマスクと対峙してい駅前デッキには、当然のことながら人だかりが生まれていた。かなりの数の制服警官も駆け付け、繁華街から駅へ続く階段を登ってきた通行人たちも何事かと足を止めてゴチャっと固まっていた。
そんな一団の後ろに付いた制服姿の少女三人も足を止める。制服は双羽のものと同じデザインだ。
「なに、動画撮影?」
三人のうち二人は迂回しかけたが、ショッパーを大量に持った娘はガンとして留まる。
「――さっきの人だ! やっぱり配信だよ、これー」
「待って、もしかしたら喧嘩かも……」
奥にある街灯の下で、警官に囲まれた変なコスプレ男が女生徒二名と言い争いっているように見える。
女生徒のうち一人は、三人と同じ制服を着ていた。
遠目でジーッと見ていた少女のうちの一人が、飛び上がらんばかりに喜ぶ。
「――間違いないよ、配信の吸血鬼さんだ!」
さらに、やっぱりさっきのそうだったとか、実物の方が可愛いー、きれーと続けつつ、塞がった手で苦労してスマホを引っ張り出すとズームで覗き込んだ。
当然のように動画はオン。
フレームに、目の色彩が反転した女生徒二人の小さな影が写った。二人とも、夜がとても似合っている。
「ウチの制服着てる子がいるけど、リボンが指定のじゃないから学年分からないな」
「三年生かなぁ……」
「――用事も終わったしさ、もっと近く行って見ようよ!」
焦って駆け出そうとした少女を、他の二人が止めた。
「あそこ様子が変だよ……」
「さっきも言ったけど、勝手に他人を撮ったら盗撮!」
「拡散しちゃ駄目な人が、配信なんてするわけないって」
スマホを抱えた一人は、他の二人の言葉も聞かずに駆け出していく。
「ああ、もう……」
もう一人も慌てて後を追った。
最後の一人は無言で色彩の反転した目を見つめていたが、ため息付くと二人を追って渋々と駆け出す。
三人が喧騒の中心へ近づいて行くと、物騒な叫び声がハッキリ聞こえてきた。