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どうぞよんで下さいー
「な…なぁ…雛森。」
「?」
…
……
「好きだ。」
…………
2人の間に沈黙が流れた、
数秒間の沈黙。
「…みや…の?」
今の状況を理解できずにいる雛森結菜。
「…だから、俺は雛森のことが好きなんだって。」
「…何回も言わせんなバカ。」
その言葉を聞いた瞬間、結菜の心の中の、何かが揺れた。
「…ぇ…」
今までに感じたことのないもの
「あ…ありがと・・ぅ?」
これが、
「なんで疑問形なんだよw」
“恋”
「だ…だって…」
なのかもしれない。
「じゃあ…
俺と付き合ってくれる?」
つ き あ う ?
少女漫画の中でしか見たことのないこと聞いたことのないこと
周りの友達が騒いでること
それは、自分に関係ないことだと思っていた。
「…ぇ?付き合うって…?」
だから…
「うん。付き合ってください。」
知らない世界に飛び込むような気分だった。
「…」
大きな不安の中に
すこしだけの、好奇心があって。
今までしらかった世界の中に飛び込むという、冒険の旅。
心臓の鼓動が聞こえてくる。
これは、新しい世界へと飛び込む好奇心からなるものなのか?
それとも、ドキドキしてるってことなのか?
「…いいよ…」
「…!!」
「じゃあ、今日から雛森結菜は、宮野夏樹の彼女って事で!」
「うん。」
「じゃーなっ!結菜っ!」
「…バイバイ」
はじめて、男子に「結菜」って呼ばれて、
はじめて、誰かの彼女になって、
はじめて、心臓の鼓動が聞こえた。
夏樹がもう見えなくなって、
平常心に戻った結菜だったが、心臓の鼓動はおさまらない。
これから、こんな思いが続くのだろうか。
希望と、好奇心、
そして、不安が入り混じって、
感じたことのない感情が、結菜の中を渦巻く。
「これから何が起こるのだろうか。」
特別、非現実を求めているわけではないが
いままでの「当たり前」と、
これからの「当たり前」が別物のになるのではないか、
という想いが結菜の中には確かにあったのだった。
続く。