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43、非常と非常識

「あれが大聖堂、おっきいね」


ハッタの町にある一際目立つ大きな建物。

周りには樹木や立て札が並べられ他とは違う異様な区域となっている。


「あのガラス、どうやって作ったんだろうね」


太陽光に反射する色とりどりのガラス。

女が手をあげる模様になっており絵画みたいに壁に埋まっている、それも何枚も。


「多分職人が作ったんじゃないか?」


「どれだけ私をバカだと思ってんの」


別にバカにしたつもりはないけど。

白い壁に埋まるガラスに見惚れながら周辺の建物の影から人の気配を探る。

黒装束の男数人、恐らく神父か何か。


「メノアの地図によると地下に繋がってると思わしき場所は大聖堂の壇上にある巨像の下」

「だってさ」


「そこのギミックを探るんだよね?」


「まぁ簡単にいうとな」


俺達の今回課せられた任務は大きく二つ。

一つは地下入り口の解明、二つは地下施設の探索。

最悪一つ目で切り上げても良いと言っていたけど地下に行ったなら探るまで帰れない。


「ヒスイ、指輪はめたか?」


「もちろん、かわいいでしょ」


ヒスイの人差し指に光る赤い指輪。

これはメノアからもらった魔法発動を隠す魔道具、使い切りのくせして家が買えるほどに高い。

メノアが言うに俺達は一つで足りるから財政的にもありがたいと言うこと。


「まぁそうだな、かわいいね」


「棒読みやめて」


現在の位置は大聖堂側面にある建物の屋根上。

樹木を伝い裏口から入る、巨像を伝い下に降り入口を探る。

今日は平日だから信者達は仕事、いるのは少数、最悪気絶させれば堂々とギミック解除に勤しめるけど愚策。

気絶させた瞬間に罠魔法が発動する危険を考慮し隠密に隠密を重ねる作戦。


「アレス、準備はいい?」


「どんとこい」


羽織っている黒のローブがかすかになびく。

指輪の効果で圧は感じ取れないけど確かに伝わる力の流れ。


付与魔法エンチャント風属性ウィンドエレメント


全身に伝わる痛みの連鎖。

常人なら泣き出す所だけで俺は大丈夫、鍛えているから。


「ヒスイ背に乗ってくれ」


「うん、わかった」


ヒスイが俺の背に乗った所で少し違和感。


「どうしたのアレス、もう少し弱める?」


「いや、そうじゃなくて」

「髪を後ろに結んでくれないか、たまに鼻にかかってくしゃみが出そうになる」


「あ……ごめん」


ヒスイが髪を後ろに縛り気を取り直していざ潜入作戦。

風魔法の扱い方が向上し飛翔時と着地時における音を小さくする事ができる。

これなら大抵の奴らは欺ける。


建物の屋根から周りにはえる樹木に移りそこから大聖堂の屋根に乗り移る。

小さい屋根が四方に建てられているがそこには向かわず真ん中の大きな屋根から侵入を敢行。


「ねぇ、屋根ってこんなに青いんだね」


「ええい、耳元でささやくな気が散る」


青い屋根に低姿勢で徘徊、侵入する入口を探す。

メノアが言っていた通り巨像の上部だけ四角形に空き魔法陣で外部からの侵入を遮断している。

宗教的に巨像の上に障害物を置くのは良くないから魔法陣で代用しているらしい。


「まぁ大聖堂を悪用する輩を捕えるためだ、神様も許してくれるだろ」


信仰のために開けた天井も周りにまわって生かされる。

やはり何かを信じるという事は大事なのか。


「ねぇアレス、ここから降りるってマジ?」


「マジだしこっからは喋るなよ、気づかれたら戦う他ない」

「無用な戦闘は控える、言われたろ」


罠がないかを調べ魔法陣を解除、二人同時に抜けれないので初めに俺が降りる。

片手を上げるポーズをとっているのでその手先裏に飛び移り手首まで伸びる服の溝に足をつく。

全身灰色なので服かどうかは知らない。


下には数名の信者がほうきで掃除中。

今なら裏手で作業ができる。


「………」


天井から顔をのぞかせるヒスイ。

早く来いというジェスチャーをするが一心不乱に顔を横に振る。

俺は口パクで問題があるか尋ねたところ。


「た・か・い・こ・わ・い」


という返答。

時間がないというのに、今にも泣き出しそうなヒスイを前に心を鬼にする。

以下口パク。


「いいから来い、さらわれた人達が待っているんだぞ」


「行きたいけど足が震えて無理なの」


「俺が受け止めるから勇気を出して飛べ」


人は勇気があれば大抵の恐怖を克服できると俺は思う(持論)

それは老若男女に通じる事で、人間なら誰でもできること(持論)

だからヒスイもできる(暴論)


涙で訴えるヒスイだがここは飛んでもらわないと話が進まない。

というか高所が怖いなら作戦段階で言って欲しかった。

恐怖心に抗うように天井から顔だけを出していたヒスイがゆっくりと立ち上がり足をかける。

普通に白パンツが見えているが黙認。


「受け止めてよ」


「もちろんだ」


ヒスイの決死の降下作戦開始。

と同時に俺の目にはありえない光景が映っていた。

なぜか飛び降りるヒスイの目は閉じていたのだ、理解が追いつかない。

「高所が怖い→目を閉じる」は理解できる、だが「高所が怖い→目を閉じる→飛び降りる」は理解できない。

だがそんな中さらなる追い討ち、ヒスイは巨像の手先に飛び移るのではなく直接俺目掛けて突撃してきた。


俺が受け止めるって言ったのは直接ではなく下からの補助のつもりだったのだが。

時すでに遅し、空中に飛んだヒスイは重力と共に落下してくる。

手を伸ばし足場を固める、付与魔法があればどんな場面にだって対応して見せる!


……


「目を開けろヒスイ」


「……あ…ありがとう、本当に怖かった」


巨像の手首裏、服の突起と髪の上でヒスイをキャッチ。

二人とも落ちる事なく巨像の上、ヒスイを手首裏の足場に誘導。

下に届かない様小声で喋る。


「高所が怖いなら前もって言ってくれよ」


「ごめん、行けるかなって思ってたけど想像以上に高かった」


苦笑いを浮かべるヒスイ。

まぁ無事二人とも潜入に成功したことだもう何も言わん。

あ、そういえば。


「それとこういう作戦の時はズボンにしてくれよ、正直パンツが見えた時は直視できなかったぞ」


「……」


ヒスイの顔を見て言葉は凶器と母から教わった事を思い出す。

やはり言葉とは不思議なもので言った後じゃないとその重大性が分からない。

何を言いたいかというとヒスイのげびた物を見るような目を向けられて初めて今の言葉は非常に非常識なことに気が付く。


「えぇと……すみま……」


謝ろうとした瞬間、片足が滑る音がした。


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