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37、依頼と開始

窓から差す光で目がさめる。

起き上がるとヒルトが寝ていたベッドは空席。

いよいよ今日から依頼内容の魔道研究所があるハッタという町の調査へと乗り出す。


「おはようアレス」


「……おはようヒルト」


扉にはエプロン姿のヒルトがいた、昨日釘を刺されたが女の子にしか見えない。

伸びる灰色の髪と大きな赤い瞳と細い線の体。

俺は普通に女性と話すみたいに目を逸らしている。


「朝ごはんはできてるから先に食べていてくれ、僕は姉さんをおこしてくるから」


「あぁ、悪いな」


1階へ行くと机には卵料理が並べられていた。

普通にうまい、今度アイラード王国で作れるようにレシピを教わろうかなと思う程に美味。

卵の中にとろけるのはチーズか、マイルドな味わいがいい。


「君は……美味しそうに……食べるね」


「おはようでいいのか、メノア」


ヒスイとヒルトに両脇を抱えられながらおりて来るメノア。

起きているとは言い難い程に目が閉じている。

介護されるように目の前の席に座るメノア、鼻をひくつかせフォークを手にする。


「出立は2時間後だろ、大丈夫なのか?」


「姉さんは寝起きが弱いだけで朝は程々だ、心配するな」


寝起きと朝は同列と考えていたがこの姉弟は違うらしい。

のどかな朝食をとっているとこのチームで銀級相当の依頼を受けるなんて想像できない。

だけど昨日のヒルトとの衝突で付与魔法をかけた俺と同列の速さで走っていたヒルトには期待できる、それに金級冒険者メノアは肩書きの信用がある。

不安要素は俺だな。


「では1時間後に出立する、それまでに準備を終わらせておいてくれよ」


卵料理を食べる度に目を開いていたメノアは胸を揺らし2階へ歩く。

確かにヒルトが言っていた通り寝起きに弱く朝は程々。

俺も支度をするか。


「ヒルト、その双剣は魔道具なのか?」


壁にかけられた交差するように収まる二振りの剣。

鞘しか見えないが持ち手の部分に赤と青の線が見える。


「まぁ半分って所だな」

「この剣はそれぞれ僕の魔法出力を手助けする魔石が入ってるだけ、本来の魔道具と目的が違う」

「でも名称は魔道具だから違いはないかな」


「へぇ、そういう形式は流行ってんのか?」


「いや、正直補助目的で魔石を使うなんて僕くらいだよ」

「魔石を組み込むなら魔石だけで効果を発揮する完結型が主流、言うなら僕は邪流さ」


邪流か、確かに魔道具の使用目的は魔法の簡略化にあると習った。

魔法を使う際に必要なのは使用者の魔力と知識、その二つが満たされて初めて魔法が完成する。

魔道具はその知識の部分を魔石に肩代わりさせる代物。


「そう言うアレスの剣は、魔道具じゃないよね?」


「あぁ、俺は魔力がないに等しいから魔道具は使えないんだ」


「へぇそうなんだ」


「不安になったか?」


「いや、魔力なしで銀級に上がってるから逆に信用度が増したよ」

「生まれた持った魔力だけで上がってきた奴は大抵死ぬか人に迷惑をかけて道連れ、アレスみたいに分かってる人になら命を預けれるよ」


「そう言ってもらえて嬉しい……すまないヒルト着替えるなら俺は出て行くぞ」


「もう……僕は男だって言ってるでしょ」


俺はむくれるヒルトを背に部屋を退室。

分かってくれヒルト、別に君がどうこうと言う問題ではない。

これは俺の問題、俺が君を男として見れない雑念が付きまとうのだ。

数分の後。


「これなら大丈夫?」


「あぁ、その格好なら平気だ」


長髪を後ろで結ぶ昨日の姿。

この形態では男の子と認識できる、だがさっきのパジャマ長髪の姿はアウト。

女性経験が豊富な人なら男としてみれるのだろうか。


「そろそろ時間だね、今日はよろしくなアレス」


「俺たちこそ、よろしく頼むよ」


一階に行きメノアとヒスイを待つため椅子に座る。


「お待たせ男子達、依頼をこなしに行こうか」


アイラード王国を出立してから1週間。

同行人である金級冒険者メノア・ラック、銀級冒険者ヒルト・ラックと共に闇ギルドが関係する魔道研究所があるハッタへ。



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