251、真実と裏腹
「よろしくねアレスちゃん!!」
風になびく薄ピンク髪は流れるように俺の所へ。
「おい……すりすりしないで貰えるかな」
初対面の女に顔面を擦り付けられるとは生きてきて思いもしなかった。
距離が近い人は今までも見てきたけどこれほどまでに距離が近い……というか距離が無いのは初めて。
「ではアレス君、メディをよろしくお願いするよ」
そんなドタバタを笑いながらエルトは宿を後にする。
この状況を収集してから退出願いたかったが、抱きつくメディの力は思った10倍強かった。
「離れろ!!」
あまりにもしつこいので強引に体を突き放す。
仕方がないだろう、何もしなかったら頬の皮膚が削り死ぬまで擦るぞこの女。
「きゃあ!!……アレスちゃん、ごめんなさい」
なぜか俺が理由もなく突き飛ばした酷い男みたいになってるけど正当防衛。
だが真意とは裏腹に周りがどう受け取るかは別問題。
「なにしてんのあんた!!」
頬に感じる痛感。
ヒスイの平手打ちが俺の顔を横に振る。
「どんな理由があろうとも話す前に手を出さない!」
叱咤を受ける理不尽。
もちろん俺は嫌な事があったら即暴力なんて人間性は持ち合わせていない。
だが、この薄ピンク髪は訳が違う。
明らかに俺の頬を削ろうとしていたのだ、これは抵抗だろう。
……と、言った所で納得するわけもないので俺は最適解を決め込む。
「悪かった、配慮が足らなかったよ」
「分かれば良いのよ」
隣にいたマーズが口を挟もうとするのを視線で制す。
マーズよ、時に言葉は無力になる事を知るがよい。
突き飛ばしたメディに手を差し伸べる。
「突き飛ばして悪かっ……」
「優しい!!」
学ぶ力は人それぞれだと思うがこの女はそれに乏しいらしい。
悪かったという前に抱きつかれ今度は俺が尻もちを着く、打ちどころが悪ければ尻骨が砕けるとは思わないのかこいつは。
そして、抱きつかれている横でヒスイの顔が険しくなることを確認。
なぜ険しくなるか、それは目の前で不貞行為を働く俺に嫌悪感を抱いているのだろう。
「はぁ……とりあえずリディオス国に行くルートでも確認するか」
その言葉にそれぞれが頷く中、メディだけがホールドを解除せずに顔横で頭を縦に振る。
「いつまでくっついてんのあんた達、まぁ仲が良くていいと思うけどね。イチャつくのを控えてくれると助かるのだけど」
冷めた目線で見つめるヒスイ。
こんな事でパーティの信頼に傷が付くとは心外。
「ヒスイ、このメディという方はどうも人との距離感が分からないようなんだ。決してイチャつくなど……」
またもや俺の言葉とは裏腹に現実は進む。
「私、アレスちゃんの事好きなの!付き合おうよ!!」
「え!!?」
声を上げたのはユウラ、俺含めた3人は言葉を失う。
言っておくが俺はこの薄ピンクちゃんとの面識はない。
それに……告白されたのは今回が初めて、どうしようか。




