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21、安静と出力

「寄生魔獣ってなんですか?」


闇ギルドと戦っているという元剣聖のエルト・レンジャーからの依頼「寄生魔獣」の討伐。

過去王国兵団では依頼添削の業務もしていたから魔獣の種類は人よりも知っている自負があるが寄生魔獣は聞いたことがない。


「端的に言うと魔獣が人間に寄生して魔法を使う厄介な魔獣だよ」


「そんなのがいたら世界が終わってる……」


「まぁ従来の魔獣の繁殖方法が当てはまればの話だけどね」

「その寄生魔獣は自然繁殖をしない、作成方法は人為的な実験だよ」


人的な実験、誰かが意図的に魔獣を作っていると言うのか。

そんなの聞いた事がない。


「まぁ君たちに行ってもらうのは下級相当の場所でね、本当にヤバいのが魔獣を魔道具みたいに使おうとしてる集団がいるんだ」

「簡単に言うと生きた魔道具を作ろうとしている」


「嘘……だろ」


「まぁまだ試作段階だからなんとも言えないけど危険視する段階にきてる」

「ということで君達にはこの場所に行ってほしい、もちろん傷を癒した後でね」


エルトの手には一枚の依頼書。


「無理強いはしないから無理そうなら破棄しちゃっていいからね、それじゃ期待しているよお二人さん」

「それと本依頼は君たちのギルドに発注してあるから休養がてら王都に戻りなよ」

「では活躍を期待している、さらば」


手を振りながら部屋を出ていくエルト。

無理そうなら破棄してもいいってそんなに軽い依頼なのか。

まぁ手始めの依頼は俺達の可能性を探るためのもの、本隊に入るには数をこなしてからか。


「ヒスイ、俺が起きる前にエルトは何か言っていたか?」


「あの船からすごいアレスを褒めてたよ、ここに運んだ時もね」


基本褒められて嫌な気持ちになる事はないがエルトに言われると素直に受け取れない。

船の上であれだけの差を見せつけられて褒めるなんて皮肉がすぎる。


「ねぇアレス、体平気そう?」


「そうだな、付与魔法の出力を上げて戦ったにしては前ほどの痛みはないな」

「これなら数日経てば動けると思う」


「そっか、それは良かった」

「じゃあ私はご飯作ってくるから安静にね」


「あぁ、ありがとう」


ぎこちない笑みを浮かべていたヒスイ。

それにエルトが喋っていた間も物静かに聞いていたな、普段なら知りたい事を聞くはずなのに。

やはり船の上での戦いはヒスイにも効いたか。

その後ヒスイの野菜料理を食べ夜を迎え一階のリビングでひと休憩。


「寄生魔獣ってさ、誰がどうして作ったんだろ」

「やっぱ私達みたいな人間が作ったのかな」


「確信は無いけど人間だろうな、魔族側にも利点があるけど人体に作用する研究は人間がいないと進まない」

「それにエルトが魔獣を魔道具に改造するとか言ってから可能性的にはこっち側だな」


「それは、悲しいね」


悲しいか、魔獣を研究対象にする時点で俺たちと同じ人間だとは思えない。

そう言った意味で悲しいというなら分かる、だけどヒスイが悲しいと抱く対象が同じかどうかはわからない。

ヒスイなら魔獣に対してもその感情を抱いても不思議はない。


「そういえばここってどんな村なんだ?」


起きてから今の今までヒスイの介護なしでは動けないほどに体が強張っていた。

連れてこられた情報はあってもここがどこなのかは知らない、俺達が乗ってきた馬車とかはどこにあるのだろう。

ことと次第によっては馬車調達から始めなければいけない。


「この村は昔エルトさんが住んでた村なんだって、この家は元家でいつでも使っていいってさ」


「元家ね、というかあの人どこの国の兵士だったんだ」


「さぁ?」


自己紹介を自分でしたいと言っておきながら情報がまるでない。

わかった事があるとしたら俺と同じ元剣聖で俺達より強いという事だけ。

あとは闇ギルドと戦う組織に属していると、エルトに関してはまるでわからない。


「にしてもあの人強かったな、付与魔法の出力をあげても太刀打ちができてなかった」

「本当の強者はまだまだいるって事になるよな」


「その事なんだけどねアレス」

「私、船の上で付与魔法を上げろって言われてさ最大出力にしていいか迷っちゃったんだよね」

「それで最大にする前にアレスがやられちゃって、すごい後悔した」

「だからさ決めたいの、付与魔法をどこまであげていいかを」


「そうだったのか、悪いな気を使わせて」

「だけど今度からは俺の体を気にせずに最大出力で頼む、俺が負けたらヒスイの身も危ないからな、それこそお前がいなくなったら俺たちの再起は果たせなくなる」


「分かった、今度は躊躇しないからアレスも安心して戦ってね」


魔王軍との戦線を目指し冒険者になったが当面の相手は闇ギルドに。




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