17、捜索と船
「そんな大口叩いていいのか剣聖様よ」
「周りには40個の魔銃と前には3個の魔剣、対するあんたは剣一本と使えねぇ女」
「威勢は状況を見て張ってくれよ」
「その言葉をそのまま返すよ、剣一本とお前が言う使えねぇ女がいてくれれば」
「俺はテメェらクズ野郎に勝つことができる」
「なら、死ね!!」
戦闘用魔道具を光らせ突撃する3人。
こいつらは恐らく連携を取れない、弾幕の中を3人が綺麗に連携するなんて不可能。
だがさっきの口ぶりから魔銃を牽制にする魂胆が丸見え、ならその奢りを粉々にしてやろう。
「ヒスイ、しゃがめ!」
「うん!」
体を捻り両手で握りしめた剣を構え360度回転するように剣を振り抜く。
前方の3人は一瞬怯んだが何も起きていない現状に再び走り出す。
「ビビって空振りとか、ダッセェな!!」
「忠告してやる、慢心はしないほうがいいぞ」
「あ?」
「おい!上!!!」
周囲に落ちる瓦礫の山。
3人が降りてきてから周囲の建物内にコーグ達がいないかを確認、ここら辺にはいなさそうだったので2階前面部分を切り上から崩落させた。
建物を壊す戦法はやってはいけないと兵士学校で習ったが場合による、今の場合は仕方がない。
「ヒスイ、大丈夫か?」
「平気だけど、すごい派手にやったね」
周囲にあった高層の建物は一階を残し全て瓦解。
魔道具をつけていたから死んではいないと思うけど瓦礫の下敷きなら動けはしない。
人の命を狙う輩だ自分の命が狙われる覚悟はできているはず、何よりやらねばやられるだけ。
「ねぇアレス、この人達はこのままどうなるの?」
「まぁ王国兵団が来て捕縛されるか時間が経って終わるかの二択だろうな」
「どんな理由があれ人の命を狙うには代償がつく、それはこいつらだけじゃなく俺達も同じ」
「同情はない」
「そっか」
「不満か?」
「いや、それより早くコーグ君達を探しましょ」
建物を壊した理由は手っ取り早くこの場を制圧したい他に主犯格を誘き出す事も兼ねていた。
大きな音を立てれば魔力感知外の場所でも位置が示せる、逃げ足を早くさせるならそれでもいい。
計画に歪みを生ませれば活路は開ける。
「なら早く行く……か」
視界が揺れ地面に手をつく。
夜中2時から付与魔法を使ってから2時間くらいか、空はまだ薄明るい。
「少し休んでから行く?」
「大丈夫、早くコーグ達の元へ急ごう」
体が動かないわけじゃない、それにここまで来たらいち早くコーグ達の居場所を突き止めないと。
戦闘用魔道具を持ってる集団の元にコーグ達を置いておくわけにはいかない。
付与魔法が切れないうちに決着をつけないと。
ヒスイを背に乗せ集落を走る。
瓦解させた場所はほんの一部で他にも建物が軒を連ねていた。
近くには流れる河川の音、人影はなくそれ以外の音は聞こえない。
付与魔法の効果で周囲を感知しているがコーグ達の気配は追えていない、離れたか地下に行ったか。
どちらにせよ走って感知範囲を伸ばすしかないか、でもそう遠くへは行ってないはず。
とりあえず屋上に行って辺りを見渡すか。
「ねぇあれ」
「おいおいマジかよ」
屋上から河川の方を指差すヒスイ。
その先には大きな帆を張り川を進む大型船があった。
海の賊がいるとは聞いたことあるけど、まさかアイラード王国に実在するとは。
「少し飛ぶぞ、掴まってろ」
ヒスイが首につかまり屋根を転々と飛ぶ。
こんな辺境の河川に流れる船なんて怪しい事をしているに決まっている。
乗り込んで客船だったら謝ればいいだけ、とりあえず突撃。
「ねぇアレス、まさか乗り移るき?」
「一番端の建物から船に飛ぶ、ダメか?」
「わかった……目閉じるから、ゆっくり飛んでね」
沿岸の建物から船までは相当な距離がある。
ゆっくり飛んだらそのまま河川に落ちる、つまりゆっくり飛ぶのは不可能。
と説明してもどの道船には乗らなければいけない、なら説明しないで飛んだほうが早い。
目先には河川をすすむ船、その甲板を目掛けて飛び移る。
「ふぅ、なんとか追いついたな」
「もう目開けていいぞ」
「ゆっくりって言ったじゃん」
不機嫌なヒスイを甲板に下ろし手を床につける。
微弱な振動を元に中に何があるか誰がいるかを探る。
……
「コーグ達はえらい所に掴まってるな」
「どう言う意味?」
「この下にはコーグ達子供が複数人と魔力が高い俺達冒険者が数人監禁されている」
「多分ここにいる奴らは子供と冒険者を同時に誘拐する犯罪組織なんだろうな」
「それって……かなり危ないんじゃ」
「かなりなんて優しいもんじゃない」
「冒険者を村に呼んで突発的に子供を誘拐し誘き寄せる、多分巷で噂になってる「闇ギルド」が絡んでるかもな」
闇ギルドとは裏事業を取りまとめる組織、近年その勢力は肥大化し大きな国際問題に発展している。
アイラード王国もその問題を掲げているが解決には至っていない。
闇ギルドは素性をわからない実体のない組織、噂では頭目は古代の八英雄に匹敵する程と言う者もいる。
「八英雄って、前の魔王を倒した人達なんだっけ?」
「そうだ、100年前に今の主要8カ国それぞれが選出した8人の英雄」
「そんな力を持つ奴が魔王前線に行かないで裏で金稼ぎとは悲しくなるよな」
「裏で金稼ぎも悪くねぇぜ、剣聖アレス」
目の前の扉が開くと先ほど同様戦闘魔道具を装着した男が1人。
ただ先ほどの大剣とは違う拳につける魔道具。
男の雰囲気からさっきの調子者より実力は上、それに付与魔法を連続して使っている影響か体が重い。
気を抜いたら殺される状況。
「お前達は何者だ、こんなに人を誘拐して何をしようとしてる」
「教えるわけないだろ剣聖」
「いや、大人しく俺らの金元になったら教えてやろうかな」
「もちろんその後に死よりも恐ろしい顛末が待ってるけどな!!」
「そうか、なら牢屋の外からゆっくりと聞いてやるよ」




