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13、浴場と起床

「奇遇ですなアレスさん」


「ラドリさん、どうも」


イースタ村の大浴場で湯に浸かっていると満面の笑みを浮かべるラドリがいた。

別に奇遇と言うほど不思議じゃないだろと思いながら湯を体にかける。

石鹸を見ると色が緑に変色している、まさか廃棄品を使っているかと危惧したがどうやらこの地特有の配合でこの色になると隣の男が言っていた。


「兄ちゃんが冒険者さんか、俺はもっとゴッツイ大男が来ると思ったぜ」


「安心してくださいよ、ゴッツイ大男よりも頼りになりますから」


浴場の村人達は気さくに話しかけてくれる、俺もそう言う雰囲気は嫌いじゃない。

村に来た時は歓迎されていないんじゃないかと思ってたけどそんな事は無かった、この前倒した魔獣ヒースクレストの話をしたら浴場は大盛り上がり。

ここら辺で魔獣の話など聞かないそうでそれはそれは大きなリアクションをしてくれた。

宿に戻ると同じく浴場帰りのヒスイと鉢合わせ。


「アレス、ここの村の人達とんでもないわ」


「とんでもない?」


理由は聞くなと言わんばかりに目線を逸らし中へ入っていくヒスイ。

一階の料理場、窯の中にある魔石に魔力を込めると火種がつき料理開始。

魔力適性が皆無な俺でも使える魔道具は本当に優秀、作った人は大天才だな。


「今日は何作るの?」


「野菜と魚の酒蒸し」


跳ねながら喜ぶヒスイを背に魚や野菜を放り込む。

村に来たのだから村の食事処で食べれば良いと提案したのだが即時却下、理由はこれからを想定し俺が料理を作るという状況を作りたいから。

無理に作る事もないだろと思うけど料理を作ることが嫌いなわけではないので当分は俺が料理をすることに。


「お待たせ」


「おぉ……やっぱりあんた料理上手ね、今度教えてよ」


「また今度な」


魚と野菜を頬張り明日の作戦を練る。

分かっている情報は魔獣アルミラージは早朝の2時に来る、南西にある家畜小屋を目指して突進してくるらしく家畜を食い荒らした後は満足したのかそのまま帰ったらしい。

アルミラージが人を食べたと言う情報がある事を考えると今度も家畜だけで済むとは考えられない、ということで朝見張りこなかった場合はアルミラージの住処に行き殲滅する。


「これ最初から住処に行っちゃダメなの?」


「習性を知る面でもこの村に来る実態を抑えることが必要だ、そこから村の補強案や対策を講じる材料を探る」

「それに魔獣の生態系はシビアなんだ、無闇やたらに乱殺すると二次被害を招く恐れがある」

「依頼として魔獣の迷宮に行く以外に最初から行くのは得策じゃない」


「へぇそうなんだ」


国が発布する迷宮依頼は下調べの上で斡旋されている。

これは新人兵士・冒険者育成の観点から行われるもので未知の迷宮は基本的に立ち入らない。

迷宮を作った魔獣が判明していてもその中に何がいるか分からない以上一定の階級以外の者に関して非常時以外は立ち入ってはならない。


「それより明日早いから寝坊するなよ」


「平気だよアレス、私朝には強いから」


明日の起床は日付変わる0時。

朝と言うには早すぎる、むしろ夜中と言った方が良い時間帯。

まぁヒスイも冒険者、時間の大切さは誰よりも知っているはず。

何より人を心配して自分が遅れては格好がつかない、現在夜20時、もう寝よう。


「早く起きすぎたか」


あれから21時頃に寝て目が覚めると時計は23時になっていた。

眠い目をこすり衣服を着替える、今回から戦闘時の服装を一新させてみた。

前までは鉄鎧を頭と胸、腰、腕につけていたがヒスイの付与魔法の強化を最大限活かして最小限に胸と腕だけに。

何より付与魔法を使っている時頭鎧の締め付けが不愉快極まりない、そのせいで体が動かなくなっている気がしてならない。


「うん、剣士の格好では無いけどこれもまた良い」


胸と腕に光る赤鎧。

首には硬い布を巻き上下黒い厚手の服、全部王都の仕立て屋で特注した物。

揃えるのにまぁまぁな金を使ったけど悔いはない、一新する意味でも今までを捨て去る。

後はヒスイを待つだけ。


……


「遅いなあいつ」


時計は24時を回っているが起きている気配もない。

まさかあいつ、寝ているわけではないだろうな。

もう少し待つか。


……


時刻は1時を回りそうな所。

まぁ仕方ないか、0時に起きろって方が無理がある。

それに魔力を使う魔道士は睡眠が一番大事って言うしな、怒ることでもない。

だが起きてもらわないと困る、ここは男女とか関係なくパーティメンバーとして起こしてやらねばならない。

勝手に部屋に入るなと言う文句は後で受け付けよう、今は依頼のためにヒスイの部屋へと入る。


「もう集合時間だ……ぞ」


絶句。

部屋には所狭しと埋め尽くされた奇妙なうさぎ人形が置かれていた。

さながら幽霊屋敷、その中で腹を出して寝る赤毛の女。

色気も何もないヒスイがそこにいた。


「起きろ、もう時間は過ぎてるぞ」


「んが……?」


眠っている目を指でこじ開け挨拶を交わす。

眼球は俺を見るとゆっくりとヒスイは体を起こす。


「あ……ごめん」


そう言葉を吐きヒスイは流れるように部屋を出ようとする。

流石に意味がわからないので静止させ理由を聞くと。


「だって……世界を探すんでしょ」


「意味がわからん」


どうやらヒスイは朝が弱いようで寝ぼけ眼で着替え出した所で俺は外へ退避する。

時刻は1時、あと30分でなんとかなるとは思えないほどに寝ぼけていた。

しっかりしてくれよヒスイ、お前がいないと魔獣と戦う所の話じゃなくなるんだぞ。


「よっし!!それじゃあ行きましょう!!」


杖を持ち声高らかに宿を出るヒスイ。

あれから30分でどうやってあのテンションに持っていけたのか不思議でしょうがないけど一安心。

結局朝が弱いのか強いのかわからないヒスイと共に夜明けの魔獣退治へ出かける。





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