出生ゲーム
人が生まれるために必要なもの。
※死の表現がありますが、それらを助長する目的は一切ありません
淡々と過ぎていくこの日常に、果たして意味などあるのだろうかと無意味に考える。
無意味に意味を重ねても価値など生まれないことは分かっていた。
これはただの思考だ。遊びに過ぎない。この一過性の生を少しでも楽しく生きるための、ゲームのようなものだ。
タンタン、タタンとつま先をアスファルトに打ち当てる。ローファーの先が少し削れ、白くなった。
タンタンカンカンと音が鳴る。リズミカル。ああ、もう、ブーブーとうるさいなぁ。
タンタン、タタン。カンカンカンカン。赤い光を見つめ、黄色と黒の内側に入ってきた男を見つめた。男は怒鳴りながら近づいてくる。ああ、かわいそう。
この人の日常には意味があったかもしれないのに!
「次は天国になります!」
タン!とつま先を打ち当てると同時、私の体を天国が迎えに来た。ついでとばかりに、叫ぶ男の体さえも。
きぃきぃ、きゃあきゃあ。色んな叫び声がする。
無意味に意味を重ねても価値は生まれない。意味が必要なのか?と問われれば、そんなことも無いのかもしれない。
けれど意味が無いのなら、そこに居る価値もないのではないか?
そう論じる意味さえもないのかもしれない。思考しているようで、私は思考停止しているのだ。
無意味だ。無意味だ。無価値であり、意味がわからないのだ。
こんな思考に、未来なんてない。
そもそも考えるだけ無駄だ。もっともらしいことを考えようとしているだけで、これはただの私の我儘なのだから。
でもきっと、この瞬間私は生まれたのだ。
無意味に死んだ目の前の男が、きっと私を恨むだろうから。