第2章 第5話 人気
「ことこまかー! ことことことこです! なんと今日はタイトル通り! フォロワー500万人越えの超大物アクセラー、『俺の妹』通称おもうとさんとのコラボです! なんとなんとおもうとさんの家に招いてもらいちゃいましたー!」
玄関でなんか騒いでいる由比ヶ浜さんと、それを無言無感情で撮影する俺。なんだろう……これが普通のアクセラーの動画撮影なのだろうが、クソつまらん。
「じゃあさっそく登場してもらいましょう! 青葉ちゃんでーす!」
「ど、どうも~……」
「かわいい! かわいいよ青葉! もっと笑って! うわ由比ヶ浜さんよりずっとかわいいっ!」
なにこれめっちゃ楽しい。そうか……普段とは違う緊張気味の青葉をずっと残せるんだよな……コラボ最高かもしれない……!
「はいカット」
三下と並んだことによりかわいさが際立った青葉に興奮していると、由比ヶ浜さんが冷めた声で手をパン、と叩いた。
「ちょっと先輩真面目にやってくれません? 本名NGですし、シスコンぶりはいつも通りなんでいいんですけど人を下げる発言は炎上するのでアウトです」
「はい……すいません……」
真顔で人とロクに話したことのない欠点を指摘されてしまった。これは完全に俺が悪いから仕方ない。
「それとこれ逆光になってますよね? ちゃんと角度考えてください。あとライトほしいんですけどなんかありますか?」
「いやそういうのは……」
「はぁ……。なんでこんな低意識な人が人気なんだか……。でもこういう素の感じが逆にウケてるんですよね……わたしもそこが好きですし……うぅーん……難しい……」
なんだか俺は由比ヶ浜さんを誤解していたのかもしれない。突然話しかけてきて、コラボを強要してきた女。青葉の人気にあやかろうとしている持本タイプの奴かと思ったが、想像していたよりずっと、真剣。やはり人気とかには興味ないが、本気の人間に対してこの対応は失礼だ。
「ことこ、でいいんだっけ? あと照明も一応あるから……ちょっと待っててくれ」
「……どうしたんですか? 急にやる気になって」
「悪いことをしたら謝るのは当たり前だろ。今までのは全部俺が悪かった。俺もがんばるからいい動画にしよう」
「……ありがとうございます」
個人的には嫌だ。すごい嫌だが、それは俺の事情だ。俺の目的にも協力してくれていることこのためにも、目玉は必要だろう。
「青葉、地下室出していいよな?」
「おにぃ……ほんとにいいの……?」
「地下室!? なんですかそれ!?」
あの部屋はまだ公開していないし、これから先も公開する気はなかった。でも照明はあそこにしかないし、何より気にするほどでもない。今は俺の部屋なのだから。
「強いて言うなら……もっと人気になるための部屋だな」
そう答え、俺はことこを地下室へと案内した。
短いので本日二話更新。