第3章 第2話 嫌い
「なに? 嫉妬かしら。このフォロワー数1000万人超えの超人気アクセラー、黄花様に!」
本当に嫌いなんだよな……こいつ。なんでこんなのが俺のいとこなんだか。意味のわからない嘘をいつまでも吐き続ける最悪女。だから会いたくなかったんだ……。
「じゃあアクセル見せてみろよ。絶対100人もいないだろ」
「あー残念、家にスマホ忘れちゃったのよね。見せられなくてほんと残念ー」
「おにぃ、これ黄花ちゃんのアカウント。連絡先から見れた」
「ああああああああ!」
発狂する黄花を無視し、青葉のスマホを確認する。えーなになに……。
「ベンチャー企業社長年商1億年収1000万。好きな言葉は石の上にも三年。平和と民主主義を愛しています。政府は嘘をついている。固定欄に真実と簡単に月収100万円超える方法書いてます。フォロバ100%。ブロックする人は晒します……」
なるほどなるほど……やっぱり帰ってくれないかなぁ……。
「フォロワー数何人でした?」
「あープロフィール欄が強烈で忘れてた。えーと、34人」
「びみょー……っていうか投稿数1億超え!? なんでそんだけやって34人しかいないんですか!?」
「ていうかお前俺と同い年だろ。なんでそんな投稿できるんだよ」
ことこお墨付きで底辺の烙印を押された黄花。おそらく次の言葉は……。
「これサブ」
「サブアカだとしてサブで1億以上投稿してるのマジで気持ち悪いからな」
撃沈。今度こそ逃げ場を失い床に這いつくばった。
「せっかく来てやったのに……なんでそんなひどいことばっかり……」
「……それは確かにありがたいけど……ごめん。悪いけど帰ってくれ」
「なに? こんな無駄な部屋あったんだ」
あぁ嫌だ。どいつもこいつも、母さんの部屋で好き勝手なこと言いやがる。
「ひさしぶり、赤司青葉。元気にしてた?」
「黄花はまだいいけどお前らはこの部屋に入ってくんな。ここはお前らが大嫌いな母さんの部屋なんだよ」
地下室に入ってきたのは、黄花の母親と祖母。つまり俺の母方のおばさんとばあちゃんだ。こいつらが一応、俺たちの育ての親ということになっている。
「そんなこと言わないでよ。あ、このギターずいぶん高そうじゃない」
「触んなって言ってんだろうが!」
勝手に母さんのベースに触れようとしたおばさんに怒鳴る。叫ぶのを、抑えられない。
「なにその態度。私たちの家に住まわせてくださいって頼みこむ立場でしょ?」
「赤司、うちに来るからには生活費を払ってもらうからな。ずいぶん儲かってるんだろう? ひと月100万で手を売ってあげよう」
本当に好き勝手に……だからこいつらは嫌いなんだよ。こいつらの家に行っていたせいで俺は、俺と青葉は。両親の死に目に会えなかったんだ。おばさんが黄花の誕生日パーティーに誰も来てくれないなんて理由で俺たちを呼んでたから……こんな奴らさえいなければ……!
「いいか、俺がお前らを呼んだのは家に住まわせてもらいたいからじゃない」
「強がり言わないでよ。ネットに家バレして困ってるんでしょ?」
「あぁそうだな困ってる。でもお前らに助けを請うくらいなら引っ越しした方がマシだ」
「だから強がんなって。未成年のあんたらじゃ引っ越しもできないでしょ?」
「だからしない。お前らを呼んだ理由は一つ。うちの鍵を返せ。俺と青葉の他にうちの鍵を持ってるのはあんたらだけだからな。鍵の行方さえわかってれば安心できる」
「そういうわけにもいかないでしょ。私はほら、あんたらの親なんだから」
俺たちの……親……? こいつが……!?
「……母さんが音楽の道に進むって聞いて追い出したのはどいつだよ」
「それは……」
「そのくせ成功したらすり寄ってきて……なぁババァ。情けないと思わないのかよ。絶縁した娘に金の無心するのはよぉ」
「ババァ……」
「あんたもだよおばさん! お前は父さんとの結婚に反対してたんだろ? 漫画家なんて気持ち悪いって。それで母さんたちが死んだ後は貯金を奪ってタワマン暮らし! なぁ……どうして母さんと父さんが俺たちのために遺してくれたものをお前らが食い潰してるんだよ。なんで青葉は貧乏な暮らしをしなくちゃいけなかったんだよ。そんな奴らが親だ? ふざけんな……ふざけんな!」
「ちょっと先輩……」
思わず前に出た身体をことこが抑えてくれた。危なかった。本当に手が出てもおかしくなかった。それほどまでに、こいつらのことが嫌いでしょうがなかった。そしてそれは、青葉も同じだった。
「……知ってますよ、おばさん。あなたがあの日……黄花ちゃんの誕生日パーティーの日。少しの間、いなかったことを」
そう前置きをした青葉は、告げる。
「あなたがママとパパを殺したんじゃないんですか?」
投稿開いてしまって申し訳ありません! 別作品書いてました。今後は同時投稿していきたいので、よければそっちもお願いします!
親にヤクザへ売られた俺は、組を乗っ取って舞い戻る。
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