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第2章 第7話 身バレ

「いやー、この前の動画再生数いい感じですよ!」

「そうか。そりゃよかった」


「今まで謎に包まれていたおもうとさんのおうち紹介! 地下室についてもコメントたくさん来てました!」

「俺も軽く見たよ。ベース聴きたいとか値段とかな。両親何者!? みたいなのも多かったし俺が散財してると思われなくてよかった」


「それと先輩の料理も好評でした! おもてなし料理を300円で! 映え映えなのに安いってみんな喜んでくれました! わたしの視聴者層同年代が多いんですけど、年上層も見てくれてわたしも大満足です!」

「君のリクエスト通り見た目重視でいったからな。喜んでもらえて何よりだよ」


「それに先輩の方のアカウントで載せた対談動画もいい感じでしたよね。お互い違う年代のファン層に見てもらえて満足のいく結果になりましたね! 次もぜひお願いします!」

「ところでなんで俺身バレした?」



 俺とことこのコラボ動画を公開した三日後。どういうわけか俺がおもうとだということがクラスの連中にバレていた。そのことをことこに問い詰めると、彼女は気まずそうに目を逸らす。



「そ……それは……わたしにもわかりません……」

「でもタイミング良すぎだよな」


「本当に知らないんです! 第一わたしがそんなことするメリットなくないですか!?」

「あるだろ。身バレで俺がアカウントを動かすのをやめれば、視聴者はちょうど直近で新たに知ったアクセラーに移る」


「でもわたしはおもうとさんの古参ファンですよ!?」

「君がアクセルに本気なのは伝わった。たとえ推しを蹴落としてでも上に行く。そういう覚悟が見て取れた」


「だから違うんですって!」

「どうだかな」



 俺がおもうとだと知ったクラスの連中の態度はひどいものだった。誰も話しかけてこない。ただ遠巻きに目線とひそひそとした口撃を浴びせてくるだけ。「なんであいつなんかが」。「妹の人気にあやかってるだけ」。「調子乗りすぎ」。予想通りというかなんというか、俺を褒めるようなものはなく。嫉妬と落胆。そういった感情が大きいようだ。



「しかもまだバレてるのはクラス内だけ。ネットでも特に話題にはなってない。それができるのは俺のクラスを知ってる君くらいだろ」

「だ……だから本当にわたしは何も知らなくて……」


「だろうな。それならそれでいいや」

「……へ?」



 さんざ問い詰めていたのに、突然引いたことでことこが困惑の声を出す。



「それならいいって……どういうことですか?」

「初めから君が犯人だとは思ってなかった。ただ状況的に可能ではあるから、ちょっと確認してみたかっただけだよ」


「ぁ……あぁそうでしたか……ですよね。やっぱりもっちー先輩が怪しいですよね! あの人も同じことできますし……」

「まぁあいつもできるだろうな。俺が想像している奴とは別だが」


「ほ……他にも先輩の正体を知ってる人がいるんですか……!?」

「まぁな。とりあえずやめさせないと……まだクラスだけならいいけど、ネットに流出したらさすがに引っ越しを検討しないといけなくなる。身バレは怖いからな……」



 個人情報を、誰とも知らない奴に握られる。それほど恐ろしいこともない。絶対に止めなくてはならない。青葉の安全のために、絶対に。



「まぁ後はこっちで何とかするよ。問い詰めて悪かったな」



 そう言ってことこと別れ。俺は嫉妬渦巻く教室に戻った。

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