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ラプラス・ノマと呼ばないで

 藍里は話を続ける――

「それでは――早速ですが、本題に入らせていただきますね。まず、さとりくんが、“レプリカ”になった経緯をお話ししますね。まだ、ループしていない世界で、さとりくんはアンリ&マユの『愚者』でした。カルト教団である黄泉比良坂と敵対していくうちに、教団の教祖の存在を知り、興味本位からその教団に出入りするようになっていったのです。おそらく、それが因果、だったのかもしれません。そうして、境界カオスに繋がる扉を開くことができる教祖と、扉を開くためのエネルギーとなるさとりくん、そして、扉を物理的にこじ開けるための能力を持つ卯月さん。この3人によって、元日から6日目の1月6日の黄昏時、電気街上空に境界扉カオスゲートが出現します」

 僕が、『愚者』だった? それに、僕が、カルト教団と繋がっていたなんて……。

「藍里様は、ループする前の世界で、とても苦労なされまして……ええ」

 ラプラスの魔が、藍里をいたわっている。

「そして、境界扉カオスゲートがこじ開けられた際、さとりくんの自我エゴと、卯月さんの本能イドのバランスが崩れ、さとりくんが暴走し始めたのです。暴走を止めようとする能力者たち、その能力者たちに抗うさとりくん。戦闘の最中、さとりくんの破滅的な能力に巻き込まれてしまった卯月さんが、不幸にも、その命を落とし、その現実に耐えきれなくなってしまったさとりくんは、心が……壊れてしまったのです。能力者たちの殺戮を繰り返す、ただの機械となり果ててしまったさとりくん――その姿はまるで、物語の終焉を告げる、Deusデウス exエクス machinaマキナ……。その中で、辛うじて生き残ったのは、私とミコちゃん、それから、ダンテさん、ヴァイスさん、白夜さん、イオさん、そして、ミコちゃんのお父さんでもある『天野』さん、彼はアンリ&マユの最後のアルカナ、『世界ザ・ワールド』となっている方です」

 藍里の話は、僕には受け入れがたい、とんでもない内容となっていた。僕が、みんなを……? そんな、嘘だ……。いや、藍里がそう言うのだから、それが真実なのだろう。

「本当に、あの時のさとり様ときたら……神々しい光とは裏腹に、残酷な殺戮者となり果て――いえ、それはともかく、さとり様、落ち着いてくださいまし。過去の出来事は、過去の出来事。それはそれ、これはこれ、なのでございます。その出来事は、藍里様の能力によって、“なかったこと”になっておりますから、ご安心を」

 ラプラスの魔は言う。なかったことに……って、それでも、そんな簡単に受け入れられるわけがない!


「――続けますね。天野さんの能力、それが因果を捻じ曲げるという、常識はずれな能力だったので、辛うじて残った能力者たちが天野さんの力を借りて、さとりくんを境界<カオス>に押し込めることに成功したのです。でも、さとりくんが、境界<カオス>で大人しくしているはずもありません。一か八か、私は、ラプラスの魔さんの力を借りて、キューブのコアから特殊な能力を授かることで、Reverse(リバース)の能力を発動することができました。Reverse(リバース)は、この宇宙をいったんリセットし、特異点となっている元日の時点で宇宙が再構築されたのです。ラプラスの魔さんが言うには、『特異点というのは、次元データ保管庫のようなもので、このデータをもとに、境界カオスを通して、アカシックレコードへとデータが送られていくのです』ということです。私にはよく分かりません」

 藍里の言うことが確かならば、最初のループを生み出したのは藍里ということか?

「いやはや、藍里様は。とにもかくにも、藍里様にキューブのコアから能力を……ええと、いわゆる“インストール”するのはたやすいことでした」

 藍里も、何の因果か、こんな未知なるものに憑依されて、大変な宿命を背負わされてしまったのだな。僕も被害者かもしれないが、藍里も十分、被害者なのだろう。

「そうして、さとりくんは、境界カオスに“オリジナル”、現実世界に“レプリカ”が存在することになったのです。“魂“と呼ばれているものを二分する形で……。そのせいで――ええと、ラプラスの魔さん? お願いします!」

 藍里は、難しい話をラプラスの魔に説明してもらうつもりだ。


「承知いたしました。それでは、簡単にご説明いたしましょう。藍里様がReverse(リバース)を使用した時間軸に特異点が作られ、その特異点によって、アカシックレコードから、“魂“が分断された”オリジナル“のさとり様の存在、それこそが予期せぬエラーとして認識されているのでございます。そのため、エラーを感知した宇宙は、藍里様がReverse(リバース)を使うことなく、この宇宙がタイムループするようになったのでございます。その根本的な解決、それは、“オリジナル“と”レプリカ“のさとり様の再構築。藍里様の奥義でもある、『Rebirth(リバース)』のみなのです」

 ラプラスの魔が意味不明なことを僕に説明してくれた。藍里の奥義? Reverse(リバース)じゃなくて、Rebirth(リバース)だって!? どういうこと!?

「ええと、つまりですね、さとりくん――私がキューブの力を借りて、二人のさとりくんを、もう一人の新しいさとりくんに再構築する――その能力が、Rebirth(リバース)なのです! おそらく、“魂”の比率が“レプリカ”のさとりくんの方が大きいので、“オリジナル”のさとりくんは消滅してしまう可能性が高いです。そのため、“オリジナル”のさとりくんは私たちにループの阻止をされたくないのだと思います。それに、たとえ、Rebirth(リバース)が成功したとして、新しいさとりくんが、この宇宙に受け入れられるかどうかも、残念ながら不明なのです……」

 すべてが上手くいったとしても、最後は“神頼み”みたいになってしまうのだな……。


 それにしても、僕が、“オリジナル”のさとりを吸収してしまう、だなんて、“レプリカ”に吸収されると知れば“オリジナル”の立場がないのは頷ける。

 でも、境界扉カオスゲートが開いたと同時に、“オリジナル”の僕を境界カオスからおびき寄せて、再構築する、ということ? でも、一度はみんなの手に負えなくなって、もう一人の僕を境界カオスに押し出したのでは?

 僕は、もう一人の僕が大人しく再構築されるとは思えなかった。

「そこはかとなく、さとり様が疑問をお持ちのような気配がしておりますので、ワタクシから少しだけ捕捉を――今のさとり様は、境界カオスにいらっしゃるさとり様と、ほぼ互角……今回の一件で、さとり様の自我エゴは、境界カオスに存在するさとり様と遜色のないものへと変貌しております。今や、さとり様の自我エゴは、ダンテ様との戦闘で驚異の進化を遂げ、超自我スーパーエゴと相成りました。となれば、さとり様の能力もさることながら、多くの能力者が味方であるこちら側が絶対的に有利、なのでございます。ですが――実は、それよりも、もっと大きな問題がございます、さとり様。一番の懸念は、現実世界の愛唯様なのです。彼女は、さとり様の“オリジナル”を大変お慕いしていらっしゃる。現実世界にいるさとりさまが、“レプリカ”だということを知れば、愛唯様の本能イドが暴走して……そう、さとり様、お分かりですよね?」

 ラプラスの魔は、なんだか意味深なことを言っている。


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