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ラストバトル

 ダンジョンの内部は大そう複雑な構造なのだろうとばかり思っていた……そんな僕の予想を裏切り、だだっ広いドームのような構造になっている。

 そして、御多分に漏れず、こういうエリアの中央には、定石の如くドラゴンが待ち構えているのだ。


 洞窟の中央には、その天井に大穴が開いており、空からの光が差し込んでいる。

 土気色のドラゴンは、陽光が射すダンジョンの中央で、その体を丸めて眠っているようだ。


 少しずつ近づく僕らは、ある違和感に気が付いた。

 どれほど歩いてもドラゴンのもとへとたどり着けないのだ。

「思ったよりも、巨大なドラゴンですね――」

 藍里がそう言って指さす先に見えるドラゴンは、とてつもなく巨大であり、このダンジョンも思ったより広いのだ。

 そう、想像以上に広いダンジョンだったために、遠近法でドラゴンが実際より小さく見えていたのだ。

 実際、ドラゴンからみて、僕らは手のひらサイズほどの大きさしかないのだろう――そう考えると、恐怖で身震いしてくる。

「あの、ミィコさん、こんなに巨大だなんて聞いてないよ」

 僕は弱気になってミィコに泣きついた。

「ミコも聞いていません!」

「いったん出直して、もう一度作戦を立て直そう!」

 僕がそう言って二人に撤退の提案をしていると――


 カッ、と目を見開いたドラゴンは、その大きな翼を広げ、ものすごい勢いでこちらへと飛翔して向かってきた。

 そして、ドラゴンは僕らの退路をその身で塞いだのだ。

「ミィコ、どうすれば!?」

 僕は焦ってミィコに聞いた。

「ミィコにもわかりません。サトリ、魔剣を使うのです!」

 ミィコは顔面蒼白だ。いわゆる、絶体絶命大ピンチといったところだろう。

「さとりくん! これを飲んで!」

 マジか!? 藍里が何かよく分からないポーションを僕に投げ渡した。怪しさ満点だが、背に腹は代えられまい――

 一か八か、僕はそのポーションを受け取り、小瓶の蓋を取り、口から一気に流し込んだ。


 ――意識が朦朧とし、グワン、グワンとする感覚が僕を襲う。

 藍里は僕に何を飲ませたんだ……!?

 「さ……と……り……く……ん」

「サ……ト……リ……大……丈……夫……で……す……か……?」

 うわ、なんだ、これは気持ち悪い。時間の流れが遅く感じられる。

 というか、明らかに遅い。これはあれだ! 僕だけ速く動ける効果があるのだろう。

 藍里、すごいぞ! みんなが止まって見える! ありがとう、藍里!

 ――これなら勝てる! 僕は確信した。


 ――僕は魔剣『グラジール』を両手で握りしめ、ドラゴン目掛けて飛びかかった。

 あれほど重たく感じていた魔剣。普段なら鈍重にしか振り回せない大剣も、今ならまるでナイフを振るうかの如く、振り回すことができる!


 僕はHitヒット andヒット Awayアウェイを繰り返し、その動きでドラゴンを翻弄する。

 一撃、また一撃、ドラゴンに大きな傷跡を残していく!

 さすがのドラゴンも僕の動きを追うことができず、一方的に斬りつけられるのを、ただ耐えているしかないようだ!

 巨大なドラゴンが怯んでいる! これはチャンスだ! 僕はトドメの一撃をドラゴンの頭にお見舞いした――はずだった――


 僕はその光景に目を疑った――僕が頭を狙うタイミングで、ドラゴンは重たい剣の一撃をその大きな顎で受け止めたのだ。

 大きな牙が、魔剣の強固で頑丈な刀身に食い込む。

 そのまま、大きな音を立てて、その刀身が砕かれた。

 まさかの展開――魔剣『グラジール』はドラゴンの硬い牙によって粉々に噛み砕かれてしまったのだ。

 迂闊だった。ドラゴンはその時をじっと待っていたのだ――僕がドラゴンの頭を狙うタイミングを。


 そうして、僕にかかっていた薬の効力も薄れていく――

「さとり……くん……逃げ……てくだ……さい!」

「サト……リ!」

 僕は戦意喪失のまま、二人の声に従って後ろを振り向いた――が、その瞬間、ドラゴンからの攻撃! その大きな尻尾で薙ぎ払われて、僕は地面に激しく叩きつけられた! その衝撃で僕の全身を激痛が走る。

 そして、ドラゴンは鋼鉄をも簡単に溶かす炎の吐息、『ドラゴンブレス』の溜めモーションに入る。

 回避不能――強力な攻撃を食らってしまった僕は、逃げるどころか動くことすらできなくなっていた。

 ――ダメだ、このままでは消し炭にされてしまう。


 僕が戦意喪失している後ろで、藍里が強力なルーン石をフルセットした杖を構え――それをドラゴン目掛けて思いっきり投げつけた!

 杖は、ドラゴンの顔面に見事クリーンヒットして大爆発を起こしていた。

 藍里の一撃により、『ドラゴンブレス』がキャンセルされたのだ! すごい! 藍里にとって、ルーンの埋め込まれた杖は完全に飛び道具のような扱いになっている。

「私が相手です!」

 藍里はそう言って、勇敢にも僕の前でドラゴンに向かって仁王立ちをした。


 ――挑発に乗って、藍里に向かっていくドラゴン!

 藍里は回避行動を取りながら、ドラゴンを僕から引き離していく。

 ドラゴンの隙を見つけると、藍里はすかさず、手当たり次第に持ち物をドラゴンに向かって『投げて』いる。

 危なそうな薬品から鋭い刃物のようなものに、工具のような鈍器まで、『どこで入手したの?』と聞きたくなるような物をドラゴンにぶつけていく。

 手当たり次第に投げる攻撃、そんなのは大して効果がないだろうと思っていた僕の予想とは裏腹に、ドラゴンはかなりのダメージを受け、よろめき、悲痛な叫び声をあげ始めている。


 ――藍里の比類なき『投げる』攻撃により、無残な姿となったドラゴンはその場に崩れ落ちていった。

「アイリ! さすがです! すごすぎです!」

「藍里、お手柄だよ……君が、MVP(エム・ブイ・ピー)だ――」

 僕とミィコは藍里を全力で称賛した!


 そうして、僕は、肩を貸してくれた藍里に寄り添い、ボロボロになったその体を引きずりながら、ミィコのいる方へと向かって歩いていた。

 ふと、藍里が振り返り――

「さとりくん、まだ終わっていません!」

 振り向きざまにそう叫んだ!

 その言葉にハッとして、僕は慌ててドラゴンのいる方向に振り向いた。


 すると――ドラゴンが黒紫のオーラに包まれ始めた。そうか、これはお約束の第二形態だ!


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