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噛ませ犬スキルで異世界転移 〜俺が本当の相棒に出会うまで〜  作者: 二階堂次郎
第1章 はじまりの街 オランゲル
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第9話 回想

 夢の中で、俺は走っていた。東京の、どこにでもいる、普通の高校生二年生だった頃の俺。

 雨が降っていた。傘はさしていなかった。土砂降りの中を、俺は全速力で走っていた。

 理由も覚えている。いや、思い出したという方が正しいかもしれない。異世界に来たことの高揚感で、目を背けていただけなのだ。

 俺はあの日、ずっと好きだった女の子に告白した。


 同じ高校に通うクラスメイトの女子。

 学校帰りや休日など、暇な時にはずっと一緒に過ごす友達だった。

 もう一人、幼なじみの奴と三人でよく遊びに出かけていた。

 告白しようと思ったのは、その幼なじみから強く背中を押されたから、というのも大きな理由だった。


「お前になら安心してあいつを任せられる」


 心から信頼している親友にそう励まされて、奮い立たない男はいない。

 それに、俺は親友もずっと彼女のことが好きだと思っていたのだ。だからこそ、三人の仲を壊さないよう気を遣って、自分の気持ちに蓋をしてきた。

 だけど、あいつが応援してくれるなら──

 俺はその日のうちに学校の教室に彼女を呼び出し、思いのたけをぶつけることにしたのだ。


 だがその返事は俺の予想を裏切るものだった。


「ごめん、ハジメのことは友達としか思えない」


 俺は酷くショックを受けた。

 もちろん、告白を断られたというのも大きかったが、親友がせっかく応援してくれたのに、その期待に応えられなかったのが辛かった。


 だが次の日の学校で俺はもっと大きなショックを受けることになる。

 親友と俺が好きだった女の子が、付き合うことになったと、クラス中で噂になっていた。


 たまらず俺はクラスを飛び出し、学校の外に出た。

 そしてただ、無我夢中で走り続けた。

 それは酷く不細工な走り方だったと思う。まるで溺れないように水中を必死にもがくような、そんな走り方だった。

 直感で理解した。俺は当て馬に利用されたのだ。

 いや、「当て馬」だなんて誇張した表現をするのはよそう。仮に馬で有ればこんな不細工な走り方をするはずがない。

 認めるべきだ。俺は噛ませ犬だった。

 彼女が俺を好きでないと知りながら、親友は俺をけしかけたのだ。

 そして二人の関係を壊すと、当初の予定通りなんの遠慮もなく彼女を手に入れた。

 

 この異世界で人類にスキルを与えた女神、アフタエル。

 おそらく俺のユニークスキル、アンダードッグパラドクスも彼女が俺に与えたのだろう。

 だが、だとしたら恨むぞ、女神様。

 結局俺は異世界に来ても、誰かのお膳立(ぜんだ)てしかできないってことじゃないか。

 そんな人生なんて、残酷過ぎる。

 でもそんな異世界での第二の人生も間もなく終わりを迎えようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ……泣きますね、この展開は。 だが悲しみの後には幸せが待っている!  異世界で幸せを掴むのだ!
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