第33話 本当にドラゴン退治するの?
カクヨム掲載分の話です。
俺がセブンワンダー達に考える時間を与えてからちょうど一週間が経過した。
俺は再び、イリノス王国の王都ゴートワイナリにある冒険者ギルド・ゴートワイナリ支部にやって来た。
ギルドマスターのライナウェイが俺を出迎えた。
「ヒロシ様、彼等はここに来ますでしょうか?」
「必ず来る。来ないときは死があるのみ。」
「えっ?彼らを殺すのですか?」
「いや、それを決めるのは奴等だ。」
訓練所では、他の冒険者達が剣や魔法の練習をしている。
特に目を引くような冒険者はいないが…
かといって、レベルが低い奴も少ない。
ゴートワイナリが王都になり、元々、地方にいた実力者が支部の切り替え登録をするために続々とこの支部に入ってきていると言う。
今はまだまだだが、いずれは本当の勇者や英雄が生まれるかも知れないなと少し期待した。
「おい、今から、ここを使用するからみんな出ていってくれ!」
とライナウェイが声を掛けて、冒険者達を訓練所の外に出し、訓練所を空にする。
これで準備は整った。
ギィィー
立て付けの悪い訓練所の扉が開く音がして、勇者セブンワンダー達が入ってきた。
全員の表情がやたらと暗い。
セブンワンダーが虚ろな目で俺を見た。
だが、その瞬間に、体に電気が走った様に目を見開き、その場に崩れ落ちる。
かなり、『死の呪い』の魔法の恐怖が精神的なプレッシャーになっているようだ。
「セブン!大丈夫か!」
他のパーティー員達が、セブンワンダーの側に駆け寄る。
そして、全員がこちらを見るが、その目には俺に対する恐怖という感情が張り付いていた。
彼等のその様子からは既に、セブンワンダーから事情を聞いているようであり、ライナウェイも彼等の表情を見て、この一週間に何かがあった事を察する。
俺も流石に一週間も張り付いて、スキルでコイツらを見ているほど暇でもないので、どんな状態になっているのかを見るのは久しぶりだった。
「この間はお前達の意見を聞いてやったが、本日は、お前達の覚悟を聞きたいものだな。なんせ、『そんな言い掛りみたいな理由で追放されたんじゃたまったもんじゃねえ、それならそれで、俺達もそれなりの対応をさせてもらうぜ。』だったかな。俺達にあれだけの大口を叩いたんだ、どんな対応か見せて貰おうじゃないか。」
と俺がセブンワンダーに尋ねる。
セブンワンダーは俺にそう言われると、体をビクつかせながら怯えるような目で俺の方を見ていたが、突然というか予想通り、俺に向けて土下座する。
「す、す、すみませんでしたあーー!!」
その一言を言うのがやっとという感じで、体はガクガクと震え、その顔には大量の汗が流れている。
『死の呪い』への緊張と恐怖で体が動かないようだ。
他の者達もセブンワンダーと同じ様に、土下座するが、中には何か嫌々土下座している感がある者もいる。
セブンワンダーの話を聞いただけでは納得出来ていないのだろうか?
「謝るだけでは済まないぞ、で、どうするんだ?《《それなりの対応》》とやらを教えてくれ。」
俺もかなりの意地悪だが、偽物を高額で売り付け、ギルドの財源を食い散らかした奴にはそれなりの報いは受けて貰わなければならないからな。
「そ、それは…」
さすがのセブンワンダーも答えに詰まる。
「流石に、命が掛かっていれば、強気には出れないよな。よし、ではこうしよう。お前達は俺の下で、俺が良いと言うまで働いてもらう。」
「えっ?!」
セブンワンダーの顔が歪む。
自分の兄を精神崩壊にまで追い込んだ人物の下で働かなくてはならないという屈辱的な措置に驚くとともに、自分がいつまで、この目の前にいる人間を殺そうと思わないでいられるのかという不安が襲うといったところか。
ま、当然、我慢出来ない奴も中にはいる。
俺の下で良いと言うまで働くと言うことは、ある意味、奴隷みたいなものだからな。
プライドの高い魔族にとって人間に仕えるなどとは全くの想定外、耐えられない仕打ちだろう。
「てめえ、ふざけやがって!ぶっ殺し…」
浅慮が特徴のクロトリが立ちあがり、俺に飛びかかろうと、途中まで立ちあがりかけたが、そのまま倒れ込んでしまった。
まあ、コイツは予告通りだったな…
「クロトリ!!おい、どうした!?おい!……し、死んでる…」
ゼルデンがクロトリを抱き起こし、揺すってみたが既にクロトリは、心臓が停止していた。
『死の呪い』の脅威を目の前で見た他の者は、言葉を失う。
セブンワンダーから聞かされたことが本当であることを改めて認識したのだ。
全員の体がブルブルと震えだした。
「うわああ!」
エブエブがその場の空気に耐えきれず、立ち上がる。
「誰が立ち上がれと言った!」
俺がそう言うと全員が地面に額を付ける様にしてその場にひれ伏す。
ライナウェイも、まさかの展開に驚きを隠せない。
「ひ、ヒロシ様、これは一体…?」
「俺の能力だ。」
「の、能力…」
ライナウェイの顔もギョっとした表情となる。
手も触れず、自分に手を掛けようとする者を瞬殺するという恐ろしい魔法は彼等に相当のインパクトを与えたようだった。
あーだが、やっぱりウェルネストとの約束は守れなかったな。
ちょっぴり反省。
「許して下さい、お願いします。」
セブンワンダーは涙を流しながら更に頭を下げる。
既に、集落で俺の恐ろしさを知ったからこそ、完全に心が折れていた。
「正しいことをしている奴には、俺もそれほど厳しくはない。取り敢えず、お前達が本当にドラゴンを退治したと言うのなら、もう一度、それを俺の目の前で見せてくれよ。」
と俺が言うと、セブンワンダー達は目を白黒させる。
もちろん、彼等がドラゴン退治をしたなんて思ってなどいない。
当然だが罰ゲームだ。
「えっ、いや、ドラゴンって、俺達に倒せな…」
「倒せるよな。」
俺がそう言ってニヤリと笑うと、完全にセブンワンダー達は意気消沈してしまった。
ドラゴンはこの世界において、地上最強の生物と言われる魔物であり、人間はもちろんのこと、人間よりも遥かに強い存在である魔族であっても倒すことはまず叶わないとさえ言われる恐ろしく強い生物と伝承されている。
例の魔熊の数百倍は強いとされている個体もいるそうだ。
これも伝承、そう噂だけだが…
で、そんなドラゴンをセブンワンダー達が倒したと豪語するのなら、
『倒してみろや!』
という話なのである。
セブンワンダー達はフラフラとしながら訓練所を出ていった。
「彼等、大丈夫でしょうか?」
「まあ、やれるだけやってもらいましょ。」
と言って俺達は彼等を見送ったが…
おおい!お前ら!クロトリの遺体、放りっぱなしだぞ!
仕方がないので、クロトリは急死ということでギルマスのライナウェイに遺体の措置は任せることにした。
その日の夜の、セブンワンダー達の宿屋で…
「おい、セブン!あのヒロシとか言う化け物賢者、何とかならないのか?」
とゼルデンが自分達の部屋に集まるなり口を開く。
『ロリコン賢者』よりは『化け物賢者』のほうがまだマシか…
まあ、訓練所では俺が恐ろし過ぎて、喋ることが出来ないほどビビりまくっていたからしょうがないのだが。
「な、何とかって、殺すとかか?」
セブンワンダーが、恐る恐る口に出す。
「ば、バカ!そんなことを口にしたらお前も死んでしまうぞ!そうじゃないって!ドラゴン退治を止めさせてもらう方法だよ!」
ゼルデンはそう言いながら慌ててセブンワンダーの口を押さえる。
まあ、殺意がない会話程度なら『死の呪い』の魔法は発動はしないがな。
口を塞がれながらセブンワンダーも頭を縦に振り、了解の意思を見せる。
「何度も謝って許して貰うとか?」
エブエブが在り来たりな方法を出してくる。
「そんなのだったら、俺達の集落もそれで救われているよ。」
「あ、確かに…」
エブエブは納得する。
「じゃあ、こちらから呪いを解くための条件を出すとか?例えば、どうにかしてドラゴンを倒せれば、俺達や集落の者達に掛かっている即死の魔法は発動しないと約束してもらうとか。」
「いや、色々な意味で無理だろ。あれは、別にこちらが殺意を抱かなければ発動しない代物という話だから、発動対象は俺達だけに限ったものでもない。それに集落の者達に掛けられた魔法は少し別物だろう、あれは集落の者がアレリカイアに住む全ての人間に対して殺意を向けても発動の対象となっているらしいから、俺達がそんな条件を出すこと自体に意味はない。だから、条件を出すとかも無理だ。それにドラゴンを倒してから即死の魔法を止めさせてもらうとか言うが、そもそもドラゴンなんて俺達の力じゃあ、どうすることも出来ないだろ?」
セブンワンダーは集落でかなりこの呪いのシステムを理解していたようだし、自分達の実力もよくわかっている。
「そのとおりだ、ドラゴンなんて戦っても絶対に勝てる訳ねーぞ!じゃあ、どうすればいいんだよ!アイツ、俺達に死ねって言っているようなもんだぜ!」
ドラキュエが吠える。
まあ、普通はそうなのかな…
俺は、彼等がドラゴンと戦って勝てれば凄いし、それでいいんじゃないか程度に思っていた部分もあった。
だが、彼等の考え方は違う、死ねばそれで終わりだし、ここはテレビゲームのように死から蘇生するような薬や復活の呪文はない世界のようだし、まあ、戦わなくて済むならそれに越したことはないというところだろう。
あくまでも現実的なのである。
次の日、俺は間借りしていた冒険者ギルド・ゴートワイナリ支部の客室に、セブンワンダー以下、セブンワンダー、ゼルデン、エブエブ、ドラキュエの四人を呼び出していた。
俺は前日からゴートワイナリ支部のギルドマスター、いわゆるギルマスのライナウェイに無理を言ってギルドの一室を借りて宿泊していた。
ライナウェイは、新築だがこんな狭い客室でなくても、王城に行けば泊めてもらえるのではないかと言ってきたが、生憎、新しい王城は遷都してからまだ日が浅いため、建築途中であり、まだ、イリノス王国の国王アルグレイトはゴートワイナリの旧王族の屋敷を拠点にしていた。
そのため、俺は古い建物より、木の匂いのする新築の部屋に泊めてもらったという訳だ。
えっ?ミラージュ?隣にいるけど、一応、部屋をもうひとつ与えてそこに泊まらせた。
流石に従魔とはいえ少女の姿だし、かと言って俺と同じ部屋だと、また変な噂が立っても困るからな。
それでなくても、普通にゴスロリの格好をしているため、大人しくしていても目立ってしまうから、同じ部屋に入れていたら、俺の社会的な立場が崩壊してしまう恐れが多分にあった。
まあ、そんなことは置いといて、どうやらセブンワンダー達がこちらにやって来たようだ。
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