第32話 土下座への道
カクヨム掲載分の話です。
セブンワンダー達は、冒険者ギルド・ゴートワイナリ支部のギルドマスター、ライナウェイに持ち込んだドラゴンの角や牙の鑑定結果がどうだったのか、冷やかしながら聞いていた。
どうせ、鑑定しても分からないだろうと思っていたからだった。
だが、
「鑑定の結果、あれは、ここから西にそびえ立つ『神の隔壁』をさらに越えた所に生息する『ビッグラクーン』という巨大なタヌキの骨であることが判明した!」
ライナウェイがそう答えると、セブンワンダーは、頷きながら、
「そうそう、あれはビッグラクーンの骨で……」
と言いかけて、途中でハッとした表情となり、
「って!何でわかった?は!しまった!」
と叫んだ後に口を押さえる。
セブンワンダー達はまさか、ビッグラクーンという外地に生息する、ギルドが未把握の魔物の事がバレてしまうとは思っていなかった様であり、かなり、動揺している様子であった。
「お前達の所業は、我が冒険者ギルドの信用を著しく失墜し、多大な損失を与えた。その罪は非常に重く、ギルドが追放処分をしたところで終わるものではない。なので、こちらの大公爵ヒロシ・オハラ・イリノス様に、お前達の身柄の措置を任せることとする。」
とライナウェイが言うと、セブンワンダー達はあからさまに不服そうな表情を見せ始めた。
「ライナウェイさんよ!そりゃ俺達が持ち込んだ品物が、《《アンタ達の鑑定》》ではタヌキの骨だったのかも知れないが、俺達がドラゴンを討伐したのは間違いないんだぜ!ドラゴンから剥ぎ取った牙や角が、そのタヌキとやらの骨に似ているだけなんじゃないのか?それに、そんな言い掛りみたいな理由で追放されたんじゃたまったもんじゃねえ、それならそれで、俺達もそれなりの対応をさせてもらうぜ。」
とセブンワンダーが言う。
ほう、そう言って来たか。
って言うか、お前、さっき、『何でわかった』とか『は!しまった!』とか言って口を押さえてたんじゃないのか?
まあ、そう言ってくれるなら、こちらもやり易い。
俺がセブンワンダー達に声を掛ける。
「お前達に言っておく、鑑定は俺がやった。セブンワンダーよ、俺はお前の兄貴に会ってきたぞ。一度、お前の集落に帰って、俺のことを話してみるがいい。そうすればお前の考えも変わるだろうからな。」
「はあ?俺の兄貴だと?お前、俺の何を知っているんだ?」
セブンワンダーは少し顔色を変えたが、直ぐに、俺が、冗談か人違いでもしているとでも思い直したのだろう、少しニヤリと笑う。
普通、魔王イゴウルスを知っている人間などいるはずがないからだ。
だが、他の仲間は、俺から何か嫌な気配を感じ取ったのか何も言わず、黙っている。
「一週間待ってやる。それから、もう一度ここに顔を出せ。さもないとどうなるかは、俺の胸先三寸にある。」
と、俺は彼等に警告する。
勇者だかなんだか知らないが、悪いことをする奴にはそれなりの制裁が必要だからな。
まあ、これだけ言っても、俺達を殺しに来ないところを見ると、やはり引き続き人間の世界で住んでいくつもりなのであろう。
あの魔族の集落の生活レベルと比べると、そりゃ雲泥の差だろう、なんせ俺が進めている技術改革は多少なりともこのゴートワイナリにも採用しているから、ここの生活を味わってしまったら、もう、あの薄汚れた洞窟生活には戻れないだろうからな。
こうして彼等はぶつぶつと文句を言いながら、訓練所を出ていった。
「あれで良かったのでしょうか?」
ライナウェイが心配そうに俺に尋ねてきた。
「大丈夫だ。必ず、彼等はここに戻ってくる。」
俺は必ず彼等がここへ戻ってくることを確信していた。
という事で、俺はしばらく、彼等の動向を【スキル 魔神眼 探求(改)】で見ていく事にした。
「おい、セブン!なんだあのクソガキは?」
ゼルデンがセブンワンダーに尋ねる。
ゼルデンは一応剣士という触れ込みだ。
片手剣を腰に吊るしているが本当に剣が使えるかどうかはわからない。
「ヒロシとか言うロリコン賢者らしい。」
セブンワンダーの代わりにエブエブが答えた。
くそ!エブエブ、ロリコン言うな!
この、エブエブは自称魔法使いという設定らしい。
「で、どうするんだよ、お前の兄貴の事を何か知ってたみたいだし。」
ドラキュエが聞いてくる。
ドラキュエは魔族には一番相応しくない職業の僧侶ということらしい。
何か自分自身を浄化してしまいそうだな。
「あんなのハッタリに決まっている。俺の兄貴は…魔王イゴ…」
「わかった、わかった、それ以上言わなくていい、俺達ももう、何も言わねえし。」
ドラキュエはセブンワンダーが町中でイゴウルスの名前を出そうとしたので制止する。
誰が聞いているかわからないからだろう。
だが、俺は聞いているぞ。
「で、どうする?兄貴のところに行って、ロリコン賢者が来たかって聞くのか?」
ゼルデンが言うと斥候のクロトリがツボる。
「ギャハハハ!そりゃおもしれえ!」
おもしろくねえ!よし、クロトリ殺す。
「黙ってろ、クロトリ!」
セブンワンダーは、クロトリの下卑た笑いを止めさせた。
いいぞ、セブンワンダー!
セブンワンダーは何か考えている様子だ。
頭の悪そうなクロトリとは少し違うようだった。
そして、ふとその時に、自分の上着の胸ポケットに二つに折られたメモ紙が挟まれている事に気付いたようだった。
「な?なんだこれは?いつの間に、誰が?」
セブンワンダーは慌ててそのメモ紙を開いて中の文面を確認する。
「はあ?!な、なんだこりゃ?」
セブンワンダーはメモ紙を見るなり辺りをキョロキョロと見回す。
「どうしたんだぁ?セブン?」
ゼルデンが不思議そうに尋ねる。
「あ、いや、何でもない…」
だが、その表情は明らかに何でもないことはない様な顔だ。
「俺、ちょっと隔壁の集落に行ってくる。」
セブンワンダーが他の四人に話す。
「おいおい、どうしたんだよ、あのロリコン賢者の言うことを真に受けて、兄貴のところへ確認に行くのかよ?『ロリコン賢者来ましたか』って!」
エブエブが冗談混じりにセブンワンダーを茶化す。
「ギャハハハ!そりゃ最高だあ!」
クロトリがまた、バカ笑いをしている。
やっぱり、クロトリ殺す。
この四人の中では冷静なドラキュエが、
「何かあったのか?そのメモは?」
とセブンワンダーに尋ねると、セブンワンダーはそのメモをドラキュエに渡す。
それを見たドラキュエも顔を真っ青にする、「こ、これって、あのさっきの男がやったのか?」
「ああ、恐らくな、全く気付かなかった。何か魔法の一種なのか…」
セブンワンダーの顔に汗が滲んでいる。
ドラキュエの手元にあるメモ紙は、あらかじめ俺が作っていたもので、魔法でも何でもなく、奴等が訓練所に姿を現した瞬間に、音速を超える、俺の超高速移動でセブンワンダーの胸ポケットにメモ紙を入れたのだった。
ちなみにソニックブームは打ち消しといたけどね。
メモ紙の内容については、
『もしかしたらお前達の集落が、死人の山になっているかも知れないが、もしお前の兄貴イゴウルスが生きていれば聞いてみろ。最近、ここへやって来た人間の事を…』
であった。
「イゴウルス様の名前を…あのロリコン賢者、一体何者だ?」
だから、ロリコン言うな!!
ーーー◇◇翌日◇◇ーーー
俺は翌日も、セブンワンダー達の動向を確認した。
尾行ではない。
【スキル 魔神眼 探求(改)】で見ているだけだ。
俺は、屋敷に居ながらにして、対象となる人間の行動を監視することが出来るのだ。
ここはストーカー賢者と言われても仕方がないことは認めよう。
セブンワンダーは王都の外れまで移動し、人目がつかない場所で、飛行の魔法を発動させた。
そして、凄い勢いで『神の隔壁』まで飛んでいく。
やがて、『神の隔壁』近くに接近すると、今度は魔族の集落方向へと向かって上昇していく。
俺も、あれ以来、と言ってもここ数日のことなんだが、ここの集落の事は、スキルで確認していなかった。
魔族の者達は残っているのか?
俺はスキルで確認した。
あっ、結構残っているのか、ただ、彼等のほとんどの感情が『絶望』となっている。
まあ、『死の呪い』を掛けられて、生き生きとしている奴はいないだろう。
で、イゴウルスは?
あれ?生きてはいるけど、感情の状態が『精神崩壊』だと?
まあ、人間の国を襲って支配しようと企んでいた奴だから、自業自得というところだろう。
で、おっと、セブンワンダーがやって来たぞ。
洞窟の入口にいるあくび魔族の男がセブンワンダーに気付く。
「オセイロ様!」
あくび魔族の男はセブンワンダーを見て泣きそうな顔になる。
オセイロとはセブンワンダーの本名だ。
「何があった?」
「いや、私はここの番をしていましたので、詳しい事は全く…ですが、この集落に棲む魔族の者、全員に『死の呪い』の魔法が掛けられているらしいのです。」
「何だって?死の呪いの魔法だと?!」
セブンワンダーは集落がとんでもないことになっていることに初めて気付いたようだ。
慌てて、洞窟の中へ入っていく。
これまでに感じたことのない陰鬱とした空気が洞窟内全体に漂い、体に纏い付く。
「『死の呪い』の魔法とは一体?」
セブンワンダーは焦る気持ちを抑えているのか、緊張した面持ちで兄、イゴウルスのところに向かって行く。
「兄貴!」
セブンワンダーがイゴウルスの家に入り、そこで見たものは、変わり果てた兄の姿だった。
完全に自我を崩壊させ、ぶつぶつと呟いている。
どう見ても廃人だ。
「一体、何があったんだ?!」
セブンワンダーが叫ぶ。
「オセイロ様…」
セブンワンダーは自分の名前を呼ぶ声に振り向く。
「じい!」
セブンワンダーがそう呼んだのは、かなりの高齢と見られる魔族の男だった。
チェイス
魔族の男、年齢410歳、魔王のご意見番、通称『じい』
「一体、何があったのだ?」
「はい、実は…」
チェイスはセブンワンダーにこれまでの経緯を簡単に説明した。
「人間の男がここにやって来て全員に呪いをかけ、アレリカイア王国に攻め込もうとしたり、その術者に攻撃を加えようとしても同じように死んでしまうだと?」
「はい、相手に殺意を向けたり、殺すと口に出したりすれば、確実に…」
「で、被害は?」
「男達ばかりで約半数の者が亡くなりました。」
「何てことだ…くそ!」
「オセイロ様、決して、相手に殺意を抱いてはなりません。殺意を抱くだけで、その者は死んでしまいます。これはそんな呪いです。」
「じゃあ、許せというのか?!」
「許す、許さないという問題ではありません。相手の事を考えてはいけません。少しでも殺意を覚えれば『死の呪い』はあなた様を捕り殺します。奴は死神です。死を司る恐るべき神の化身…」
「そんな…」
セブンワンダーの言いたいことはたぶんこうだ。
『そんなことを言われても、俺は相手の素性を知ってしまっている、忘れろと言われても無理だ。顔を見れば憎しみに心が塗り潰されてしまう。殺意に変わる。』
という辺りか。
で、どうするんだ、セブンワンダーよ。
まあ、俺は一週間後のお前の答えを聞きたいだけなのだが。
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