第22話 新たな力とその使い方
カクヨム掲載分の話です。
俺が新たに得た、【スキル 神眼 異世界の知識探求】は、今いる自分の世界から、異世界となる地球等の科学力が進んだ世界の知識を得ることが出来るという、まあ異世界間ネットワークシステムへのアクセス権の獲得というものだった。
つまり、ネットで調べるように、異世界にアクセスして、必要な知識を選択して取得することが出来るのだ。
まあ、俺は地球限定らしいのだが…
『すごい、すごいぞ!これがあれば、この世界は救われる!』
と俺が思った瞬間、【神の導き手】さんから警告があった。
『異世界の知識は、時として、その世界に恐ろしいほどの変革をもたらし、それによって、その世界の命運が左右されることが予測されます。従って、異世界の知識を得たからといってそれを多用して、今いる世界へ過度に干渉することは非常に危険です。』
というものだった。
それは、科学技術や知識が発達していないところに、恐ろしい破壊力や大量の命を奪う危険性を持った兵器や技術を投入し、それを悪意を持った者が手に入れれば、世界はその者の手によって支配されてしまう事になるということであり、例えば、『核』というものの破壊力の危険性や、使用した後の放射能の影響や後遺症というものがあるということを何も知らない権力者にもたらせてしまう事になるということだ。
医療についてもそうだ、恐ろしい感染力と死亡率の高いウイルスがあったとして、異世界で開発された治療用のワクチンをある国に独占させたとしよう。
そうなれば、それはウイルス兵器となり、他の国々はその国に、全く無抵抗のまま、支配されることも考えられるのだ。
要は未知の先端技術を盾にして、国民を人質にした国交が行われてもおかしくはないのだ。
すなわち進み過ぎた先進技術や、異世界で遥かに進歩した科学の導入は世界に歪みを生じさせる。
また、進んだ技術を提供することにより、その世界の住民は、『誰か』、この世界では『俺』になるのだが、技術の提供に依存し、『誰かがやってくれるだろう』という期待感から、努力することを怠り、放棄して、世界の退廃を招く元凶にも成りかねない。
人類、いや種の存亡を異世界からの来訪者に任せるのではなく、自分達で努力し、自らの力で進歩していくことが必要であるということなのだ。
世界の平和や均衡を保つためには、焦らずゆっくりとした科学の進歩も必要だと言うことだ。
そこには、未曾有の災害も含まれるし、多くの死者を伴うかもしれない。
だが、それを試練と捉え、乗り越える事が出来なければ、この世界の未来はない。
そう、【神の導き手】さんは言っているのだ。
確かに【神の導き手】さんの言うことはもっともだ。
ここの世界の住民が努力していくことに、なんら異存はない。
それに、新しく、素晴らしい力も持つ者によっては、その力が毒にも薬にもなる事は、その力を持つ者の倫理観によって左右される事がわかっているだけに、俺自身も新たな力については、確かによく考えて慎重に使用していかなければならないなと思っていたところである。
だが、俺は、俺の領地に限定して、【スキル 神眼 異世界の知識探求】で手に入れた地球の技術を試験的に導入して運用していくことにした。
あくまでも試験運用だ。
危険と見なせば即中止だ。
ということで、まず最初に取り掛かったのは水の問題だ。
この水については、完全とはいかないまでも、とりあえずはこの世界にある物や技術の届くレベルで出来る浄化方法を採用することにする。
先ずは、砂利や砂、そして、炭等を使用した簡易的な濾過装置から始める事とした。
ただ、炭については『活性炭』というものを使用した方が、濾過性能が段違いで違うようなので、そちらを採用することとした。
ただ、作るのが面倒なので、腰を据えてやらなければならなかった。
手順は、簡単に説明すれば、硬い木などを蒸し焼きにしてから、清水(最初は俺がかなり深い地下から汲み上げてきた綺麗な地下水を煮沸消毒したもの)で洗浄、その後、細かく砕き、採取したシンジャライト、つまり天然の塩化カルシウムと水で作った溶液に入れて混ぜペースト状にして24時間放置、その後、それをさらに蒸し焼きにすれば完成らしい。
木材はそれが元で伐採が進み、環境破壊が進んでいるとも言われているので、他にもココナッツの殻やトウモロコシの芯、竹等の植物も素材として利用出来るみたいなので、今後はその辺り、この世界の植物で利用可能な材料も考えなくてはいけない。
俺は、ゼンドワに依頼して作った、金属製の巨大な濾過装置に、作った活性炭などの濾過素材を何十層にも詰め込み、また、最後は煮沸消毒して清水を作り上げた。
詳しい構造の説明は省略するが、かなり凝って作り上げたものだったが、俺の想像していたものよりもかなり下の浄化レベルであった。
最初はこの程度の濾過装置しか出来なかったが、いずれはしっかりとした装置を作り上げるつもりだ。
俺は、こうして作り上げた水を、今度は各家庭に配るための上水道の施設を同時進行で造っていた。
現在は、ほとんどの家に上水道が配備されていないので、街の住民には、その都度水は安価で買い取りという格好にしてもらっているが、上水道配備後は契約配給をする予定だ。
無料にするのも、良いのだろうが、ここは経済を回すためにも有料にした。
だが、そうすることにより、無料の汚れた水を口にするものが増えてもいけないので収入に合わせた配給制度の導入や、また、街の者には、生水の恐ろしさをわかってもらうために、定期的に、街の有力者を集め、『勉強会』と称して、細菌やウイルスの事や、食中毒、また感染症について教養した。
やはり、彼等、街の者達は、街に学校がほとんどないため、無学であり、あまり自分達の置かれている《《危険な状況》》が理解できていなかった。
だが、これらの勉強会により、今、置かれている危険な状況を認識したことにより、街に戻り各地の街の者達にその危険性を伝えていった。
信じられないという者も多少はいたらしいが、今まで、飲んでいた『井戸水』と俺達が濾過装置で作り上げた『浄水』をそれぞれ、ガラスで作ったコップに入れて見せたところ、あまりの透明度の違いや臭いの無さに驚き、直ぐに理解を示したらしい。
そして、下水道については、先ずは、公衆トイレの設置計画を立ち上げた。
それは、『コップの水』と同じように、先ずは住民に、体験させ、納得させる事が必要だからだ。
利便性と機能性、そして衛生面に特化したトイレを使用させる事により、意識改革を図らせるのだ。
水洗で、なおかつ手動式のお尻洗浄機能を装備したトイレを作り上げた。
お尻洗浄は、用を足した後、レバーで切り替えると水が出るノズルがお尻の下に出てくる仕組みで、水は水鉄砲の原理を利用して、足元のペダルを踏むと勢いよく水が飛び出てお尻を洗うという仕組みを考えた。
最初は抵抗があった者も、やがてその良さに気付いたようで、そのうちに、家でしなくなり、公衆トイレばかりでするようになった者も出始めた。
こうして、公衆トイレの効能を十分に理解した街の住民は、そのほとんどが水洗トイレを要望し、下水道システムに協力したのだった。
ちなみに、それまで住民はお尻を、荒縄や布で拭いたりしていたらしいが、あまりにも原始的で衛生面が悪すぎたので廃止させた。
ちなみに俺は最初から水魔法を使って尻を洗っていたので、それらのお世話にはなっていない。
また、排出した便や、生活排水は、そのまま、下水管に送られ、街から離れた処理場で処理される。
処理場については、【神の導き手】さんには申し訳ないがスキルを使わせてもらうことにした。
俺は、日本のある下水処理センターでの下水処理方法を【スキル 神眼 異世界の知識 探求】で確認し、ある程度のところまでそのやり方を採用することとした。
俺が参考にしたやり方であるが、水の再生センターにおける下水の処理については、すべて、プールのような池に下水を流す過程で行われるらしく、まずは沈砂池という場所で大きなゴミ等を取り除き、土砂類を沈殿させ、次いで第一沈殿池という場所で下水をゆっくり流しながら、下水に含まれる沈みやすい汚れなどを沈殿させるらしい。
その後は、反応槽というところに下水を送り、下水と微生物の入った汚泥(活性汚泥というらしい)に空気を送り込んで、約8時間程度かき混ぜると、下水中に含まれる汚れを微生物が分解し、細かい汚れなどはその微生物に付着して、沈みやすい塊になり、第二沈殿池に送られることとなる。
また、そこでは、反応槽で出来た、先程の汚泥(活性汚泥)のかたまりを3~4時間かけて沈殿させ、上澄み(処理水)と汚泥とに分離する。
その後に送られる、塩素接触槽というところでは処理した水を塩素消毒して大腸菌等を消毒してから、川や海に流すらしいのだが、ここの世界で塩素を造るのは危険と判断し、水はとりあえず煮沸消毒という原始的な方法を取ることにした。
煮沸消毒には大量の熱量を必要とし、かなり、非効率であることは間違いないため、一度は、塩化ナトリウム水溶液からイオン交換と電気分解を併用したイオン交換膜の方法による塩素作成を模索しようとしたが、この世界の科学力が未熟で、イオン交換膜が作れる環境も無いため断念した。
また、汚泥については、有機分解で発生するメタンガスを何とか利用出来ないかということと、汚泥は堆肥や建築材料にもなるらしいので、そのあたりは、さらに俺が【探求】を進めさせ、政務筆頭補佐官のウェルネストとも連携して開発に取りかかる事になった。
この様にして俺は、上下水道の問題の他にも医療など、この世界に住む人間に課せられている山積みとなった問題の解決にむけて、悪影響にならない程度の干渉で能力を行使していった。
あとは、子供達の問題だが…
ストリートチルドレンを収容する施設の建設だ。
そして、施設の建築関係者やその施設で働く者の雇用を確保したことで、図らずも上下水道の増設作業員やそれに関連する施設の職員の確保などと共に雇用問題もある程度解決するようになった。
子供の食料の調達は俺が『マイズカインの森』の奥地で巨大な魔物を討伐して持ち帰る等して、間に合わせる事にする。
また、それら討伐した魔物の素材を売却した代金で、その他の食料や衣服、本、筆記具などを購入資金に充てるようにした。
教育施設と教師の確保も喫緊の課題となっていたが、教師については、元教師であったデコロンディアのバーリンゲン町長ナイファートに知り合いの教師の紹介をしてもらう事になっていた。
医療関係であるが、医師としての能力のある者を俺の能力で選定し、それらの者に、地球の先端医療とまではいかないが、基本的な医学を学ばせるようにした。
そして、診療所や病院の設立を急がせると共に、医療関係事業の確立には、他の事業と同じ様に人材確保が必要不可欠なので、『シュセン堂』のイケズウに依頼して適任者を探す事にした。
俺はこうして、新たに得た力については、その使い方を限定的かつ最も効果的に活用していったのだった。
その間は、もちろんカレーの素材集めの活動は停止していた。
まあそれは、落ち着いたら、また再開しようと思っている。
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