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78 キースと再会

トムスカナの主神殿近くに着くと、簡易ルームに入って、制服に着替えた。

鏡で変なところがないかチェックしてから外に出る。

卵は大人しく、ヒュストに預けた鞄の中にいるようだ。

まずは主神殿に行こう。


主神殿に向かって歩いていると、メリアージュ嬢、と呼ぶ声。

主神殿に行く前にキースと出会えた。


「キース様、おはようございます」

「おはよう、メリアージュ嬢。主神殿に行く前に出会えて良かったよ」


そう言ってキースは微笑んだ。

うん、相変わらず色気とフェロモンが‥‥。

大分慣れたけどね。

魔Gの映像を消すのに、役立ってもらったしね。


「これからどうしましょう?

取り敢えず、主神殿で礼拝しようと思っていたのですけど」

 

間違ったら気付かせてください、って神様にお祈りしておかないと。

ヒュストが邪獣になったら大変だからね。

何だか、神霊獣から子供を託された気分だわ。


「それが、主神殿は今ばたついているようなんだ。

何でもSランクが出たとかで」


「Sランク?」


あら、昨日のSランクに続いてもう一体出たのかしら?


「何でも、昨日から暴れているらしくてね」


「えっ。

それってゴジ、いやティラ、いや、えーと、蜥蜴が立ったようなやつですか?」


「ごめんね、そこまで詳しい情報は、教えてもらってないんだ。

Sランクとしか聞いてなくてね。

ただ、討伐が出来なくて、神殿に協力要請があったようでね。

神殿騎士たちが出向するかどうかで、揉めているらしい。

神子に問い合わせているようだ」

 

「はぁ、そうですか」


「昨日、メリアージュ嬢は、商会の人たちと助けに行くと言ってたから、Sランクに遭遇してないか心配だったんだ。無事で良かったよ」


キースはそう言って、にっこり微笑んだ。

うっ、笑顔が眩しいわ。


「実は、Sランクなら昨日見たんです。

商会の者が、討伐と素材採取の許可を求めたのですが、騎士団の責任者から許可が出なかったので、非戦闘員を逃がした後は撤収したんです」


「えっ。

その騎士団の責任者は、頭がおかしいんじゃないか?

普通なら、Sランクを討伐してもらえれば、感謝してもしたりないぐらいだろう?

まあ、討伐する自信があれば、素材も手柄も自分のものになるから、他の介入は好まないか‥‥」


「素材も手柄も自分のものにしたい欲深いタイプか、余所の介入を嫌うプライドが高いタイプか、分かりませんけど、とっくに討伐していると思っていましたわ。

とても美味しいらしいので、さぞ食事は盛り上がっただろうと思っていましたのに」

私は肩を竦めた。


「それで、判断を誤って、被害を拡大させていると。

こう言っては何だけど、その責任者は無能だね。

人の命を預かる立場に置いていい人間じゃない。

そうなると、それを任命した者にも責任が出てくる」


厳しいけど、その通りだわ。

判断一つで、多くの人の明暗を分ける立場にいる人が、人命より自分の名誉とか考えていてはだめなのよね。

どのくらい被害が出てるか分からないけど、騎士団の責任者は当然として、トムスカナ伯爵も、場合によっては責任追及されるかもね?


『主、今いいか?』


『どうしたの?』


『朝の男が、懸命に我に何か伝えようとしておるのだ。

だが内容が不明瞭だ。

主が近くにいれば分かるかもしれぬから、出来れば近くに来て欲しいのだが』


『分かったわ』


「キース様、すみません。

気になることがあるので、ちょっと戻りたいのですが。

これからどうしましょうか」


「ん?戻るなら歩きながら話そうか」


私とキースは方向転換した。


「このままトムスカナに居て神殿の調査を続けるか、当初の予定だったモンテネロに行くか、どっちがいいかな?」


「どちらでも、と言いたいところですが、それはトムスカナのSランク騒動が終わってから判断したいですわね。

状態によっては、トムスカナでの神殿調査にも支障がでるかもしれません」


「そうだね。

Sランクが徘徊しているなら、うっかり遭遇しないようにしないとね」


うっかり遭遇して、人目がないなら討伐してしまうんだけどな‥‥。


簡易ルームがある所に戻ると、ヒュストが寄ってきた。

暫くじっとして耳をプルプル動かしている。

念話でも、無意識に耳を動かしてしまうものなんだろうか。


『主、どうやら騎士団の人間が来ているらしい。

討伐に協力しろと言ってるようだ』


まあ、昨日は無下に断っておきながら、何て厚顔無恥なのかしら。


「謝罪はあったのかしらね?

まあいいわ。

直ぐに戻ると伝えてちょうだい」


制服を着替えて、商会に帰らなくちゃ。


「キース様、すみません。

商会に、騎士団の者が、討伐に協力しろ、と来ているらしくて。

私急いで戻りませんと」


「えっ?」


「あっ」


しまった。

キースには、私は独り言を言ってる痛い人にしか見えないんだった。

ヒュストの能力がバレたら不味いよね?

どうやって誤魔化そう。


『主、この男も主に害をなすことはあるまいよ。

我は教えても構わんぞ』


『そうなの?』


『うむ。

まあ口止めは必要だが。

まず口止めを約束して、それから教えるがよいぞ』


『分かったわ』


「キース様、変だと思わずに聞いていただきたいのですが、あ、それより先に、今から話すことは内緒にしてください。

内緒にしていただけなければお話出来ませんの」


「分かった。

絶対に、口外しない」


うわっ、決断早っ。

立場もあるんだろうに。


「では。実は、このヒュストは念話が出来るんですの。

というか、昨日命名したら、出来るようになったのです」



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