6 乙女ゲーム開始?
「プリシラ・ヤルトと申します。よろしくお願いいたします」
そう言って彼女は綺麗な礼をした。子爵令嬢という身分を考慮すると上出来である。
王子妃になれるレベルの礼儀作法には及ばないが、高位貴族レベルと遜色ない。首の角度、指先の動き、腰の下げ方どこをとっても文句なし。
おぬしやるな、と思ってしまう。
足りないのは威厳だけ。と言っても、子爵令嬢という身で高位貴族の多いこのグループで、最初から威厳たっぷりに振る舞うのは反感を持たれやすいので、本当に程よい挨拶だったと思う。
やはり、おぬしやるな、という気持ちになる。
そう、このグループ、王子、側近候補、妃候補が揃い踏みである。
1~3年生は幅広く交流を持ち、人を見るため、能力身分問わずごっちゃ混ぜのクラスになる。高位者にとって身分問わずの人材探しでもある。とは言っても選択科目はそれぞれ専門になるのでクラスメンバーだけでずっといる訳じゃない。
1年生前半だけは皆一緒で共通の必要事項を叩き込まれる。
1年生後半からは選択が始まり、3年生は朝の1コマ除けば全て選択である。
先に試験だけ受けて合格すれば授業に出る必要はない。
側近、妃候補者は合格出来る科目も多く、そこは自由時間になる。
復習かつ人材発掘のため一緒に授業を受けてもいいし、他のことをしてもいい、他の授業に顔を出してもいい。
その時間を使って、私は商会を立ち上げた。前世離縁してから困ったのを鑑みて、女性が安心して働ける場を作りたかったのだ。
長期休暇にはサバイバルの特訓をした。
4年生はプレ社会人みたいなもので、クラスというよりグループになる。
王子、側近候補、妃候補で一グループ。
そしてその者たちに認められた者が各グループの代表になっている。
このグループは他のグループに指示もする。他のグループもほぼ専門で固まっている。
そこに編入してきたのだ。出来る人なのは間違いない。
ただ何がどう出来るのか、何故事前情報もなく編入してきたのか。
乙女ゲームが始まったから、という理由があったとしても、この世界から見ると変である。
私はそっと皆の顔を確認した。