61 奴はキングだったらしい
私が疑問に感じたことをキースも思ったらしい。
「一体誰が歴史の教科書の内容を決めているんだ?」
と腕を組んでいる。そう言えば、神罰×印事件の歴史の教科書の記述は、
729年 神罰×印事件 王家・王族・高位貴族家の多くが失脚
この一行だけだったような気がする。
教科書の記述ってこういうものだけど、その裏には色々あるのよね。
私はつい、
「このような立派な方々の働きがあって、今の私たちがいるんですわ。どうしてこれらのことを教えないのでしょうね?
本当に誰が教える内容を決めているのかしら?何か陰謀めいたものを感じるわ」
とこぼしてしまった。
キースも何やら考え込んでいる。
ただ調査結果としては、ドリスデン神殿の神罰×印事件の認識は、<同時期に各所で起きた救国の事業の一環>であって、<身分の低い令嬢が王子と側近を籠絡した>っていうのとは違うのは確実ね。
「神官長、ありがとうございました。とても勉強になりました」
「お役に立てて光栄ですぞ」
それでは帰ろうか、となって見送ってくれようとする神官長と補佐とともに参道(今度は階段の方)に向かって歩いていると、神官が駆け寄ってきた。ケトランを見ると神官見習いだ。
「大ニュースです!神官長!魔ゴキブリキングが討伐されました!群れも一緒に討伐されています!」
「何と!あの叩いても蹴っても斬ってもびくともしなかったアヤツがか!一体誰がどうやって討伐したのだ?」
「それは不明なのですが、お布施として素材が提供されております。あの大きさ、間違いありません!」
神官長と補佐が私たちを見た。
私は思わずキースの陰に隠れた。もう思い出したくないんです‥‥。
キースは陰に隠れた私をチラッと見て、神官長に質問した。
「そのキングとはどのようなモノでしょう?」
「体長130センチぐらいの魔ゴキブリですな。
非常にすばしっこく頑丈で群れを率いて人や家畜を襲ったり、作物を食べてしまったりする困りモノでして。
剣で斬っても、棍棒で殴っても、岩を投げようともびくともせず、落とし穴に落としてもすぐに這い出る、火矢を射っても素早くかわして森に逃げ込む、投げ網で捕獲しても網を切って逃げ出すしでホトホト手を焼いておりました。
ただ、そのように丈夫なヤツですので、防具にはピッタリではないかとも言われておりまして。
高値がつくことが予想されるので一攫千金を狙う者が挑んだり、『我こそは!』と思う者が腕試しに挑戦したり。
坂の方の参道にはよく現れるので、討伐狙いの方はそちらに張り込むことが多いですな。
まあ、他の魔獸や魔虫が出ることも多いところなんですがの。
そのキングが討伐されたとあっては、大騒ぎになりましょうぞ。一体どうやって討伐されたのか興味深いですな」
神殿の境内にそんなに魔獸や魔虫が出没して大丈夫なのかしらね?ドリスデンなら通常なの?
それにしても、あの魔Gそんなに強かった?確か卵の一撃でひっくり返って動かなくなってたけど。私も必死だったからよく覚えてないけど、実は何度も蘇って襲ってきてたのかな?
あーまた映像がっ!蠢く触覚がっ!カサカサとした音が!思い出したくないのにー!!
私は、キースの服を引っ張った。
「キース様、お取り込みのようですし、移動もありますから早くおいとましましょう」
「そうですね。それでは神官長」
と言って何やら見せていた。そう言えば、前にも何か見せてたような?
それを見た神官長たちは、残念そうな顔をしつつも頷いた。何なんだろう?
避難訓練の人たちは帰ったのか、参道は空いていた。
私とキースは、神官長と補佐に改めて礼を述べ階段を下りた。
ともあれ、ドリスデンの調査はこれで終わりだ。資料は少なかったけど、知らないことが沢山知れて良かったな。王家の祖である辺境伯が男気のある素晴らしい方だと分かったしね!
ああ、これで魔Gとの遭遇さえなければ‥‥!




