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55 卵

月を眺めて思いを馳せていたところに茶々を入れられて、若干むぅとしつつも、本来の姿で言われた訳じゃないからまあいいか、と思い直す。


「今日採取する予定の素材は全て集まったわね?

では、帰って休みましょうか」


もう一度月を仰ぎ、踵を返そうとして躓いた。

足元を見ると、白く艶やかな真珠のような光沢の卵。

結構大きくて、鶏の卵の10倍ぐらいありそうだ。


「えっ、卵!?」

「お嬢、何言って...うぉっ本当に卵だ。やけに色艶が良くないか、これ」

「さっきまで無かったよな?」


皆で卵を取り囲み、観察する。


「夜の山の上だぞ。注意に注意を重ねているんだ。こんなデカイ卵に気がつかない訳がない。先程まで無かったのは間違いない」

「いきなりお嬢の足元に出現したってことか?」

「それか、元々そこにあったのに隠蔽の術で隠されていたとか」

「何のために?」

「......」

「......」

「お嬢、どうします?」


「これって食べられるのかしらね?‥‥でも食べるのはちょっと怖いわね。珍しい卵だから、持って帰って観察してもいいけど‥‥」


今は移動しつつの生活だからなぁ。

私がいる時に孵ればいいけど、いない時に孵って危険な生き物だったら困るわね。いや、卵なら孵ってから最初に見た動くものを親と思う刷り込みがあるから大丈夫なのか?それとも異世界では違うのか‥‥?

もし危険な生き物だったらここに放置するのも問題があるのかな?


「ねぇ、ここに放っておいてもいいと思う?」

「危険な生き物なら卵のうちに処分したほうが安全ではありますね。もしこれが孵化して危険生物だった場合、それで誰かに被害が出た場合、気に病むでしょう?」

「それもそうね、じゃあ割ってしまいましょう」

私は卵の上に足を乗せて踏み潰そうとした。

‥‥卵は割れなかった。上に乗れた。


「おっ、何だ、この根性ある卵は!お嬢の踏み潰しに耐えてるぞ」


私は卵の上でジャンプした。それでも卵には皹一つなかった。


「私とは相性が悪いのかもしれないわ。誰か、試してみてちょうだい」


全員試したが、卵はびくともしなかった。


「仕方ないわね、取り敢えずここに置いて行きましょう。そして、ドリスデンの騎士団か警備隊かに報告しましょう」


そう決めると私たちは山を降りた。



ワイマールからドリスデンに移動して直ぐの採取だったから、結構疲れていたらしく、その夜はぐっすり眠れた。



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