48 見習い神官の日誌
725年
11月20日
第二王子の婚約者、リシーラ公爵令嬢がお亡くなりになったそうだ。
病による突然死だとのこと。
遠くから見たことがあるがとても綺麗な方だった。
信心深くお優しい方で慈善事業にも力を入れておられた。
とても残念だ。
ご冥福をお祈りします。
726年
2月1日
王都の神殿から来た神官見習いから不穏な話を聞いた。
故リシーラ公爵令嬢が怨霊となって、王家やそれに近しい者に取り憑いているとのこと。
本当だろうか?
ここは王都から距離があるため、情報が届くのが遅く、真偽も確かめようがない。
2月20日
お使いに出た時に噂を耳にした。
王家のスキャンダルが新聞に載ったそうだ。
王家は真実を隠蔽しているそうだ。
何の真実なんだろう?
噂は尾ひれがつくから鵜呑みにしてはいけないが。
3月10日
第二王子はリシーラ様を亡くされ、心痛のあまり療養されるそうだ。
あと数ヶ月で婚姻される予定だったのだ、お気の毒に。
6月16日
第二王子が亡くなったそうだ。
ご冥福を祈る。
8月15日
王太子は隣国の姫を娶る予定だったが解消されたそうだ。
次の妃候補も決まらないらしい。
第二王子も亡くなった今、早い次代が望まれているのだが。
11月10日
王太子妃がチェバレノ男爵令嬢に決まったそうだ。
高位の方が他にいなかったのか?
そう言えば、高位貴族の間で婚約解消と婚約の結び直し、それに伴う婚姻が怒濤のごとく起きているそうだ。
王都の神殿がてんてこ舞いで、応援の要請がきている。
729年
1月11日
1月1日に、×印が王家に出て、観念した王家が真相を公表した。
ふざけんな!
第二王子がリシーラ様を毒殺したのを隠蔽していただと!
神罰がくだって当然だ!
1月12日
第二王子は療養ではなく幽閉で、亡くなったのは毒を与えたからだと判明。
悼む気にはならない。
2月15日
今の王族は全員×印が付いたため、新たな王朝を立てることになった。
しかし、名乗りをあげても×印がつく高位貴族が増えているらしい。
3月20日
王位に名乗りをあげる者がいなくなったとのこと。
この国はどうなるんだろう。
5月17日
ザンピーク公爵家に王位を打診するが断られたとの噂を聞いた。
10月13日
ドリスデン辺境伯が新王になるようだ。
暫く様子をみたが、×印は出なかった。
やっと相応しい方が見つかったようで安心した。
730年
4月7日
×印が出た者は辞職せざるを得なかったため政務に支障が出ているらしい。
ドリスデン辺境伯家に連なる者が穴埋めに入っているとのこと。
731年
1月1日
新王朝の名称がフラドリスに決まった。
ドリスデン辺境伯領はそのままの名称を継続することになった。
オストレマ王朝はこの一年で終わる。
732年
1月1日
本日、新王が即位した。
オストレマ王朝が終わり、フラドリス王朝が始まった。
新しき時代の幕開けという感じがして胸が弾む。
735年
12月31日
ザンピーク公爵家に天使を伴った女神が現れたという噂が聞こえてきた。
見た人が羨ましい。
736年
1月10日
神殿の者がザンピーク公爵家に、女神について確認しに行ったところ、女神ではなく、故リシーラ公爵令嬢が天使に連れられて帰天の挨拶に見えられたとのこと。
今までは地上に留まっておられたということか。
ご冥福をお祈りします。(合掌)
1月16日
故リシーラ公爵令嬢を目撃した複数の者が彼女は輝いていた、と言うらしい。
もしや彼女は天が遣わされた存在だったのだろうか?
2月1日
協議の結果、故リシーラ公爵令嬢を聖女と認定することになったようだ。
明日、説明があるとのこと。
2月2日
×印が出た一連の出来事は、故リシーラ公爵令嬢が悪を正すためになされたことだと認定された。
・帰天の前に天使に連れられ光輝く姿で現れたのが、彼の御方の神性と正当性を表している。
・また多くの人に目撃されていることにより、これを知らしめんとする天の意図が感じられる。
ということで、聖リシーラ様は、この国に悪しき者が蔓延るのを阻止された、救国の乙女であり聖女である、と認定されることになった。
以降この一連の出来事を"神罰×印事件"と呼ぶことになったそうだ。
747年
7月30日
これまでの調査で、×印が付いた者は子孫を残せなかったことが判明した。
多くの貴族家が跡絶えることになるだろう。




