2 王子妃候補とは
「メリアージュ様」
心配そうな声が隣から聞こえる。
ふと意識を戻すと皆の心配そうな顔が目に入った。
「度々申し訳ございません。ランチにいたしましょう」
軽く首を振って席に着く。前世の死因を思い出しました、何て言える訳がない。これはそう、一人の時にじっくり思い起こす問題であって皆といる時に考えることじゃない。
「今度の夜会の件ですが‥‥」
「それでは‥‥」
「このように‥‥」
「ええ‥‥」
「そうですね‥‥」
王子殿下と王子妃候補、と言っても、ただうふんあはんな関係ではないのだ。
どちらかと言うと、次世代の国政の繋ぎ、非公式の場で各家の意見を吸い上げたり、女性視点での考えを聞く場とされている。
勿論、婚約しても構わない人が選ばれているが、何もこの中から選ばないといけないわけじゃない。万一、王子殿下が身分の足りない者を選ばれた場合に養女先にも出来る家が選ばれている。王子妃候補たちは、王子妃になれるぐらいの身分と教養を修めていることが求められるのだ。
でも、いくら身分と教養があっても性格に難があると思われる場合は外される。養女として迎える場合のお手本になれるくらいじゃないと駄目なのだ。
そんな王子妃候補達のお眼鏡に叶わない女性の場合、道のりは険しい。それでも他に王子殿下が自力で協力者を探すことは出来なくはない。
こんなに自由になったのは今の国王陛下の曾曾曾祖父の世代に、高位貴族の婚約破棄事件が多々起こり、混乱を招いたからだそうだ。
実はその婚約破棄事件が原因で一旦王家は途絶えている。
不適格者として神罰が降り、額に×印がつけられたのだ。特に王族は厳しく、当事者の4親等ぐらいまで×印が及んだそうだ。その印を刻まれた者は子孫が残せなかった。
そこで新王家及び高位貴族は、王家の婚約制度を随分変えたのだ。婚約ではなく候補に留め、自分の好きな人と結婚したいなら双方努力しましょうということになった。
王子妃候補の他に側近候補もいて、そちらは別の日に王子殿下とランチをとっている。同じように国政に携わる家の繋ぎと非公式の意見の吸い上げ、王子殿下の友人として息抜きや勉学に付き合ったりもするのだ。
ワイマール伯爵ご子息も側近候補のお一人。