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19 私の前世

私、そんな経験しなかったよね?忘れているだけ?

うーん、どう思い返しても、頭にガラスの置物がぶつかったところまでで、次は乙女ゲームの中?って状態で覚醒したよね。やっぱり何か忘れてる???


うーん、うーんと唸っていると皆が私に注目していた。プリシラが期待のこもった瞳で問いかける。


「メリアージュ様、メリアージュ様も何か不思議なご経験がおありでしょう?

今の私は勿論肉体に宿っていて、人の心の裡は分かりません。ですが、メリアージュ様はどこか人と違う感じがするのです」


私はここで、私にも前世の記憶があるのです、と告白するべきか悩んだ。プリシラの経験に比べれば取るに足らないもののようにも思えるし、ひどく低俗にも感じたのだ。


「その、全く無いわけではありませんけれど、プリシラ様の壮大なお話と比べると言う程でもないって言いますか‥‥うーん」


「まあ、メリアージュ様、そんな意地悪おっしゃらないで。私、もう気になって気になって。このまま放置されるのは酷というものですよ」


シャルロッテがウズウズした様子で身を乗り出してくる。


「そうだな、話してもらえると嬉しい。知っていればフォロー出来る」


無口なイザベラまで促してくる。イザベラの素の話し方はこんな感じだ。公的な場ではもうちょっと令嬢言葉を使うけれど。


マリーローズはウィンクを送ってくる。


「では、そうですね。実は私にも、前世の記憶があるのです」


皆揃って口を押さえている。瞳は少しばかりの驚きとそれより大きい好奇心で一杯だ。二人目だから受け入れ易いのか、プリシラが告白した時とは反応が違う。


「ああ、だからメリアージュ様はプリシラ様の前世をすんなり受け入れていたのですわねぇ」


マリーローズが得心がいったとばかりに頷いている。


「でも、プリシラ様のようにこの世界の記憶ではないのです。こことは別の、そう、違う世界の記憶です。


その世界で私は極々平凡に暮らしておりました。ここのような身分制度は私の国にはほぼなかったのです。ほぼ、というのは昔は身分制度があったため、その名残で少し残っているのです。

私の生活に然したる影響はありませんでした。


その世界で、私には私を大層愛してくださる方がおりました。いわゆる溺愛ですね。彼は私が他の人、特に男性ですが、女性でも、付き合うことを殊のほか嫌がりました。独占欲が強くて嫉妬も束縛も凄かったのです。でも、私も彼の愛に浸かって幸せを感じていたので、受け入れていたのです。ちょっと嫉妬と束縛が過ぎるけど、愛してくれてるんだから、と思っていたのです。


学生時代が終われば、当然就職しようと思っていました。その世界では女性であってもそれが普通なのです。でも、彼は嫌がりました。在学中に結婚して、そのまま家庭に入って欲しい、そう言うのです。私は彼が言うのなら、と承諾しました。卒業前に籍を入れ、幸せな結婚生活が始まりました。

しかし彼は社会人になると段々疲れていきました。機嫌が悪くなり、しゃべらなくなり、乱暴になっていったのです。何か言っても『俺の稼ぎで食わしてやってるだろ!』と怒鳴るだけなので、私も何も言わなくなりました」


「ま、まぁ‥‥」

皆絶句しています。


「そして段々、家にお金を入れなくなってきたのです。私が自由に使えるお金はそれまでに遣り繰りして貯めたものが少しばかり。時々実家から送られる食べ物や雑貨がとても有り難かったものです。彼もたまに機嫌良く何か買ってきてくれることはありましたが‥‥。


耐えきれず、私も働きに出る、と言ったのですが、それはもう暴れて暴れて。私自身には暴力を奮わなかったのですが、部屋はもう滅茶滅茶でした。それっきり働きたいとは言えなくなりました。


そうしている内に3年経ちました。彼は頻繁に外出するようになりました。その頃には、一緒にいても息が詰まるので出かけてくれた方が有り難い、と思っていました。


そんなある日、彼が言ったのです。『子供が出来た。離婚して欲しい』と。彼は私を束縛しながら、自分は浮気していたのです」


「「「「サイテー(ですわね、です、だ、ですね)!」」」」


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