1 思い出しました
ランチの席に行くと、既に第二王子殿下と候補者2人が座っていた。
ちょっと考え込んでいた時間が長かったかしら?
「お待たせして申し訳ございません」
「構わないよ。でも珍しいね」
第二王子殿下は本当に珍しがっているみたい。
週始めの日は、第二王子殿下と候補者達がランチをとることは周知されてるので、邪魔をするものは先生方にも生徒にもいない。実際、遅れたのはこれが初めてだったりする。
「ワイマール伯爵のご子息をお見かけしたのです。
改めて、何故彼はあのようなお付き合いをされているのかと疑問に思ったら、思考の渦に嵌まってしまったようです。思いの外時間が経っておりました。
マリーローズ様にお声がけしていただけて助かりましたわ」
「はは、メリアージュ嬢に興味を持たれるなんて彼も中々の者だね」
「そうですわ。恋愛には興味ないんじゃありませんの?」
シャルロッテ様が言われると、イザベラ様も頷く。
「何か心境に変化が?」
皆の注目を集めて、私はちょっと考えた。
「恋愛に興味、というより、なにか既視感があって、遠い昔に視たような‥‥」
そう、遠い昔に、画面越しに。
「貴女と出会えたことは人生最大の喜びです。
もう貴女無しでは生きていけないのです。どうか結婚してください。そしてずっと傍にいてください」
という甘ったるい声が反響する。
‥‥そうよ、そうそう、望まれて結婚したのに、だんだん不機嫌になって、家にお金を入れず束縛するくせに、自分は浮気して相手が妊娠したとかで結局離婚。
荒んでいた時に、
「これでもやって気分転換したら?やはり恋愛は二次元に限る。二次元は裏切らない!」
と離婚仲間に奨められた乙女ゲーム。
開始して間もなく、あまりに結婚前の夫と言動が被る攻略対象のセリフにキーッとなって八当たって。
ゲームケースを投げたら壁に当たって跳ね返ってきて、避けようとしたら棚にぶつかって、飾ってたガラスの置物が落ちてきて、頭に衝撃が‥‥って、これが死因!?
マジで?!
私はカッと目を見開いた。