表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/282

12 (過去)第二王子から逃れる

「それでは続きを。


すぐに婚約を結ぼうとした王子ですが、婚約は家と家との結び付き、王子の独断でするにも限度があります。一方のごり押しで成されるものではありません。


私を毒殺した後、王子は直ぐにお相手の親を呼びつけましたが、領地に帰っていて直ぐに出て来れる距離ではありませんでした。自分が最高権力者であるうちに事を運びたかった王子は自分もその領地に向かいつつ、中間地点まで急いで来るように通達しました。紋章印を忘れないよう念押しして。


そして、そのお相手の親ですが、娘から高位の方に付き纏われていて怖いと仄めかされていたため、念のため娘の相手の家と正式な婚約を結び、書類も提出済みでした。地方で受理されたため、王都に来るまで時間差があったのです。そのため、王子は婚約者はいないものとして考えていました。


不穏な空気を感じたお相手の親は、娘の相愛の一家に急ぎ他国に身を隠すように警告して出発しました。中間地点で婚約の契約書を持った王子が待ち構えていましたが、娘の婚約は既に提出済みなので、と断ります。

娘の家の方が高位であれば婚約破棄が可能でしたが、幸い相手の家は格上でした。解消するには相手の家の同意が必要です。


諦めの悪い王子は婚約相手の家を呼び出しますが、警告に従って出国しており捕まりません。そこで王子は憤りながら王宮に戻り、先ずは婚約相手を暗殺するよう指示します。

ですが、暗殺には時間がかかります。待ちきれない王子は筋を通すことを放棄しました。婚約など待たずとも自分のものにしてしまえばいい、と考えたのです。


これから手込めにしようというのです。驚いた私は急いでお相手の所に飛びました。何というか魂になると思った所にぴっと飛べるのです。


お相手の方は不安そうに胸に手を当てていました。不穏を感じ取っていたのでしょう。勘の優れた方で、何かが自分の所に来たことが分かっているようでした。


実はお相手を見たのはそれが初めてだったのです。とても愛くるしい方で、王子が手に入れたいと思うのも納得したくらいです。


私は必死に、逃げて、と伝えました。お相手の方は戸惑っていましたが、王子来る、逃げて、と告げたところ、ハッとして、そのまま窓から飛び出しました。今でもその時の決断力に拍手を送りたいくらいです。


お相手の方が逃げて10分もしない内に、王子が寮までやって来ました。寮母さんには、『約束していたのに彼女が来ない。体調を崩しているのではないかと心配で』とのうのうと言っていました。


彼女に薬を嗅がせて意識を失わせ、寮母さんには、やはり体調を崩して倒れていたので連れ帰って看病する、と説明するつもりのようでした。反吐が出そうでした。


急いでお相手の方の所に飛び、誘導しました。公爵家のタウンハウスに子供のころに作った秘密の抜け穴があるんです。まさか王子も私の家を探そうとは思わないでしょう?人目を盗んで脱出出来ないか色々試して冒険していたのが役に立ちました。


一旦そこに身を隠し、庭から通じる公爵家専用の地下道を通って貴族エリアを出、都民エリアで下水道に入り、王都から脱出。女性専用の避難所がある修道院に逃げ込みました。

本当にハラハラしましたが、意外と肝が座っていて根性があり、弱音を吐かない方なのでどうにか乗り切れました。

えっ、移動中の食べ物ですか?

それは公爵家専用の地下道には、いざという時のために、保存食や金銭、宝石や着替えなど備えてありますからそれを使ってもらいました。公爵家にとっては微々たる物ですが、彼女は後日手紙を書いて返済していましたよ。律儀な方です。


そう言えば、お相手の方は私の正体までは分からなかったようです。何かがぼんやりと存在していて、自分を助けて導いてくれている、そう認識していました。とても感謝してくれて、私は胸がポカポカして嬉しい気持ちで一杯でした。そう、魂であっても嬉しいと胸の辺りがポカポカするんですよ。


王子は最初王都を探しまくり、その後はお相手とその婚約者の領地と街道を中心に探していたため、見つけることが出来なかったのです。時間制限があって助かりました。

でも、決断が少し遅れれば、公爵家のタウンハウスに行く前に捕まっていたかも知れず、本当に危機一髪でした」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ