11 (過去)第二王子の横暴
「王太子である第一王子には側妃が許されていましたが、第二王子に許されるのは正妃のみ。それも断罪につながったのでしょう。
王と王妃は隣国の即位記念の式典に参列後、天候が崩れて足止めを余儀なくされていました。
王太子は宰相を連れて条約締結のため別の国に行っていました。
1週間、第二王子が最高権力者になりました。
王子に意見が言える程の近衛も残っておりませんでした。主だった者は他国に行く王族の護衛として付き従いましたから。
我が公爵家も父は領地の視察、兄は第一王子に随行しており、王宮に来て異変を察することが出来なかったのです。第二王子に意見を言えるのはむしろ私しかおらず、そこを狙ったのです。
王子は婚姻準備に来ていた私を防音のある部屋に呼び出し、罪を並べ立て断罪しました。断罪後、直ぐに貴族牢に入れられ、毒杯を渡されました。何もやっていない私は拒絶しました。きちんと調べてもらえれば、そんなことはしてないと分かるはずです、と。
王子は私を押さえつけて、無理矢理毒を飲ませました。せめての情けか、眠るように死ねる、という王家独自の毒杯でしたので苦しみはありませんでした。それよりも王子の狂気じみたギラギラとどす黒い瞳が怖くて、押さえつけられた体が痛くて。
気がつくと私は、貴族牢のベッドの上にある自分の体を天井付近から見ていました。体と魂を繋ぐ白銀の紐があり、それが今にも切れそうになっていました」
私たちはプリシラの話を固唾を飲んで聞きました。恐ろしい情景が浮かび、今にも狂気じみた第二王子に押さえつけられるような錯覚を覚え、ブルリと体が震えます。皆顔色が悪くなっています。
「私が天井付近から眺めていると、医師を連れた第二王子が戻って来ました。罪を認めた私が毒杯を望んだので渡したのだ、と説明しています。
私は違う、と訴えました。でもいくら訴えても彼らには届きません。まさに死人に口無しです。
医師は不審に思ったようですが、取り敢えず彼に合わせておこうと思っているのが分かりました。死亡を確認し、診断書を渡しました。彼はそれをもって即座に私との婚約を無効とし、新たな婚約者に彼女を据えようとしました」
プリシラは私たちの顔色を確認した。
「あの、ここまで話していて今更ですが、ご不快ではないですか?この続きを話しても大丈夫でしょうか?」
「プリシラ様が苦痛でないのならお聞かせくださいませ。ここで止められると、大変申し訳ないながら続きが気になると申しましょうか。あの、本当に申し訳ないのですが」
人の不幸な経験を聞きたがるなんて恥ずかしい行いよね、と思っているのが丸分かりなシャルロッテが眉を下げながらおずおずと口を開いた。
「他の皆様は大丈夫ですか?ご無理なさっていませんか?」
プリシラは気遣ってくれるが、続きが気になるのは他の三人も同じであった。
今の話だと×印が本人以外に及び、王家が断絶するところまではいかないように思えるのだ。今後も王家に関わっていく立場なので、何が神罰に当たるのかしっかり確認しておきたい。
同じ過ちを犯さないためにも。




