10 前世
「えっ」
まさかの転生者!
私の心臓はバクバクし出した。ここが乙女ゲームの世界だと知ってるの?
他の皆は普段と変わりない。表面上はね。
よく見るとマリーローズは笑みを深めたし、シャルロッテはテーブル下で手を揉みしだいているし、イザベラは...能面だわ。普段からあまり表情に出ないけどピクリともしない。無の境地に入ろうとしてるわね。
プリシラは一番反応の良かった私を見ると頷いた。
「そうなんです。
思い起こせば懐かしくも忌々しくもあるのですが、神罰×印事件はご存知ですね?あの時、冤罪をかけられて処刑された第二王子の婚約者、それが私の前世なのです」
流石に皆息を呑んだ。それはあまりにも壮絶な前世で。
自分たちには直接関わってこない一昔前の話だと思っていたのに、当事者が目の前に!
王子妃(候補)を強く拒絶するのも納得だった。
「プリシラ様、何と苛酷なご経験をなさったのでしょう。私、何と言ったらいいのか」
プリシラに比べれば私の経験なぞ鼻で笑えるわ~遥かに上回る壮絶な前世に私は身震いした。そんな経験したくない。
「この容姿を見てください。自分で言うのもなんですが、可愛いでしょう?可憐でしょう?愛くるしいでしょう?庇護欲を掻き立てられるでしょう?
これって王子が冤罪で婚約者を処刑してまで手に入れたがった、そのお相手にそっくりなんですよ」
プリシラの目がメラメラと燃え上がっている。
「当時、訳の分からない混乱の中で処刑され、魂となっても直ぐに成仏出来ずにおりました。ただ私自身は何か罪を犯した訳でもないので、地獄に落とされる謂れはなかったようです。
魂になると便利なんです。人が心の中で考えていることも分かるのです。
このお相手も酷い不安の中にいました。卒業したら結婚する予定の相愛の男性もおり、全くもって王子妃を狙ってなどいなかったのです」
プリシラはお茶を飲んでため息をついてシュンとした。うーん、それすら可愛い。
「全て王子の横恋慕です。好みのど真ん中でどうしても手に入れたかった。その欲望で権力を奮ったのです。
王子の付きまといに恐れを感じたお相手は逃げたがっていました。身分故、強い拒絶も出来ず、王子が近くに寄っていくことで妬みからの嫌がらせもあったようです。
私自身は王子妃教育を兼ねた婚姻準備が佳境に入っていました。学業に問題はなかったため学園に行くのはテストの時のみ、といった状態でした。卑劣な嫌がらせをしたと断罪されましたが、そんな暇はなかったのです。
卒業後2ヶ月ほどで結婚することになっていました。第二王子だったので、そこまで規模は大きくなく、主に国内の貴族を集めての式になる予定でした。
それでも、今のように候補者が複数いて、役割分担して準備するのではなかったので、私一人の肩にかかっていました。そして、この準備も王子妃としての試金石なのです。侮られると婚姻後に響くので手も気も抜けません。勿論、色々な方のお力は借りるのですが」




