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第8話 メイド・アンド・サスペンス

今回も番外編で、少し長めです。

思いっきり自由に書かせて頂きました。

 投獄後、四日目となりました。もう少しです、頑張りましょう。

「うん。よろしく」


 あまり気力がないあなたですが、今回もさっそく物語を始めます。


 あなたはご想像下さい。

 とあるカフェの扉を開けて、あなたは入店するのです。


 たくさんのメイドさん達があなたに向けて、お帰りなさいませーご主人様、と、ごあいさつをします。


「今度はメイドカフェか。でも私は女だから、ご主人様じゃなくてお嬢様じゃないの?」

 あなたがお嬢様発言をしました!

「そうじゃないって!」


 黒いメイド服に身を包んだメイドさん達の歓迎を受けながら、あなたは近くにいたピンク色のロングヘアのメイドさんにお声をかけます。


 私はすっごく偉いお嬢様なんだぞぉ! とっとと席に案内しろやぁ!

「クレーマーだ!」


 そのピンク色の髪のメイドさんは、脅えながらあなたをご案内します。こちらです、お嬢様……。

 接客するメイドさんに対し、あなたは彼女を睨みつけました。

「その態度悪い客、絶対私じゃないよ! なんでメイドカフェに自分から来ておいてメイドさんを睨むのっ?」


 席に着いたあなたは、メイドさんが渡そうとしてきたメニュー表を奪い取ります。

「マナーがなってないよそいつ!」


 あなたはパンケーキを注文しました。定価は三千円で税別です。

「たっか!」

 こちらの値段は、実際の相場の三倍以上でした。


 あなたが周囲へと睨みを利かせながら待っていると、お皿にのったパンケーキが運ばれて来ます。

 ピンク髪のメイドさんがパンケーキをテーブルに置こうとしますが、あなたは右手でそれを制止します。自身で取り上げてから、改めて置きました。


「その明らかに私とは異なる客は、人間不信なの?」

 別の世界のあなたは、人間関係に疲れた成れの果て……という設定です。

「私はそんなふうになりたくないな……」


 人間不信のあなたは何枚も重なっているパンケーキを見てから、メイドさんに問います。このパンケーキは高過ぎるから、高価なキャビアとフォアグラとトリュフが入っているんだろうな?

「ここで世界三大珍味を聞くことになるとは思わなかった!」


 メイドさんは力なく答えます。……入っていません。


 声が小さいッ!


 入ってないですっ!


「そのぐらい注意しなくてもいいじゃん!」


 そうだ、それでいいんだ。

 ところで、パンケートとホットケーキは何が違うんだ?


 あなたの問いに、メイドさんは答えます。

 それは……諸説ありますが、パンケーキは生地の甘みが抑えられている、薄い食事系の食べ物です。ホットケーキはパンケーキの一種で、厚みがあって、甘いスイーツに使われることが多いそうです……。


 よろしい。

 あなたは軽く拍手をしてから、言います。

 正解のご褒美に、いいことを教えてやろう。パンケーキのパンは、食パンや菓子パンのパンではなく、フライパンのパンのことだ。

「なんかその人、最初から正解知ってたみたいな口ぶりだし、豆知識まで披露しちゃってる! 喋ってるバス子さんの声が低いし、男みたいだよ!」

 男ではなく、あくまでも、あなたという設定です。

「じゃあ設定がおかしい!」


 メイドさんとの会話を終えたあなたはパンケーキを召し上がろうとしますが、手を止めます。メイドさんのお顔をジロジロと見ました。そして、このメイドさんが今回のお話の中では同級生だということにあなたは気づきます。

 あなたとメイドさんが通うお嬢様学校、『私立銘度(めいど)喫茶学園』はアルバイトが禁止となっているのです。

「メイド喫茶学園って名前がひどい! そのメイドカフェ、そこの学校の関連なんじゃないのっ?」

 いいえ、『メイド喫茶マスタードガレージ』は全くの無関係です。

「メイドカフェのネーミングセンスもひどかった! マスタードでも作ってそうなメイドカフェだ!」


 アルバイトをしているのは校則違反だぞ! あなたは力いっぱい怒鳴りました。


 私は学校に許可を取っていますっ! メイドさんは反論します。


 貴様! 嘘を言ってるんじゃないだろうな! 証拠は! 何か証拠はあるのかッ!

「なんでその人そこまで追求するのかが分からない!」


 こちらが証拠です……。メイドさんはミニスカートをたくし上げ、白いドロワーズの内側に挟んでいたアルバイトの許可証を出しました。

「どこに入れてんの!」


 あなたはどうしますか?


 1.許可証を奪い取る。

 2.許可証が本物だと信じない。

 3.襲いかかる。


「毎回、襲いかかるが高確率で出るよね」

 フィクションの物語ですから。


「3はいつも通り通報とか退学だろうけど、3でいくね」


 あなたは店内でメイドさんに襲いかかり、許可証を奪い取りました。

「1番と同じじゃん!」


 あなたは四つ折りの紙の許可証をポケットに入れ、パンケーキを食べ始めます。

「こっちは牢屋の中でロクなものを食べれてないのに、なんでそいつはパンケーキ食ってんだと声を大にして言いたいよ」


 暴力を振るったあなたを警察に突き出そうと、一番偉いメイド長さんが電話しようとします。

 するとあなたが、そんなことをしたら許可証は返さないぜぇ~分かってんのかぁ~と、脅迫しました。メイド長さんはやむを得ず従います。

 メイドさん達は全員両手を挙げて、その場で止まります。

「銀行強盗の現場みたいだな……」


 あなたはパンケーキを完食した後、レジでお釣りは要らないと五千円札を置きました。お釣りは寄付にでも回してくれ。そうレジ係のメイドさんに伝えます。

「今さらいい人っぽくしても遅いよ!」


 あなたはお店を出る前に、ピンク色の髪のメイドさんに向かって声を飛ばします。


 明日の夜、明戸(めいど)神社の前に来い!

 そこで十万円渡してくれるのなら、許可証を返してやる!

 用意出来なかったら、無許可で働いた上に客を不快にさせたと学校に報告してやるからなぁ!

「やっぱクズだ!」


 許可証がないと、アルバイトは校則違反になってしまいます。

 メイドさんはお仕事を打ち切り、その日はおうちに帰ることにしました。


「そのメイドさん、髪の毛がピンクならそこで校則違反に引っかからない?」

 ピンクの髪は、地毛です。フィクションのファンタジー世界では、ピンクの髪の美少女はそれこそ無数にいます。

「この話、ファンタジーじゃなくて現代日本だと思うんだけどなぁ……」


 翌日の夜、どうしても許可証を取り戻したいメイドさんは、十万円の入った封筒を持って明戸神社に向かいました。経済的に困窮している彼女の家族の、大切な生活費でしたが、あなたからの報復を恐れたのです。

「その私と称されるクズ、完全に悪人だよね」


 メイドさんが神社前の長い階段をのぼり終えると、外灯の明かりに照らされる、腕組みをしたあなたの姿を見つけました。


 お金は持って来たのか? あなたは質問します。


 はい、こちらの封筒に……。


 よこせッ! あなたは封筒を奪い取りました。


 これで許可証は、返してくれるんですよね?


 ああ、返してやるよ。あなたはあっさりと返しました。

「裏がありそう……」


 メイドさんが許可証を取り戻して安堵した直後、あなたはメイドさんに体当たりを仕掛けました。


 きゃっ! メイド服姿の彼女はその場に倒れてしまいます。

「その子メイド服で来てるのっ?」

 はい。メイド長さんが、メイド服で行けば、かわいい見た目で隙をつけるかもしれないと、貸して下さったのです。

「むしろ逆効果だと思うけど……」


 おや、こんなところに許可証が落ちているなぁ~。あなたは許可証を拾い上げ、いやらしい笑みを浮かべます。

 返してほしかったら、また十万円を用意するんだな、あっはっはっ。


 あなたが神社の階段を降りようとした時、メイドさんは立ち上がり、背後からあなたを突き落としました。あなたは叫びます。きゃああああああああああっ!

「初めて声が女子っぽくなった!」


 あなたは一番下まで転がり続けます。倒れて動かなくなりました。


「絶対にやっちゃいけない行為だけど、やられてもしょうがないよね」

 はい。ですが、実際には真似をしないで下さい。

「しないよ」


 ぐったりとしたあなたのところへと、メイドさんは早足で向かいました。メイドさんが許可証を探していると、足をつかまれます。


 てめぇ……、こんなことして、ただで済むと思ってんのかぁ……ッ!

「まさかの生存にびっくりだよ!」


 あなたはメイドさんにどうされますか?


 1.殴られる。

 2.逃げられる。

 3.通報される。


「今のメイドさん側の選択肢だよね!」

 どれを選びますか?

「じゃあ、1の殴られるで」


 メイドさんがどうにかあなたの手を払いのけて、背負っていた鞄を両手で持ち、あなたを殴りました。


 ぐえっ! あなたはぐったりとしました。


「なんだろう……、とてつもない爽快感が湧いてくる」


 今度こそメイドさんはあなたを倒したかと思うのも束の間、あなたは再び立ち上がります。

「不死身かそいつ!」


 メイドさんは脅えますが、……あなたの様子が変わっています。

 

 あなたは殴られたことにより、悪い魔女によって掛けられていた、洗脳の呪いが解けたのです。

「ファンタジー世界って設定が生きた!」


 あなたは本来の清らかな心を取り戻します。――ごめんなさい、メイドさん! この取り上げた許可証は、お返しします!

「低かった演技の声が高くなってる!」


 あっ、ありがとうございます!

 あなたの変わりように戸惑いながらも、メイドさんは許可証を受け取りました。


 あなたは、十万円の入った封筒の中身を出しました。お札全てに透かしが入っていることを確認し、メイドさんに封筒をお返しします。

 あなたはその際、メイドさんに言いました。


 大丈夫、これには全部透かしが入っているから、偽札じゃないよ。


 まあ! 素敵! 感動しました! メイドさんはあなたへと、神様を拝むような瞳を向けます。

「メイドさん、そんなくっだらないことで心を許しちゃうのッ? そもそも自分で用意したお金じゃん!」


 あなたはメイドさんに対し、夜だから家まで送るよ、と伝えます。

 メイドさんはあなたにひどいことをされたので、断る可能性がありました。ですが、改心したあなたを見て、メイドさんは受け入れるのです。


 よろしくお願いします。そう言葉を返したメイドさんは、あなたとともに、夜の神社を後にするのでした。

「普通は許さないと思うけどなー」


 翌日、メイドさんがアルバイト先のメイド喫茶に行くと、あなたもメイドさんとして働いていました。

 メイドさんがどうしたのかと聞くと、あなたは答えます。


 今まで迷惑をかけちゃったんだから、恩返しとして、アルバイト代をメイドさんにあげようと思っているの。だって、家庭の事情で、お金に困ってるんでしょ?


 どうしてそこまでしてくれるんですか? メイドさんはあなたに尋ねます。


 知り合いの子が困っているんだから、助けたいって思うのは当然でしょ? あなたは笑顔で答えました。

「殴られてからの豹変振りが怖い!」


 メイドさんは、あなたの厚意をありがたく思うのでした。


 また、次のお客さんがメイド喫茶マスタードガレージに訪れ、あなたはお客さんに笑顔でごあいさつをします。――お帰りなさいませ、ご主人様!


 以上で、今回のお話は終了しました。グッドエンドです。


「グッドだったのかなぁ……」


 今回のお話、『メイド・アンド・サスペンス』はいかがでしたか?


「途中までの私と称される存在が、ここの兵士みたいにクズだったから感情移入が出来なかったかな。最後の選択肢って、殴られる以外を選んだら、どうなったの?」


 3の通報されるでしたら、通報されたあなたが退学になってゲームオーバーという、いつもの流れになります。

 ただし、メイド喫茶マスタードガレージは悪い魔女さんの襲撃を受け、閉店となります。

「なんで襲撃されんのっ? 別にそんな結末を継ぎ足さなくてもいいじゃん!」

 あなただけ不幸になってゲームオーバーだとかわいそうです。

「いや、それ、現実の私じゃないから! 本当に操られてたなら少しはかわいそうだけど、散々メイドさんにヒドいことしてたのは事実でしょ! 話の中でだけど!」


 それに、作中で悪い魔女さんを何度も出さないと、せっかくのファンタジー設定がもったいないです。

「それだけのためにメイドカフェ潰しちゃダメだって!」

 営業利益が赤字続きで閉店……よりは、夢のある結末だと思います。

「どっちも絶望しかない!」


 では、お次は、2番の逃げられるルートに進みましょう。


 少し長くなりますが、お聞きしますか?

「うん、時間はたくさんあるし。またしょうもない結末だろうけどね」


 それでは始めます。


 メイドさんは倒れているあなたの手を払いのけて、許可証を拾い上げます。急いで逃げるものの、メイド服では走りづらく、メイドさんは途中、倒れてしまいました。その間に、あなたが起き上がります。


 立ち上がったメイドさんは必死で走り、どうにかあなたに捕まらずにメイドカフェまで到着しました。


 店内には、メイド長がいました。


 メイド長は自分が許可証を預かると言い、通報もしておくとメイドさんに告げました。安心したメイドさんは、自宅に帰るため、従業員用のお部屋で私服に着替えます。


 メイド長さんは、盗撮を始めました。

「いけないことが始まっちゃった!」

 現実では盗撮など、やってはいけません。


 それで、この2番ルートのメイド長さんだけは、あなたの共犯者となります。

「グルだったのか!」


 許可証を預かったのは、盗撮とともに脅しの材料とするためで、メイド長はもちろん通報をするわけがありません。

「メイド長が悪い魔女って設定っ?」

 いいえ。メイド長は悪い魔女に操られている側です。今回の物語では、悪い魔女は誰なのかは明らかにされません。


 タイトルにサスペンスを冠する通り、聴き手のあなたの緊張感をあおる、素敵なお話になっています。

「素敵な感じなんてほとんどなかったよ!」


 翌日、すっかりメイド長を信じたメイドさんは、普段通り制服を着て登校します。

 席に着いたところで、メイドさんは肩を叩かれます。


 メイドさんが振り向くと、ニタァー……と笑う、あなたのおぞましい姿があったのでした。バッドエンドです。

「思っていた以上に内容がクソだった!」

 クソとおっしゃられてしまうと、メイド長さんがかわいそうなので。挽回のシーンを入れましょう。


 私、メイド長! メイドさんの中で一番年上だからって年増って言わないでね! チラッ! ほら見て! 私の穿いている白いドロワーズには水色の縦縞が入っていて、下のほうの際どい部分に青いリボンがついているの! ほら見て! チラッ! チラッ! チラッ!


 以上です。


「……ごめん、バス子さんの話って、あからさまに下品な描写が多いような気がするんだけど」

 男性目線では、お色気は受けます!

「私は男じゃないんだよ?」

 男性には受けるという事実を申し上げただけで、あなたは女性です。女性のあなたが、今のメイド長さんのセリフを感情的に朗読すれば、きっと男性には受けるでしょう。

「変態って思われるよ!」


 それと、今回のお話では、メイド喫茶マスタードガレージで問題がたびたび起こりましたが、実際のメイド喫茶とは無関係のフィクションとなります。


 あなたの世界で多数存在するメイド喫茶は、メイドさんがたくさんいらっしゃる、楽しめるお店です。あなたも機会があったら、興味の出たメイド喫茶に赴いてみるのも、良いのではないでしょうか。


「そうだね。少なくとも、この牢屋から解放されて、元の世界に戻れたらの話になるけど」


 牢獄から出られるのは、時間の問題です。これまで四日間、すでにあなたは耐えました。


 残りの三日間も、どうにか本気で耐え抜きましょう!

昔、二時間サスペンスをよく観ていました。

車椅子の犯人は大抵歩ける、最後は崖の上や廃工場の中など、お約束が好きでした。


最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回も妄想話となります。

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