第60話 サキュバスが創る夢の図書館です!
リバーが見る夢の中は、サキュバスのバス子によって支配されます。
あなたは、たくさんの本棚が並んでいる学校の図書館内で立っていました。
こちらは夢の中の出来事です。
夢を見ているあなたは、紺色のスクール水着を着ています。
「えっ?」
あなたはご自身を見回しました。
いわゆる新スクと呼ばれる、股間部分が分割されていないスクール水着を、あなたは着ています。
あなたから見て左側の下のほうに、白い長方形のメーカーズ・タグがついています。ちなみにブランド名は『CoZeZo』でした。
「……なんでプールじゃなくて図書館なのに、私はスク水姿なの?」
学校の施設の中で、学校指定の制服でいるのは普通です。
「いや、スク水は制服じゃないよ」
バス子があなたのそういうお姿を求めている点も、理由の一つでしょう。
「そっちが本音か。で、夢の中にバス子ちゃんはいないの?」
あちらの閲覧用テーブルの上にいます。どうぞお進み下さい。
「うん……、って、あれ? 前と全然違くない?」
はい、異なります。
あなたが見ているのは、かなり年季が入ったような印象のアンティーク・ドールです。
ロングドレスを着た五頭身のお人形で、大きさは五十センチほどあります。一本の三つ編みになった薄緑色の髪、大きな瞳や淡い唇は精巧に作られ、お洋服もきちんとした生地で制作されたものでした。
「もちろん、フィギュア姿にもなれますよ」
「お人形のほうも同じ声で喋った!」
バス子が塗装された硬質のフィギュア姿だと思っていたあなたは、さぞ驚かれたことでしょう。
「いや、喋ったことに驚いてるんだけど! バス子ちゃんの声が頭の中と人形の両方から出てるけど、どーなってんのっ?」
バス子は一人ですが、何人かは同時に喋ることが出来ます。サキュバスは夢を操る悪魔ですので。
「いつもそんなことないから、サキュバスって設定をホント忘れちゃうよ!」
「設定ではなく、事実です」
またお人形のほうが喋りました。ただ、お口が全く動いていないので不気味です。
「確かに怖いよね」
テーブル上で座っているドール姿のバス子は、もちろん動くことも出来ます。バス子はぎこちなく立ち上がり、スカートを軽く持ち上げて、ごあいさつの格好になりました。
「……ごめん、動くと余計、呪われた人形にしか思えない」
「貴女は正直者さんですね。金の斧を差し上げましょうか?」
バス子ドールは急に出現した金の斧を構えます。
「差し上げるつもりないでしょ! 攻撃しようとしてないっ?」
「愛する貴女を攻撃するわけがありません」
バス子ドールは斧の柄側をスカートの内側に入れました。これはいわゆるお色気シーンです。
「えっ、そうなの?」
あなたはどちらかと言えば、恐れを抱きながらドールをご覧になっています。不評でしたので、斧は消しましょう。
それでは、変身もしましょうね。バス子ドールは両手をお腹の前で重ねます。その後、緑の光に包まれて……。
はい、ドール姿からフィギュア姿になりましたー。
あなたがこれまで何度も目にした、お馴染みの姿です。
「うん、こっちのほうがかわいいよ」
ありがとうございます、あなた。
「バス子はバスの姿にもなれますが、図書館の中でバスになってもおかしいだけなので、バスには変身しません」
「そういう常識は持ち合わせているのに、私がスク水でいることをおかしく思わないの?」
テレビゲームだとそういうキャラクターはたくさんいますよ。
「ゲームと比較しないでよ」
こちらはサキュバスの夢の中ですので、あなたはスク水のままでも、寒さを感じることはないのです。
「恥ずかしさは感じるけど」
あなたとバス子しかいないのですから、恥ずかしがるお方はこちらの全人口の半分しかいません。残りの半分は悦びを感じています。
「明らかにバス子ちゃんじゃん!」
サキュバスの創る夢は、スク水好きなあなたにとって、実に素晴らしい世界でした。
「私がいつスク水好きと言った?」
夢の中で漂う魔力によって、あなたは感触を得ることが可能です。
「ずっと貴女にこうしたかったのですよーっ!」
「ひゃっ!」
あなたの背後でバス子が抱きつきました。
「えっ、バス子ちゃんっ?」
あなたは不思議にお思いでしょう。バス子フィギュアがテーブルにある状態で、等身大の人型バス子にくっつかれているのですから。
ロングドレスを着た人型バス子と、同じ姿のバス子フィギュア。
バス子が二体いると紛らわしいので、フィギュアのほうは消しましょうか。
フィギュアは不自然なぐらいにガタガタと揺れ始めます。
「ぎゃあああああああああっ!」
消滅!
「なぜフィギュアを叫ばすッ?」
悲鳴を出す練習です。
「……貴女に襲われた時の、ですね」
人型バス子があなたのお耳の横でささやきました。
「そんなことしないって!」
「貴女なら、してもよろしいのですよ。こちらは、バス子が創り出した夢の中ですからね」
「夢の中なら何してもいいとは思わないけど」
「では、ヤラれる前に、改めてご紹介をさせて頂きます」
「やらないって!」
「やって下さいとお願いしてもですか?」
人型バス子は両手でお祈りしながらあなたに問います。
「その前にさ、スク水をどうにかしてよ」
「……脱がせばよろしいのですか?」
「そうじゃないっ! フツーの服を着させてよ! せめて制服にして!」
「メイド服とウェイトレスさんの衣装、どちらにされますか?」
「なんでその二択なのっ? 学校の制服だよ!」
「ならば、学校指定の制服、スク水のままでよろしいのではないかと」
「話が戻った!」
「バス子がスク水を求めている点も、理由の一つでしょう」
「それはさっきも聞いた!」
結局、あなたは図書館内にて、素敵な紺色スクール水着を着用し続けるのです。
「マジか……」
スク水、ドール、フィギュア。
あいかわらずマニア向けの路線ですね。
旧スクでなく、あえて新スクにしています。
今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございます。




