第57話 あなたの極上の魔力
前回のあらすじ。リバーは食べられそうになって大ピンチ!
あなたは自らの視界を閉じています。
そんな中、あなたの半袖が一気に引っ張られます。
あなたの控えめな胸部には、硬いものがぶつけられました。
お腹の下辺りでは、柔らくて巨大なものが乱暴にすりつけられていました。
「いやああああああああんっ! すっごい、すぅっごいですぅ~っ!」
「……えッ?」
目を開いたあなたが見た光景。それはある意味で、世にも恐ろしいものでした。
ハエトリさんがあなたの体操着の中に頭を突っ込んで、あなたの白一色のハーフトップ・ブラジャーにお顔を埋めています。
つまり、あなたは密着されているハエトリさんに、魔力をどんどん吸収されているのです。
「はっ、ハエトリさんっ?」
「もっと、もっと、ちょうだいなのですぅ~っ!」
とにかくハエトリさんは、あなたの上半身の敏感な部分にしか興味がないようでした。
魔力を奪われ続けてしまうと体力も消耗します。ですが、ハエトリさんが落ち着くまで、しばらくはお待ちしましょう。
「うん、分かったよ……」
その後、ハエトリさんがおとなしくなったかと思うと、あなたの内側からお顔を出しました。
「ああー、おいしかったのでしたぁーっ! ありがとうございましたぁ、リバーさん!」
ハエトリさんの表情は、すっかり優しげな美少女顔に戻っています。口内の牙も出ていません。
「……ハエトリさん、これはどういうことなんですか?」
「あっ、ごめんなさいリバーさん。……私、演技をさせてもらいました」
ハエトリさんはあなたに跨ったままお答えします。
「演技?」
「はい。魔物の中には、恐怖を与えた相手の魔力を好む魔物がいるのですが、私がそれに該当します。リバーさんを物凄く怖がらせたお陰で、私は極上の魔力を頂けたのです」
ハエトリさんはあなたの上から退いて、ベッドから下りました。暗闇の魔法を右手から発して、あなたを拘束していたクモの糸を消します。
パスちゃんとミリーナさんのクモの糸も、速やかに解かれました。
「すみませんでしたね、パスちゃんさんにミリーナさん。貴女がたにも何か手出しをしなければ、リバーさんに怖がってもらえないと思いましたので」
頭を下げるハエトリさんに対し、お二人は驚いていたからなのか、特に怒りはぶつけません。
「怖がるってレベルじゃなかったですよ、ハエトリさんの演技」
そうおっしゃったのは、レベル2のあなたでした。
とりあえず、あなたは体操着の裾を直して、ベッドの上で座りました。両膝をつけた女の子座りです。下着姿のハエトリさんのほうは、ベッドの横で立っています。
「リバーさん。貴女は最後には恐怖を抑え、おとものお二人の身を案じて、ご自分を犠牲にしようとしましたね。リバーさんのその決意が、魔力に若干の苦さを加えていましたが、それがとても素敵な香辛料になっていました」
ハエトリさんはあなたへと、ほのぼのとした美少女の笑顔を向けています。
「貴女の魔力は、私がこれまで頂いた中でも間違いなく一番です。ごちそうさまでした、リバーさん」
「はあ……」
あなたは先ほどまでの、演技と称した彼女の恐ろしいお顔、殺伐とした言動を忘れられないのでしょうね。感謝されても、他人ごとのようにしか思えないといったお声でした。
リバーは食べられませんでしたが、魔力を食べられました。
魔力を奪われたものの、リバーとあなたはハエトリさんの下着姿が見られて良かったでしょうか?
クモって、見た目が怖くて損をしていますよね。アニメとかでも、巨大な化け物だったり、残酷でグロテスクなやつだったりして、最後には主人公サイドに退治されるパターンが多いです。私はそういう展開が好きではありません。クモよりもはるかに日常で困らされている虫なんか、何種類もいるじゃないですか。そういうのを敵にすればいいのに……と思うのですが、そういうのだと、クモ以上にビジュアルが気持ち悪くなってしまうから、やらないのでしょう。つまり、クモは敵にも使えるのに、それほど気持ち悪さを出さずに恐怖の見た目に出来る、優れた生物ということですね。
家の中にいるハエトリさんは、すっごくかわいいです。見ていると癒されますよね。家にクモがいる場合、恐らく小さな虫を食べているため、退治しないで、放っておくのが良いと思います。進んで私の嫌な虫をやってくれるなんて、最高です。
長くなってしまいました。
今回も最後までお読み下さり、ありがとうございます。




