第55話 美女の不穏な行動
大きなお胸のハエトリさんのおうちでお泊りです!
あなた達は、ハエトリさんのお店兼住居でお夕食を頂きました。鶏料理のローストチキンにはあなたも大満足。日本産と変わらない白いご飯とお箸までご登場したのも、あなたにとっては予想外の幸せでした。お風呂まで使わせて頂き、日常生活の慣れで忘れかけていたバスタブのありがたみも思い出しました。
今現在、ハエトリさんからお借りした寝室に来ています。あなた達にとって、まさに至れり尽くせりですね。
「あー、やっとベッドだぁ! やったぁー!」
体操着姿のあなたはベッド上に突き伏します。それも無理のない行動でしょう。あなたが異世界に来てから初めて、ベッドという人類の知恵が生み出した寝具を自由に使うことが許されたのですから。
しかし、問題もありました。
寝室には、ベッドが二つあるのです。
あなたはお部屋の奥側のベッド上に乗ったままちょこんとお座りし、考えました。
「ここで寝るのは、バス子ちゃんを除いた私達三人。ベッドは二つ。私はパスちゃんと眠るか……」
あなたは立っているパスちゃんを見ます。
頭にティアラ風プレートと愛らしいタコさんおヒレがついた、黒髪のパスちゃん。ミリーナさんからお借りした私服姿のままでした。薄い青色のワンピースは半袖で、スカート部分の裾には繊細な白の模様が入っています。また、ワンピースの襟の下には、細長いホワイト・リボンのアクセントがついているのです。
小柄で素直でかわいい。パスちゃんに関しては、こんな感想しか出ません。
「それとも、ミリーナちゃんと寝るか……」
あなたは立っているミリーナさんのほうも見ます。
ミリーナさんは、白一色の半袖、紺色のハーフパンツという体操着姿です。右袖には盾のような形をした金色の校章が縫いつけてあります。ハーフパンツ左下の太もも部分にも同じ校章が白の単色で入り、ハーフパンツ両側には白い縦線が二本入っていました。
なお、あなたのほうの半袖は、首回りと袖がハーフパンツと同じ紺色になっているのが特徴です。また、見える刺繍はハーフパンツのメーカーズ・タグ程度でした。
「リバー様。私はパスちゃんと寝るので、どうかベッドはお一人でお使い下さい」
ミリーナさんからの残酷な申し出です。
「えー、なんで私だけ仲間外れなのぉ?」
「リバー様には、昨夜やそれ以外のお詫びも兼ねて、広々とご就寝をして頂きたいのです」
そうおっしゃるミリーナさんは、お風呂に入る時から、三つ編みの髪はずっと解いた状態です。これまでと違って体操着姿ですし、新鮮な見た目ですね。
「妾も、上様がベッドをおひとりで独占するのには、賛成なのです。妾は上様の配下ですので、上位配下のミリーナ様と寝るのです」
パスちゃんからも拒否されます。なぜか彼女にとって、ミリーナさんは上司さんのような存在になっているようでした。
「魔物と一緒に寝るのには抵抗がありますが、お部屋をお借りした以上、床の上で寝るのは貸して下さったハエトリさんに失礼ですし、これも私に与えられた試練なのでしょう。我慢します」
ちなみにミリーナさんも体操着の裾はあなた同様、内側に入れています。
「我慢どころか、パスちゃんと寝られるならご褒美でしょうよ……」
あなたはドア側のベッドの横で並ぶパスちゃんとミリーナさんを、うらやましそうに眺めていました。
そんな時、ドアをノックする音が聞こえたのです。
「あっ、ハエトリさんですかー?」
あなたがお声を飛ばします。
「ちょっとよろしいでしょうかぁ?」
「はい。どうぞー!」
ハエトリさんがドアを開けて、寝室内にやって来ました。
「何か用ですか?」
「はい。とても大事なご用があります」
ハエトリさんがあなたへとお答えした後、お口から糸を吐き出しました。その糸が向かう先は、パスちゃんのほうでした。パスちゃんが糸の一撃でぐるぐる巻きにされ、お次はミリーナさんも同じような状態にさせられます。
あっという間の出来事でした。
「え?」
想像もしなかったようなことが目の前でおこなわれ、あなたは唖然とします。
胴体を拘束されたお二人の見た目は、まるで雪だるまさんみたいです。――なんて、ほのぼのとした状況ではないのは、明らかでした。
どうしてこうなったのか、あなたもバス子も理解が出来ません。
あなたはハエトリさんに目を向けますが、お顔を下げた彼女の表情は、窺えませんでした。
なんかやばいことになってきましたね……。
今回も最後までお読み下さり、ありがとうございました。




