第54話 お湯が出ますよ
寒い冬の間にお湯が出るのは、大変ありがたいことですよね。
「リバーさんにミリーナさん。お二人の問題が解決出来たようで何よりです。では、ご案内しますので、こちらにいらっしゃって下さいね」
ハエトリさんは奥にある階段へと進み、あなた達三名様がついて行きます。階段の天井は少し低かったため、背の高いあなたは少々屈みました。
階段を上がった先には、日本の玄関のように靴を脱ぐ空間があり、木製の廊下は一段高くなっています。
まずハエトリさんがお先に廊下へと上がり、ベージュの上質なスリッパをご用意して下さいました。
廊下を通って最初にご案内されたお部屋には、二つのベッドがご用意されています。アンティーク調の洋風家具で統一された、大変趣の良いところでした。
「こちらは私の寝室ではなく、お客様用の寝室です。どうぞご自由にお使い下さい」
「ありがとうございます。異世界に来てから一度もまともな場所で寝ていなかったから、ベッドがあるだけでもすごく嬉しいです」
「まあ……。昨夜もでしたが、ずっとご苦労をされていたのですね。ですが、もう何もご心配は要りません。リバーさん達がご不便なく暮らせるお部屋の数々がそろっています。他のお部屋もご案内いたしましょう」
ハエトリさんは寝室の扉を閉めました。
「こちらは洗面所とお風呂場です。もちろんお湯も出ますよ」
「お湯も出るのはありがたいですね」
「こちらはお手洗いです。もちろんお湯も出ますよ」
「それはつまり、洗浄機能みたいなものがついていて、温水が出るってことですか?」
「はい。冬も安心です」
ハエトリさんのご案内はまだまだ続きます。あなたはパスちゃんとミリーナさんを引き連れて、ハエトリさんの後ろを歩くのです。
「それでこちらは……、台所です。もちろんお湯も出ますよ」
「お湯が出るって、わざわざ言うほどのものなのですか?」
「出ないよりかは出たほうが、ご使用の幅が広がります。で、こちらはテレビが置かれた居間です。もちろんお湯も出ますよ」
「さすがにリビングじゃお湯は出ないでしょうっ?」
「りびんぐ?」
かわいくハエトリさんはお顔を傾げました。
「――問題なのはリビングじゃなくてお湯です!」
「お湯はここから出ますよー……というのは、冗談です」
「まさかの下ネタですか!」
お尻を両手で押さえながら言っていた美人のハエトリさんに、あなたは幻滅します。
なお、あなたの言う下ネタとは、性的な内容という意味です。あなたのような素敵な美少女が、そのような品性に欠ける言葉を口に出すのが残念でなりません。
「むぅ……私を悪者にしないでよ」
あなたは小声でおっしゃいました。
「では、お部屋のご紹介は以上です。ごゆっくりお漏らし下さい、ではなく、ごゆっくりおくつろぎ下さい。お夕飯の準備が出来たら、お呼びしますね」
「えっ、夕食もご馳走してくれるんですかっ?」
「はい。私のお手製ですので、お口に合うか分かりませんけど。名づけて、ハエ料理です」
「……すみません、失礼ながらも聞かせてもらいますが、人間でも食べられるものですか?」
「はい。ハエトリグモの私の手作りだからハエ料理で、いくらなんでもお客様にハエさんはお料理として出せませんよ。グモ料理と称したほうがよろしかったですか?」
「なら、間を取ってトリ料理がいいと思います」
「まあ! 鶏料理ですね、了解です!」
「誘導されたような……。でも、贅沢言える立場ではないので、それでお願いします。本当に、人間向けの食事でお願いします」
「はい! お任せ下さい、リバーさん!」
巨乳を揺らす、満面の笑顔のハエトリさんでした。
ハエ料理って呼びかたは、すごくイメージが悪いです。
あと、リバー達パーティー全員が貧乳なので、巨乳のハエトリさんの威力がすさまじいと思います。
今回も最後まで読んで下さり、感謝します。ありがとうございました。




