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第53話 本当の仲間として迎える理由

筋を通せる強い人に憧れます。

 あなたはカフェ・ハエリグの中を見回します。木の色が大半を占める雰囲気の良いお店ですが、あなた達とハエトリさんを除くと、誰もいないのです。


「ここ……ハエトリさん以外に従業員さんはいないんですか?」

「ええ。私が店長であり、店員であり、巨乳の象徴(ますこっと)でもあるのです」

「ドアに開店中って書いてありましたよね? 無人でお店を開けておくのは、まずいんじゃないですか? さっきも、お客さんのうずらさんが来てたみたいですし」


「開店中というのは、お店を開放してありますよ、という意味で、店主がいるかどうかは言及していません」


「いや、それだとあまりにも不用心では?」

 あなたは、より怪訝(けげん)なお顔になります。


「貴重品のあるところには糸で罠が仕掛けてあるので、泥棒さんが侵入しても安全ですよ。せきゅりてぃ? というものは、万全です。……リバーさんはその辺のことをご心配しているのでしょうけど、夜は出入り口の鍵もきちんと閉めます。なんなら、リバーさんに合鍵をお貸ししましょうか?」


「そこまでしてもらうのは困ります。なんで、そんなに私は信用されてるんですか?」


「女の勘です。と、言いたいところですが、リバーさんの魅力にやられてしまいました。それだけですよ」

 ハエトリさんはかわいくウインクします。

「私はこの辺りの魔物の中では、それなりに強いほうです。万が一、人間どもが侵入して来ても、お客人のリバーさん達のことは絶対にお守りしますので、大船(おおぶね)に乗った気でいて下さい。あっ、安心して下さいという意味で、大船には乗せませんからね」

 大船ではなく巨乳が、船酔いしそうなほど揺れていました。


「あっ、あの、別にハエトリさんを疑ってるわけじゃないんで。ただちょっと気になっただけです。今日一日、お世話になります」

 あなたはハエトリさんに頭を下げました。


「一日だけでなく、毎日でも構いませんよ。空いているお部屋をお貸しするだけですから。リバーさん達にお貸しするのは二階の寝室で、あちらです」

 ハエトリさんは右手で奥にある階段を示しました。


「じゃあ、二人とも、行こ」

「はい。上様」

 あなたとパスちゃんは進もうとしたのですが、ミリーナさんがあなたの腕をつかんで静止します。


 彼女の手は、震えていました。


「どうしたの?」


「すみません、リバー様。……私は野宿をするので、リバー様とパスちゃんだけでお泊り下さい」

「えっ、ミリーナさんも泊めてもらえばいいじゃない」


「――それは出来ませんッ!」


 今のは、静かな店内に衝撃が走るぐらいの声量でした。


 あなたがミリーナさんのお顔を(のぞ)き込んでみると、彼女は涙を()めているのが分かりました。


「わっ、私はっ、昨夜は愚かにも、リバー様に野宿をさせてしまいました! そんな私に、リバー様とご一緒させて頂く資格はありませんっ!」


 ミリーナさんは、そのことをかなりお気にされていたのでしょう。

 ですが、あなたは同情することはありません。彼女の決意を尊重するのが良いでしょう。早く追い出しましょう。


「昨日とは違うんだよ、ミリーナさん」


 あなたは、ミリーナさんを突き放したりはしませんでした。


「あの時はね、私には信用がなかったから、野宿になったんだよ。でも、今日は違う。ミリーナさんは冒険者ギルドで、パスちゃんを膝蹴りした職員の人にやり返してくれたんだもん。あの時のミリーナさんの行動が、私の信用を勝ち取ったの」


 あれは確かに、素晴らしい膝蹴りでしたね。バス子がミリーナさんを大きく見直した行動と言っても良いでしょう。


(わらわ)も、あの時のミリーナ様のおこないには感謝しているのです。妾のことを、仲間だと思って下さったのですから……」

 パスちゃんが尊敬の眼差しを向けています。


「パスちゃんもそう言ってくれて、すごく嬉しいよ」

 あなたは笑顔でパスちゃんに話し、ミリーナさんへと視線を戻しました。


「信用出来ない人を突き放すのなら、信用出来る人とは一緒にいなきゃ」


 そう伝えたあなたは、ミリーナさんの大きな黒い瞳をしっかりと見つめます。


「……ミリーナちゃんはもう、私達の仲間だよ」


「リバー様あああぁーんっ!」

 ミリーナさんは泣き崩れてしまいました。あなたは彼女を安心させるように、優しく抱いて受け入れます。


「せっかくだから、私やパスちゃんと、今日はハエトリさんに泊めてもらおうね」

 あなたはミリーナさんお頭を()でていました。

「はい……ありがとうございます……っ!」

 ミリーナさんもついに折れたようです。


 反省の出来る三つ編み少女(ミリーナさん)が泣きやむまで、なだめるあなたはずっと、彼女に()い続けました。


「……リバー様。ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です」


「うん」

 あなたはゆっくりとミリーナさんを解放します。


 (うる)んだミリーナさんの美しい瞳は、あなたに全幅(ぜんぷく)の信頼を寄せているようでした。

これでミリーナは本当の意味で仲間になったと思います。

ビーバー級冒険者パーティーのサキュリバーズのメンバーは現在、リバー、ミリーナ、パスちゃん、バス子の四名ですが、誰が現時点で一番人気があるのでしょうか? 全員が皆様に愛されていることを、作者は願っています。


今回も最後までお読み下さり、ありがとうございました。

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