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第51話 あなたはお店への勧誘を受けます!

あやしい勧誘は断りましょう。

 あなた達サキュリバーズの面々は、フレイトの町の中を歩いていました。


 お空は、暗くなり始めています。

 もう少し時が経てば、石畳の道の両側に設置された街灯に、ほのかな光が灯ることでしょう。


「うーん、これから、どうしよっか……」


「リバー様。まずは今夜の宿を探すことにしましょう」

 ミリーナさんからの申し出ですから、今夜もあなたを野宿させることはないみたいです。安心しました。


「上様。妾のおうちに来ませんか?」


 パスちゃんのいた迷宮ですね。あちらでしたら、雨風は防げますし、部外者は侵入出来なくなりましたので、安全です。

 ただ、これから戻るには時間がかかりそうですし、あちらにはベッドがなさそうでした。


「パスちゃんの家というのは、やはりタコツボのような家なのですか?」

 知らないミリーナさんがあなたに尋ねます。


「そういうのじゃなくて、普通のダンジョンだったよ」

「迷宮で夜を明かすなんて、まるで野宿ではありませんか!」

「その野宿を強要したミリーナさんが言わないでよ」

「……それはその通りですが、昨晩の謝罪も兼ねて、私がリバー様の宿泊代は全額支払わせて頂きます。もちろん、配下のパスちゃんの分もです」

「昨日に比べると太っ腹だなー」

「当然です。では、私のお(すす)めの場所に行きましょう」


「その必要はありませんよ」

「ええッ?」

 耳元で女性の声が聞こえたため、あなたはすごく驚きます。


 あなたの肩に乗っていた小さな生き物は、地面にぴょんっと飛び降りると、暗闇のような霧に包まれて、人の姿へと変化しました。


 正面に現れたのは、ひと目見て分かるほどの美人です。


 長い茶髪のその女性は、はち切れそうなぐらいに主張する巨乳をお持ちでした。逆に、身に着けている茶色いお洋服は非常に控えめです。


「いっ、いきなりどこから出て来たんですかっ? アナタは何者ッ?」

 ミリーナさんが先頭に立って警戒態勢を取ります。


「私は、魔物ハエトリグモです」

「魔物ッ?」

 さらにミリーナさんは警戒し、すぐに魔法剣を取り出しました。


 ハエトリグモさんは剣を向けられていても敵意は見せず、にこやかな笑顔でいます。


「リバーさん達には今夜、私のお店に泊まってもらうための準備が、すでに整っていますよ」


 人型になったハエトリグモさんは、見た目でクモを思わせる要素は一切ありません。クモの魔物ではなく、むしろ巨乳の魔物と名乗って下さったほうが、まだ納得がいきました。

 背丈はあなたよりも低く、ミリーナさんよりかは高いですね。見た目の雰囲気的に、あなた達よりも少し年上のお姉さんといった感じでしょう。


「泊めてもらえるんですか? タダで?」

 つい、あなたは本音を出しました。


「はい、もちろんです」

 笑顔のままハエトリグモさんはお答えします。


 泊めてもらえるのでしたら、あなたも異世界に来てから初めてベッドで寝られるかもしれませんよ。

「それは大変ありがたいなぁ……」


「ちょっと待って下さい、リバー様! こんな急に現れた魔物は信用出来ません! どうかお断りして下さい!」


 信用は出来ます。こちらのハエトリさんは、昨夜、あなたが野宿をしていた時に夜盗から守って下さったお方だからです。


「あっ、昨日のハエトリさんなんだ!」


「そうです、私は同一のハエトリグモです。昨日、貴女をお誘いしても良かったのですが、野宿するまでの過程を見た限りでは、冒険者パーティーに隷属する貴女を連れ去ってしまうと、法に引っかかってしまうと思い、陰から見守るだけにしました。すみませんでした」

「いえ、とんでもないです。昨日は助けてくれて、ありがとうございます」

「貴女のお役に立てたのでしたら、良かったです」

 美人の笑顔に、あなたは心がときめいてしまいました。


「今は、貴女とそちらのミリーナさんという人間との主従関係が逆転したようですから、お声をかけさせて頂いたのです」

 どうやらこちらのハエトリさんは、ずっとあなたについて来ていたようです。


「昨日のハエトリさんなら、じゅうぶん信用出来るよね……」

 あなたは優しいので、ミリーナさんよりもはるかに信用出来るとはつけ加えませんでした。


 ミリーナさんはまだハエトリさんに不審な目を向けていましたが、剣は下げています。


「大丈夫ですよ。私のお店は、いかがわしいところではなく、人間も利用する普通のカフェです」

 ハエトリさんはミリーナさんに対し、信用を得ようとします。

「もしお気に召さないようでしたら、いらっしゃった後で断っても構いませんし、私の好意を踏みにじったからといって、皆さんを食べたりはしませんからね?」

「ちょっと物騒なんですけど、ハエトリさんって、呼んじゃってもいいんですか?」

「はい。常連さんからもそう呼ばれていますし、クモ女でも乳袋でも、お好きなようにお呼び下さい」

「乳袋……じゃなくて、ハエトリさん。ご迷惑でなければ、ぜひお願いしたいです」


「リバー様! もう少しお考えを!」


「別にいいじゃないの。いい加減、私は家の中で寝たいんだよね。宿屋だと、またミリーナさんに頼っちゃうわけだし」

「恩人であるリバー様のためなら、私が野宿してでも宿代は出させて頂きます!」


「私なら、恩人と呼ぶ人の意見には賛成するべきだと思うよ? ミリーナさんのお金を使わずに泊めてもらえるなら、そうしたほうがいいでしょ。これから毎日どこかに泊まるとしたら、それだけお金がかかるんだから。節約出来るところは節約しないと」


「……分かりました。そこまでリバー様がおっしゃるなら、そうしましょう」

 諦めたようにミリーナさんは言い、魔法剣を平らな胸部へと収納します。


「妾は、上様とご一緒ならどこでも良いのです」

 物分かりの良いパスちゃんでした。


「では、決まりですね。ご案内しますので、ついて来て下さい」


 美人のハエトリさんに先導されて、あなた達は歩き始めました。

ハエトリさん、再登場です。


今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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